著者
神澤 輝実
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.462-469, 2007 (Released:2007-09-04)
参考文献数
38
被引用文献数
11 8

膵臓は,背側膵原基と腹側膵原基が癒合して形成される.背側膵原基の主導管の腹側膵管との癒合部の近位側は,発生過程において退行する例が多く,副膵管(Santorini管)と呼ばれる.我々の検討では,副膵管は形態的にlong typeとshort typeに二分され,これらは機能的にも発生学的にも異なる所見を呈した.主膵管内色素注入法による十二指腸副膵管の開存率は,43%であり,副膵管の口径,走行形態および末端像と関連性を認めた.急性膵炎例の副膵管開存率は低値であり,副膵管の開存は,第2の膵液ドレナージシステムとして,急性膵炎の発症を防止する安全弁として機能する可能性が示唆された.膵管癒合不全例では,先天性の副乳頭の閉塞性因子に,後天性の負荷因子が加わり,その相互関係で膵炎が発症することが推察され,再発性急性膵炎合併例は内視鏡的治療の良い適応と考えられた.
著者
島田 光生 神澤 輝実 安藤 久實 須山 正文 森根 裕二 森 大樹
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.678-690, 2012 (Released:2013-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
2

要旨:膵・胆管合流異常は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,膵液と胆汁の相互逆流により,さまざまな病態を惹起するとともに胆道癌の発生母地ともなる.本疾患は不明な点が多く,また未だに治療方針も統一されていないのが現状である.今回,日本膵・胆管合流異常研究会と日本胆道学会が合同で,本疾患に対して病態から診断,治療に至るまでの膵・胆管合流異常診療ガイドラインを世界で初めて作成したのでダイジェスト版として紹介する.
著者
神澤 輝実 来間 佐和子 千葉 和朗
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.1991-1997, 2016-12-05 (Released:2016-12-05)
参考文献数
37

先天性胆道拡張症は,戸谷分類では5型に分類されてきた.最近作成された先天性胆道拡張症の診断基準と診療ガイドラインでは,いわゆる狭義の先天性胆道拡張症は,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張し,全例に膵・胆管合流異常を合併する戸谷Ia型,Ic型およびIV-A型と定義された.膵・胆管合流異常は,長い共通管を有して膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,乳頭部括約筋の作用が膵胆管合流部に及ばないことより,膵液が胆道系に容易に逆流する(膵液胆道逆流現象).先天性胆道拡張症では,しばしば急性膵炎をおこし,さらに膵液と胆汁の混和液がうっ滞する胆囊や拡張胆管に高率に発癌するので,診断されれば肝外胆管切除が行われる.