著者
長谷川 秀 寺崎 修司 大田 和貴 植田 裕 伊東山 剛 三浦 正毅
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.107-112, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
9

当院における動脈瘤性くも膜下出血(SAH)患者の予後と在宅復帰率の現状について検討した.2010 年1 月から2013 年12 月までに当院に搬送されたSAH 患者253 名のうち,当院で外科治療を行った183 名を対象とした.臨床データは熊本型脳卒中連携クリティカルパスから得た.年齢は中央値64 歳,女性はそのうちの70%だった.入院時のWFNS グレードはI–III が72.7%で,Fisher CT 分類はグループ3 が86.3%を占めていた.症候性脳血管攣縮は19.9%にみられ,16.6%は脳梗塞に陥った.GR とMD は73.2%で,在宅復帰率は73.1%だった.在宅復帰に関して,80 歳以上,WFNS グレード,症候性脳血管攣縮,脳梗塞,水頭症が独立した決定因子であった.在宅復帰率に影響を与える脳血管攣縮,脳梗塞,水頭症に対する急性期病院での集学的治療と継続的な回復期リハビリテーションが重要と考えられた.
著者
加藤 昌弘 村松 輝昭 植田 裕樹 山口 正人 小澤 智樹
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.312-317, 1992
被引用文献数
15

メタノールとヘキサン, シクロヘキサン, およびヘプタンからなる3種2成分系溶液の溶解度曲線と298.15Kにおける液密度を測定した。得られた液液平衡と液密度挙動を状態方程式で相関した。<br><b>Table 1</b>に実験で用いた試薬の物性値を示す。<b>Table 2</b>に298.15Kにおける液密度の実験値を示す。ここで, 括弧内の数値は2液相分離しているときの上相と下相の密度を示す。密度はデジタル密度計で測定した。液密度挙動を Fig. 1に示す。液密度曲線での屈曲点から相互溶解度を決定した。298.15Kにおける密度測定から得られた相互溶解度を<b>Table 3</b>に示す。<br>溶解度の測定は, まずガラスアンプルに望む組成の溶液を仕込み, ガラス上部を溶かして密封した。このアンプルを恒温水槽に人れ, 試料アンプルを振りながら液相の状態を観察した。温度を変化させ, 2液相状態と均一液相状態との境界温度を測定して, その組成での溶解度温度とした。得られた溶解度温度の実験値を<b>Table 4</b>および<b>Figs. 2~4</b>に示す。<br>得られた液液平衡と液密度データを, Eqs. (1)~(5) に示す状態方程式で相関した。今回は, 係数<i>a</i>と<i>b</i>の温度依存性をEqs. (6)~(10) に示すように持たせ, 298.15Kにおける密度と蒸気圧を満足させた。<b>Table 5</b>に各純物質に対する補正係数の数値を示す。<br>状態方程式を混合流体に適用するために, Eq. (11) で示す Huron-Vidal 型の混合則を導人した。ここで関数Fには, Eq. (12) に示す3定数 Wilson タイプ, およびEq. (13) に示すNRTLタイプを用いた。また, パラメーター<i>b</i>およびθについては Eqs. (15)~(17) に示す混合則を用いた。3定数 Wilson タイプのパラメーターとNRTLタイプのパラメーターはEqs. (18) および (19) に示す温度の関数として整理した。<b>Table 6</b>に, 液液平衡と液密度の実験値を同時に状態方程式で相関して得られたパラメーターの数値および液密度の相関精度を示す。<b>Fig. 1</b>の実線は, 状態方程式による液密度の計算結果を示す。<b>Figs. 2~4</b>に溶解度曲線の計算結果を示す。ここで,実線はNRTLタイプ, 破線は Wilson タイプを示す。
著者
神沢 栄三 伊東 泰治 植田 裕志 小栗 友一
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

1.中世フランスの宮廷騎士道物語がドイツの作家たちによってどのように翻案・受容されたか、特にクレチアン・ド・トロワの作品とハルトマン・フォン・アウエ、ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ、更にフランスの13世紀の逸名作家の『散文ランスロ』とドイツの『ランツェレット』の比較研究によって検討した。その結果、従来は単なる量的な付加ないし修辞学的な洗練度のレベルで捉えられてきたドイツの翻案作品の問題が、作品の本質的な性格にかかわる重要な問題であることが明らかになった。即ちフランスの騎士道物語はドイツにおいて非聖化=写実主義傾向の物語に変質していたのである。この事実は一つの重要な示唆を含んでいる。ハルトマンらが活躍した12世紀末・13世紀にはフランスにおいても同じように写実的傾向の冒険物語(roman d'aventure)が輩出しており、その背景には社会の変化、それに伴う意識の変化などが想定されるのであるが、ドイツにおいても同じことが起っていたのではないかということである。この問題は単なる受容・影響関係からだけではなく、一種の平行関係が存在したことを想定して再検討が必要である。2.騎士道物語の主要なテ-マに愛の問題があったが、純粋愛(fin'amor)・宮廷風恋愛(amour courtois)がドイツでどのように受容されたかを検討した。クレチアン=ハルトマン型の夫婦愛の理想はやがて反社会的な愛の本質を追求した『トリスタン』と世俗の愛に神の愛を対置した『聖杯物語』へと二極分化した。純粋愛は他方ではダンテ、ペトラルカを経て神秘主義・ネオ=プラトニスム的傾向の強い近代の抒情詩に進んでゆくことが明らかとなる。今後西ヨ-ロッパ諸国の社会状況を考慮に入れながら更に徹底した比較研究を進めてゆくことが必要であろう。