著者
花塚 泰史 樋口 知之 松井 知子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.570-577, 2012-03-01

近年の計測技術の向上によって,高速で回転するタイヤから振動などの物理量を計測することが可能になり,それら物理量の特徴が路面状態変化の影響を受け変化することが明らかになってきた.本論文ではその逆問題として,タイヤ内面に取り付けた加速度センサの出力から,走行している路面状態をリアルタイムに判別する方法を提案する.タイヤ振動は非定常性の強い波形を示し,その特徴は車輪速やタイヤサイズによって時間伸縮する.この時間伸縮に対応するため,本方法ではHMMでタイヤ振動波形をモデル化する.路面状態の変化に伴う特徴が含まれる接地面付近の波形を,路面状態ごとにHMMでモデル化するとともに,接地面外の波形もHMMでモデル化しておき,接地面近傍の波形のHMMが,接地面外のHMMに挟まれた構造をもつHMMのネットワークを構成する.そして未知データが入力されたときに,そのゆう度が最も高いモデルに対応する路面状態に判別する.異なる四つの路面状態を,4種のタイヤで走行したデータを用いて行った実験結果から,車輪速やタイヤサイズの情報なしに精度良く路面状態判別ができる可能性を示す.
著者
長尾 大道 中野 慎也 樋口 知之
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集 第59回理論応用力学講演会
巻号頁・発行日
pp.173, 2010 (Released:2011-01-21)

2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震による微気圧変動が、震源域から400km以上離れたCTBT夷隅微気圧観測点で検出された。この音波波形は、適切な固体地球と大気の1次元結合モデルおよび断層モデルを設定することにより、30秒以上の長周期帯では十分に説明できることが分かっている(Nagao et al. [2008])。本研究では、データ同化の手法を用いてこれらのモデルパラメータの事後分布を精密に推定し、地震データとは異なる情報を持つと考えられる微気圧データが、固体地球科学にどのような貢献をもたらすことができるかを検討する。具体的には、地震と微気圧の観測波形および固体地球-大気モデルのノーマルモードから求めたシミュレーション波形とを、粒子フィルタ法およびMCMC法を組み合わせたハイブリッド法により比較し、モデルパラメータの事後分布を推定する。特に微気圧データを含めた場合と含めない場合とで比較し、微気圧データが震源パラメータの事後分布に与える影響を調べる。
著者
徳永 旭将 池田 大輔 中村 和幸 樋口 知之 吉川 顕正 魚住 禎司 藤本 晶子 森岡 昭 湯元 清文 CpmnGroup
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.14, pp.1-6, 2010-12-09

一般に,前兆現象は突発現象にそのものに比べて非常に目立ちにくく,その開始時刻は曖昧である.従来よく用いられてきた変化点検出法を適用した場合,このような微小で緩慢な変化は見逃されやすい.Tokunaga et al.1) では,Ide and Inoue2) の提案した特異スペクトル分析を応用した変化点検出法 (SST) を,多次元データを用いたアルゴリズム (MSST) へと拡張することで,鋭敏に前兆現象の開始時刻を推定出来ることを示した.MSST は,緩慢な変化も検出できる鋭敏な手法であるが,実データへの適用では誤検出が問題になる.本稿では,突発現象の大まかな開始時刻を予め検出し,さらに検出された時刻の前後で前兆現象の開始時刻と終了時刻を個別に探索することで,誤検出を劇的に減少させることができることを示す.