著者
韓 昌完 太田 麻美子 金 彦志 權 偕珍
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education (ISSN:21899185)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.29-42, 2021 (Released:2021-08-30)
参考文献数
18

本研究の全体的な体系として、大学における学修成果指標として「Employability based on Student Learning Outcome; ESLO」を作成し、主観的・客観的側面を踏まえた評価方法を確立することを目的とする。本論では研究の全体像のうちESLOの構成概念の検討を第1の目的とし、検討した構成概念に基づき主観的評価尺度(試案)の作成及び内容的妥当性と信頼性検証までを第2の目的とした。 ESLOの概念を構成するために経済産業省が提唱する「社会人基礎力」やThe Partnership for 21st Century Learningが提唱する「21st-Century Skills」や「21st Century Learning」、ハーバード大学が提唱する「Employability Skill」などの概念を整理・検討した。その結果、ESLOの構成概念を「自己理解・自己管理能力」、「イノベーション力」、「情報・メディア・テクノロジーリテラシー」、「国際力」及び「専門力」の5領域15下位領域で構成した。ESLOの構成概念に基づいて主観的評価尺度(試案)の項目を作成し、尺度開発の専門家及び学部学生を対象に内容的妥当性の検証を行った。国公私立の3大学で122件のデータを収集し、内的整合性法を使用した信頼性検証の結果、全項目及び各領域でα> 0.700(α=0.755~0.971)となり信頼性が確認された。
著者
金 珉智 小原 愛子 權 偕珍 下條 満代
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.7, pp.40-49, 2019

本稿では、既存の研究等を用いて特別支援教育における制度・政策の変遷について国際的比較を行い、日本の特別支援教育における課題を見出すことを目的とする。学校教育法の一部改正により、2007年からこれまでの特殊教育が変わり、特別支援教育が本格的に実施された。特別支援教育は、日本を含め、世界各国で障害者の権利に関する条約を基に実施されている。日本では、インクルーシブ教育を行うための人的・物的な環境整備等が十分に行われず、理念が先走ったインクルーシブ教育導入への危険性があり、特別支援教育の先進国であるイギリスとイタリアの例を参考にしながらインクルーシブ教育の現状を丁寧に分析していく必要がある。一方、障害児に対する特別支援教育の制度及び政策は、国によって体制が異なるとはいえ、インクルーシブ教育を目指す目標は同一であり、学びの場である学校は特別支援教育の制度において中心的機能をしていることが示された。
著者
韓 昌完 太田 麻美子 金 彦志 權 偕珍
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.10, pp.29-42, 2021

本研究の全体的な体系として、大学における学修成果指標として「Employability based on Student Learning Outcome; ESLO」を作成し、主観的・客観的側面を踏まえた評価方法を確立することを目的とする。本論では研究の全体像のうちESLOの構成概念の検討を第1の目的とし、検討した構成概念に基づき主観的評価尺度(試案)の作成及び内容的妥当性と信頼性検証までを第2の目的とした。ESLOの概念を構成するために経済産業省が提唱する「社会人基礎力」やThe Partnership for 21st Century Learningが提唱する「21st-Century Skills」や「21st Century Learning」、ハーバード大学が提唱する「Employability Skill」などの概念を整理・検討した。その結果、ESLOの構成概念を「自己理解・自己管理能力」、「イノベーション力」、「情報・メディア・テクノロジーリテラシー」、「国際力」及び「専門力」の5領域15下位領域で構成した。ESLOの構成概念に基づいて主観的評価尺度(試案)の項目を作成し、尺度開発の専門家及び学部学生を対象に内容的妥当性の検証を行った。国公私立の3大学で122件のデータを収集し、内的整合性法を使用した信頼性検証の結果、全項目及び各領域でα> 0.700(α=0.755~0.971)となり信頼性が確認された。
著者
甲斐 日奈子 權 偕珍
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.10, pp.53-59, 2021

障害のある子どもが十分に教育を受けられるために、教育現場において障害を理由とする差別の禁止、合理的配慮の提供が求められている。都築・小田・青柳・岩田・相羽・吉田(2015)は、学級に在籍する特別なニーズを必要とする子どもへの適切な合理的配慮や指導はすべての教員が身につけるべき事項であり、教員養成段階で習得しておくことが望ましいと報告している。しかし、教員を対象とする合理的配慮に関する意識調査の研究は行われているが、将来、教員を志望する学生を対象とした合理的配慮に関する意識調査は見当たらない。そこで、本研究では、教員養成段階での合理的配慮に対する意識の現状を明らかにするため、A大学、B大学の教育学部に在籍する学生を対象とし、質問紙調査を実施した。その結果、全体的に合理的配慮に対する意識が高いことが明らかになったが、公平性に関する質問項目において合理的配慮における認識の違いが見られた。今後、合理的配慮における公平性の概念について深く理解していくことが望ましいと考えられる。
著者
照屋 晴奈 小原 愛子 矢野 夏樹 權 偕珍 韓 昌完
出版者
一般社団法人 Asian Society of Human Services
雑誌
トータルリハビリテーションリサーチ (ISSN:21881855)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.11-19, 2021

Based on the previous research by Yano and Han (2020), this study conducted a pretest for the development of the "School QOL Scale for Children" to evaluate the school life of children and the reliability and the validity of the scale was verified. As a result, 19 items in 4 areas were set by expert consultation regarding the composition of the scale. Regarding the question items, we asked for opinions on the content of the questions to be asked during the pretest for elementary and junior high school students, but there was no particular opinion. The pretest was conducted from February to March 2021 and 140 data were collected from elementary and junior high school students (recovery rate 100%). Of these, 136 data were analyzed, excluding missing values. In the reliability verification of the scale, the Cronbach's α value was calculated using internal consistency. As a result, the α value of the region was 0.645 to 0.842, and the overall α value was 0.890 and α > 0.700, confirming the reliability. Next, as a result of verifying the validity of the construct using SEM, GFI = 0.839, CFI = 0.883, and RMSEA = 0.072, which are not high goodness of fit. In the future, it will be necessary to conduct an unbiased survey of elementary and junior high school students who will be evaluated by the scale and expand the number of data to be analyzed to re-verify the validity of the constructs that could not be obtained in this study.
著者
下條 満代 照屋 晴奈 權 偕珍
出版者
一般社団法人 Asian Society of Human Services
雑誌
トータルリハビリテーションリサーチ (ISSN:21881855)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.39-50, 2020

In order to form a symbiotic society in Japan and to realize inclusive education, which is an idea to learn together regardless of disability, it is urgent to actively hire teachers with disabilities even at school. However, since research on faculty with disabilities is said to have been conducted since the fiscal year 2019 onward, the actual situation has been investigated. And the current situation and issues regarding the employment of faculty with disabilities are almost unclear.Therefore, in this study, based on the viewpoint of improving the QOL (Quality of Life) of teachers with disabilities, we analyze the previous studies related to the employment of persons with disabilities at schools in Japan, and clarify the current situation and academic issues regarding the employment of teachers with disabilities. As a result of the analysis, many previous studies have been found in the area of "employment stability", but they also point out the current situation and it was revealed that further studies are needed. Moreover, in the "physical and mental health" area and the "life stability" area, there were very few cases applicable, and it became clear that research was not progressing.
著者
太田 麻美子 小原 愛子 權 偕珍
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.8, pp.40-55, 2020

近年、肥満は生活習慣病の危険因子として位置づけられており、医療的・教育的介入の対象となっている。介入に関しては早期からの肥満予防支援が重要であるとされ、現在では幼児期からの取り組みが有効であると認識されている(岡田, 2009)。とりわけ、ダウン症児の場合、幼少期の段階から小児肥満症とされることが多いため、より早期の肥満に関する介入が必要であるといえる。そこで本研究では、肥満治療に関する介入の現状と課題を明らかにすることを目的に、日本国内におけるダウン症児・者に対して行われた肥満予防・肥満対策に関連する介入を行った論文、症例報告及び実践報告の内容を、肥満に対する治療方法と対応分析した。結果として、ダウン症児・者を対象とした介入については、運動指導とそれに伴う運動習慣定着を目的とした心理社会的・行動療法的介入を行っている事例が多いことや、食事に関する介入が少ないことを明らかになった。加えて、生理・病理的変化による観点からより効果的な介入方法について考察を行った。
著者
太田 麻美子 小原 愛子 運天 尚美 權 偕珍
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.7, pp.16-25, 2019

文部科学省(2019)は、2017年から次期学習指導要領に関する周知・徹底を行っており、それに伴い小・中学校においては「カリキュラム・マネジメント」の観点を取り入れた次期学習指導要領に即した教育課程の改善等が少しずつではあるが、行われてきている。 本研究では、沖縄県内の知的障害を主とする特別支援学校において、教育課程の改善を行った2017年度及び2018年度の授業を、特別支援教育成果評価尺度(Special Needs Education Assessment Tool; 以下、SNEAT) (Han, Kohara & Kohzuki, 2014)を用いて評価する。そうすることで、教育課程及び指導内容の改善が児童生徒にどのような効果を与えるのかを検討することを目的とした。
著者
太田 麻美子 金 珉智 趙 彩尹 權 偕珍
出版者
一般社団法人 Asian Society of Human Services
雑誌
トータルリハビリテーションリサーチ (ISSN:21881855)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.83-94, 2019

At present, evaluation of “adaptive behavior” is regarded as important in intellectual disability, and it is considered that it is not difficult to manage daily life by providing appropriate educational support and social support (MEXT, 2013). People are affected by the environment and their psychology changes, leading to action. If they have a disorder, in addition to the psychological aspect, the physiological and pathological aspects are also affected. Therefore, for children with intellectual disabilities, higher educational effects can be expected by providing educational support in consideration of psychological, physiological, and pathological aspects.Therefore, in this research, by defining the definition and diagnostic criteria of mental disorders and organizing psychology, physiology, and pathological factors, 1) Examine whether the contents related to psychological, physiological, pathological changes are described in the diagnostic criteria or adaptive behavior. 2) In addition, from the point of the QOL of intellectual disabilities persons and the QOL of children, it examined what kind of domain is necessary when capturing the psychological, physiological, and pathological changes of children with intellectual disabilities.
著者
矢野 夏樹 下條 満代 權 偕珍
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.6, pp.86-92, 2019

自閉スペクトラム症(ASD)は、限局された興味関心や常同的・反復的な行動と社会的コミュニケーションや社会的相互作用の障害によって特徴づけられる神経発達症群の中の一つである。ASD者の就労しようとした際、対人関係にニーズを抱え、最終的に離職してしまうというケースが非常に多い。ASD者の就労を支援するためには、学校教育段階からのキャリア教育と職場でのASDに対する特性の理解に基づくマネジメントが必要となる。キャリア教育と職場でのマネジメントの双方を効果的に連続させていくためには一貫したアセスメントに基づいた個々人の特性把握を行わなければならない。そこで、本研究では、ASD者の特性と就労状況について概観し、キャリア教育に基づいて、学校教育段階から就労を見据えた実態把握と支援について考察した。韓, 沼館, 呉屋ら(2018)が開発したScale C<sup>3</sup>をはじめとして評価尺度に基づいた、社会的コミュニケーションについての支援や自身のこだわりについて自己理解を深めることが重要である。
著者
權 偕珍 太田 麻美子 照屋 晴奈
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-55, 2019

社会における障害理解を促進し共生社会を実現するためには、障害を人間の多様性として捉え、多様な人材を社会で活用するというダイバーシティの観点(日本経済団体連合会, 2002)から障害理解教育を考える必要がある(權・太田, 2018)。また、障害理解は人間理解そのものであり、障害理解の社会的向上を図るために次世代を担う生徒に対する教育が不可欠である(芝田, 2013)ため、次世代の教育者である教員養成課程の学生を対象とした障害理解教育カリキュラムの開発が必要である(權・太田, 2018)。そこで、本研究では、現在カリキュラムの要素として挙げられている理念的領域と方法論的領域の内容を設定する事を目的とする。そのために、①. ダイバーシティ教育の観点に基づく障害理解教育カリキュラムに必要な理念的要素を設定する。また、②. ①で行われた結果を基に、現在日本の国立教員養成大学で行われている障害に関する授業のシラバスを収集し、設定した理念的内容と方法論的内容と対応分析する。
著者
權 偕珍 太田 麻美子
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
ジー
巻号頁・発行日
vol.5, pp.61-76, 2018

2006 年に国連で障害者権利条約が採択されてから、日本国内でも様々な領域(厚生労働省, 2017: 文部科学省, 2012a)で、その権利を保障するための障害理解が重要視されてきた。しかしながら、現在行われている障害理解は、障害者を保護して支援する対象として捉えており、その結果、社会の中で共に生活し、働く仲間として障害者が認識されない一因となっている(權・田中, 2016)。社会における障害理解を促進し、障害のある者と障害のない者が共に生きる社会(“共生社会”)を実現するためには、障害を人間の多様性として捉え、多様な人材を社会で活用するというダイバーシティの観点(日本経済団体連合会, 2002)から障害理解教育を考える必要がある。そこで、本研究では、日本、韓国、アメリカ合衆国、イギリスの高等教育機関における教員養成制度及びダイバーシティ観点に基づいた障害理解教育について整理し、動向を把握する。
著者
韓 昌完 矢野 夏樹 小原 愛子 權 偕珍 太田 麻美子 田中 敦士
出版者
一般社団法人 Asian Society of Human Services
雑誌
トータルリハビリテーションリサーチ
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-14, 2017

IN-Child Record was developed as a tool to diagnose children who need inclusive education. Therefore, this study aimed to verify the reliability and construct validity of IN-Child Record. IN-Child Record using 1,059 children (elementary school: 594 children, junior high school: 465 children) collected in Okinawa Prefecture between February and March 2017. Survey data were collected in cross-sectional study. The reliability of IN-Child Record was verified via the internal consistency method; the coefficient of Cronbach's α were over 0.7. The construct validity of IN-Child Record was also verified via the path analysis using structural equation modeling (SEM). IN-Child Record is valid based on its goodness-of-fit values obtained using the SEM. These results scale that IN-Child Record has high reliability and construct validity.
著者
太田 麻美子 權 偕珍 小原 愛子
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-17, 2017

IN-Childとは、包括的教育を必要とする全ての子どもを指す用語であり、IN-Child Recordとは、IN-ChildのQOL向上の観点から支援ニーズを検討する為の82項目14領域で構成されているツールである。本研究では、IN-Child Recordの14領域を用いて、既存の論文・学会発表における指導実践を分析することで、ADHD傾向のあるIN-Childに対して教育現場で行われている指導・支援方法を典型化し、課題を明らかにすることを目的とした。その結果、ADHD傾向のあるIN-Childに対する指導・支援として、①保護者と実施できる身体面に関する具体的かつ効果的な指導方法の必要性、②海外の文献も含めたADHDの特性に特化した生活面に関する指導法の収集の必要性、③「聞く」に関する指導法と、ADHDの特性に特化した読み書き能力を高めていくため指導法の開発が必要であることが明らかになった。
著者
權 偕珍 太田 麻美子 韓 昌完
出版者
一般社団法人 Asian Society of Human Services
雑誌
トータルリハビリテーションリサーチ
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-9, 2017

For the physically disabled people, the posture is a crucial motion for all activities. In particular, in educational activities, the goals and activities need to be set up in relation to gravity. Currently, of teaching methods related to the posture, motion and movement in the special needs education for the physically disabled, the motion method is widely used. However, during the teaching of the pre-stage sensory integration method, the guidance on the right posture, motion and movement from the perspective of gravity is required. Thus, this study aims to analyze the overview of the sensory integration education method in Okinawa Prefecture, and to induce the corresponding tasks. The research methodology is to use and analyze 40 cases of "The Report on the Practice of Sensory Needs Integration Education Method," specified in the research collections of the special support school for the physically disabled in Okinawa Prefecture, from the perspective of gravity, posture, motion, and movement. In the analysis of posture, motion, and movement, five items of physical movement in self-dependence activities are used. The findings of this study indicated that the education field lacks the awareness of the importance of the relationship between the physically disabled children and gravity. Also, in posture, motion and movement, there was found to be a heavy lack of cases of using the sensory needs integration method from the perspective of 5 items of physical movement.