著者
杉山 寿美 三宅 彩矢 多田 美香 水尾 和雅 都留 理恵子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.64-71, 2011 (Released:2014-08-08)
参考文献数
25
被引用文献数
1

加熱過程および保存過程における煮汁に含まれるコラーゲン,グリセリド,塩化ナトリウムの大根への浸透と大根の硬さについて検討した。その結果,加熱過程では大根の重量が減少すること,グリセリドおよびコラーゲンは大根内部へほとんど浸透しない一方,塩化ナトリウムは速やかに浸透することが示された。グリセリド,コラーゲン,塩化ナトリウムのいずれも大根表面部と内部の量は有意に異なっていた。また,加熱温度が高く,加熱時間が長い場合は内部よりも表面部が硬いことも示された。保存過程では,温蔵,冷蔵保存のいずれでも大根の重量が増加すること,大根表面部と内部の塩化ナトリウム量の濃度差が認められなくなる一方,グリセリドおよびコラーゲン量には差が認められること,大根表面にはコラーゲンが温蔵保存で浸透し,グリセリドが冷蔵保存で表面に付着することが推察された。これらのことから,保存過程が煮物のおいしさに影響することが推察された。
著者
杉山 寿美 水尾 和雅 今岡 麻奈美 都留 理恵子 水馬 義輝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.1080, 2009 (Released:2009-08-28)

【緒言】近年,電磁調理器(IH)による調理が増加している。これまでに,IH加熱が鍋底からの加熱のみであるのに対してガス加熱では鍋側面からも加熱されること,入熱量が同じ場合にはIH加熱の対流速度が速いことが示されている。このことはガス加熱とIH加熱で料理の仕上がりが異なることを推察させる。本研究ではぶり大根をモデルとして煮熟調理時の影響を検討した。【方法】大根は中央部を2cmの輪切りにし,NaClの浸透量・破断強度の測定用にはその中央から1辺が2cmの立方体を,官能検査用には半月切りを調製した。加熱機器はIH加熱はリンナイ製RHS71WG7V,ガス加熱はナショナル製KZ-VSW33Dを用いた。ステンレス製鍋を用いて,ぶりの煮汁中で10-40分加熱した。加熱条件はIH加熱時と鍋への入熱量が同じになるようガス加熱(ガス量を調節)したもの,あるいは,IH加熱と煮汁のゆれ具合が同じになるようガス加熱したものとし,それぞれ強火,中火で加熱開始した。官能検査は訓練された管理栄養士課程の大学生をパネルとし,20分加熱した大根を試料とした。【結果】強火で入熱量が同じ場合はIH加熱で,中火で煮汁のゆれ具合が同じ場合はガス加熱で,NaClの浸透量が多く破断強度が低く,破断強度の低さとNaClの浸透量が関係していることが示唆された。一方,官能検査の結果、強火で入熱量が同じ場合にIH加熱が「軟らかい・味の浸み込みがよい」と判断されなかった。また,鍋内の加熱では内部より表面部で破断強度が低くビーカー内加熱とは異なっていた。これらのことから,対流速度の破断強度への影響が示唆され,IH加熱とガス加熱で料理の仕上がりが異なることが示された。
著者
杉山 寿美 水尾 和雅 今岡 麻奈美 都留 理恵子 水馬 義輝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1080, 2009

<BR>【緒言】近年,電磁調理器(IH)による調理が増加している。これまでに,IH加熱が鍋底からの加熱のみであるのに対してガス加熱では鍋側面からも加熱されること,入熱量が同じ場合にはIH加熱の対流速度が速いことが示されている。このことはガス加熱とIH加熱で料理の仕上がりが異なることを推察させる。本研究ではぶり大根をモデルとして煮熟調理時の影響を検討した。<BR>【方法】大根は中央部を2cmの輪切りにし,NaClの浸透量・破断強度の測定用にはその中央から1辺が2cmの立方体を,官能検査用には半月切りを調製した。加熱機器はIH加熱はリンナイ製RHS71WG7V,ガス加熱はナショナル製KZ-VSW33Dを用いた。ステンレス製鍋を用いて,ぶりの煮汁中で10-40分加熱した。加熱条件はIH加熱時と鍋への入熱量が同じになるようガス加熱(ガス量を調節)したもの,あるいは,IH加熱と煮汁のゆれ具合が同じになるようガス加熱したものとし,それぞれ強火,中火で加熱開始した。官能検査は訓練された管理栄養士課程の大学生をパネルとし,20分加熱した大根を試料とした。<BR>【結果】強火で入熱量が同じ場合はIH加熱で,中火で煮汁のゆれ具合が同じ場合はガス加熱で,NaClの浸透量が多く破断強度が低く,破断強度の低さとNaClの浸透量が関係していることが示唆された。一方,官能検査の結果、強火で入熱量が同じ場合にIH加熱が「軟らかい・味の浸み込みがよい」と判断されなかった。また,鍋内の加熱では内部より表面部で破断強度が低くビーカー内加熱とは異なっていた。これらのことから,対流速度の破断強度への影響が示唆され,IH加熱とガス加熱で料理の仕上がりが異なることが示された。
著者
杉山 寿美 水尾 和雅 野村 知未 原田 良子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.411-416, 2011 (Released:2014-04-25)
参考文献数
20

本研究は,長時間の湿式加熱におけるコラーゲンの構造変化(酸可溶性コラーゲン(ASC),ペプシン可溶化コラーゲン(PSC),不溶性コラーゲン(ISC)量の変化)とそれに伴う脂質量の変動,さらに植物プロテアーゼの影響について明らかとすることを目的とし,豚角煮を試料として実験を行った。蒸し加熱後には,ISCは認められず,ASCは有意に増加,PSCは有意に減少した。その後の煮る過程でのPSCの減少は有意ではなかった。生姜搾汁あるいはキウイフルーツ果汁を添加した場合,蒸し加熱後ではコントロールと同程度であったが,続く煮る過程ではPSCは減少し,キウイフルーツ果汁を添加した場合にコントロールよりも有意な減少を示した。この煮る過程におけるPSCの減少は,蒸し加熱前および蒸し加熱初期に植物プロテアーゼがコラーゲンのテロペプタイド部位および熱変性部位に作用した結果であると推察された。いずれの条件でも調理後の脂肪およびコレステロールは減少した。キウイフルーツ果汁を添加した場合は,コントロールよりも有意な脂肪量およびコレステロール量の減少が認められた。これらのことから,豚塊肉の調理では,加熱によりコラーゲン繊維は脆弱化するものの,脂肪の多くは保持されること,キウイフルーツ果汁を添加した場合にコラーゲン繊維が脆弱化し,脂肪およびコレステロールの溶出が増加することが示された。