著者
長瀬 エリカ 遠藤 浩士 竹中 良孝 根岸 朋也 水田 宗達 佐々木 良江 浦川 宰 名塚 健史 藤縄 理
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.G3P1583-G3P1583, 2009

【はじめに】埼玉県理学療法士会スポーツリハビリテーション推進委員会では、平成20年7月27日~8月21日に埼玉県で開催された、平成20年度全国高等学校総合体育大会埼玉県大会へのコンディショニングサポート(以下、CS)を、アーチェリー・新体操・体操・ウェイトリフティング・ボート・水球の6競技において行った.CS実施の意義と今後の活動への方向性について知見が得られたので報告をする. <BR>【目的】理学療法士(以下PT)のスポーツ現場におけるCS活動の意義の把握と今後のCS活動の方向性を検討する.<BR>【方法】対象は上記6競技のCS活動(期間中延べ37日間)に参加した埼玉県士会員101名であり、アンケート用紙調査より集計を行い検討した.アンケート回答内容の使用についてはアンケート用紙調査にて承諾を得ている.<BR>【結果】アンケートの回収は82名(男53名、女29名)であった.(回収率81%)参加者の平均PT歴は5.3年、1日施術平均人数6.37人(最少競技3.0人、最多競技11.5人).CS内容はマッサージ92.7%、ストレッチ90.2%、テーピング41.5%、相談(リハビリ・進路)29.3%、アイシング28.0%だった.選手の反応は80.5%が「良好」、障害状態の把握は73.2%のPTが「できた」とし、また、98.8%が「CS活動の中から情報が得られた」「PTが現場にいる意義がある」と答えた.73.2%が「CS内容は病院で行うスポーツリハビリとは異なる」とし、「今後のCS活動への参加希望者」は63.4%、「競技による参加希望者」は26.8%、「しない」は6.1%だった.<BR> 自由記載ではスポーツ現場では短時間内での評価と即効性のある治療が要求されること、自己の力量不足の再認識をしたなどが多かった.また、競技団体による関心度の違いや競技傷害特性は現場にいることで学べた、PTとしてのアイデンティティを出すことが今後重要であるという意見があった.<BR>【考察】埼玉県士会の多大なバックアップのもと、県士会員の声から県士会という団体での初CS活動が実現した.今回のCS活動は技能のスキルアップへの意識付けや鍛錬の場にできたと考える.また、殆どのPTが短時間内での傷害把握を可能とし、スポーツ現場の要求に対応可能だった.<BR> 確かな技能により1例の悪化例もなく、選手への適切な傷害説明・施術ができた.このPTのアイデンティティを発揮できる公益活動は、今後の職域拡大や技能向上にも必要と考える.<BR> 今後の活動について約9割以上のPTがCSを希望し、現場での活動に意義があると考えていることから、現在の高校野球や他競技でのCSや技能向上の研修会が必要と示唆された.
著者
笠井 健治 水田 宗達 清宮 清美 板垣 卓美
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E-134_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】パーキンソン病(Parkinson's Disease:以下PD)患者の死因の第1位は肺炎であり誤嚥性肺炎の予防は重要である。PD患者の嚥下障害は疾患の進行と必ずとも相関せず、嚥下スクリーニング検査による嚥下障害の検出も難しいとされる。近年、誤嚥のリスクを検出するための咳嗽機能評価が注目されている。本研究の目的はPD患者について嚥下障害に関連するスクリーニング検査結果と咳嗽機能について後方的に検討し、嚥下障害等の関係を明らかにすることである。【方法】対象は当センターにH27年8月からH30年5月までの間に入院したPD患者のうち摂食・嚥下障害看護認定看護師に嚥下機能評価の依頼があり、検査可能であった18名(72.7±4.0歳、男性10名)。評価項目は疾患重症度としてHoehn&Yahr分類とPD統一評価尺度第3部の総合得点(unified Parkinson’s disease rating scale‐Ⅲ:以下UPDRS-Ⅲ)、嚥下スクリーニング検査として反復唾液嚥下テスト、咳嗽機能評価として咳嗽時最大呼気流量(cough peak flow:以下CPF)と咳テスト、呼気機能評価として最長発声持続時間を評価した。誤嚥の発生有無は聖隷式嚥下質問紙のA項目に1項目以上該当する場合もしくは嚥下造影検査において嚥下障害が確認された場合に嚥下障害ありと判断した。嚥下障害あり群となし群に大別し各評価項目における群間の差の検定を行った。連続変数に対しては対応のないt検定もしくはMann-Whitney検定を用い、他の変数はχ2検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】嚥下障害あり群は7名、なし群は11名で群間比較ではCPFのみ有意な差を認めた(あり群218.6±115.0m/s、なし群368.2±127.0m/s、p=0.023)。またCPFはUPDRS-Ⅲ(r=-0.67、p=0.04)、最長発声持続時間(r=0.57、p=0.02)と有意な相関を認めた。【考察】嚥下障害を有する群では有意にCPFが低下し、CPFは疾患重症度および呼気機能と有意に相関していた。このことから、PDでは重度化とともに咳嗽機能が低下しやすく、咳嗽機能には呼気機能が影響すると考えられた。したがってPD患者の嚥下障害に対する理学療法においては咳嗽機能を改善することが重要であり、呼気機能を改善するアプローチの重要性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】研究参加者には入院時に臨床において得られた情報が後方視的に学術目的に用いられることについて口頭および書面にて説明し、同意を得られた場合にのみ同意書への署名を依頼した。また、本研究は埼玉県総合リハビリテーションセンター倫理員会の承認(H30-002)を得ている。
著者
石井佑穂 水田宗達
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.281, 2016 (Released:2021-03-12)

【はじめに】生活環境と身体機能の変化により右坐骨部の褥瘡を繰り返した胸髄損傷者に対し褥瘡予防アプローチを行った一症例について報告する。【症例】20 代男性、H18 年に第6 胸髄損傷、外傷性くも膜下出血、右肘脱臼骨折を受傷し、対麻痺、高次脳機能障害を呈した。退院後無職であったが、その後就職し褥瘡再発を繰り返しH24 年9 月他病院で手術を受け完治せず翌年4 月に治療、シーティング目的に当センター転院。症例には口頭にて説明を行い書面で同意を得た。当センター倫理委員会にて承認を得た(H28-2)。【理学療法評価】FrankelA、ROM(R/L)肘関節伸展‐45°/0°、足関節背屈‐15°/‐15°(初期入院時0°/‐5°)。座クッションは特殊空気室構造使用。車椅子乗車姿勢は重心右偏倚、骨盤後傾、左回旋位、胸腰椎屈曲位。体圧は大腿部の接触がなく右坐骨部が高値。駆動時は左上肢リーチに右上肢を合わせるため体幹左回旋での代償と臀部の前方滑りあり。通勤は自走と電車を利用し片道60 分。【方法】背張りで腰部を支持し上部体幹伸展位で座位をとれるように調整した。クッションへの接触面積を増やすため座板での前座高調整、フットサポート高調整を行った。右上肢リーチに左上肢を合わせるように駆動方法指導を行った。体圧分布測定装置で体圧を測定し、臀部の前方滑りはシートと膝窩の距離で測定した。【結果】骨盤中間位の姿勢で座位保持ができ、体圧は大腿部の接触面積が増え坐骨部の圧が減少した。駆動時の前方滑りは調整前右1.0cm 左1.5cm、調整後左右0cm。褥瘡は治癒し退院後再発はない。【考察】退院後の生活変化により足関節背屈制限、座位姿勢の変化、屋外駆動時間の増加が起こり右坐骨部の褥瘡リスクが上昇した。適切な座位姿勢調整、体圧評価、駆動方法指導が褥瘡改善の一助となり、その後の褥瘡リスクの軽減につながったと考えられる。褥瘡予防には身体機能だけでなく生活、環境等の多面的視点が必要である。
著者
石﨑 耕平 水田 宗達 清宮 清美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】当指定障害者支援施設は,障害者総合支援法に基づき理学療法士(以下,PT)が関わりながら就労を支援している。通勤の自立は就労の可能性を高める要素であるが,通勤は各々の環境や条件が異なるため,動作能力のみの評価では不十分である。今回,車椅子片手片足駆動での通勤手段を獲得した症例を通して,通勤手段の獲得におけるPTの役割について検討する。【方法】症例は脳出血により右片麻痺を呈した40歳代男性。入所時における発症からの期間は313日であった。身体機能は,下肢Brunnstrome Recovery StageIII,感覚障害は中等度鈍麻であった。高次脳機能は,記銘力低下,注意の分配・転換の低下,遂行機能の低下,易疲労性がみられた。失語症は軽度で日常会話は可能であった。動作能力は,基本動作は自立,Berg Balance Scale46点であった。ADLはすべて自立していた。【結果】通勤経路として,自宅から自宅最寄り駅までは1.3km,横断歩道は1ヶ所,段差は2cm以内であった。自宅最寄り駅から職場最寄り駅までは電車を利用し乗り継ぎが必要であった。職場最寄り駅から職場までは200m,横断歩道は1ヶ所,段差は2cm以内であった。本症例の歩行能力は,T字杖および短下肢装具を使用し,10m16秒,連続歩行距離1km,10cmの段差昇降は自立,施設内および横断歩道を利用しない範囲での自宅周囲の歩行は自立していた。通勤手段を歩行にて検討した結果,記銘力の低下はみられるが経路の記憶は可能,自宅および職場から各最寄り駅までは横断歩道を利用しない経路を設定することでその区間の歩行は可能であった。しかし,電車の利用はフレックス通勤であったとしても,ある程度の混雑が予想される。本症例においては電車乗降の流れにのる歩行速度や,満員電車内でのバランスが不十分であるうえ,注意の分配・転換の低下から周囲の状況把握と自身の安定性の双方を保つことは困難であるため,歩行での通勤は困難と判断した。会社側はどのような手段であれ通勤できれば復職は可能という状況であったため,通勤手段を片手片足駆動での車椅子にて検討した。車椅子走行能力は,駆動速度10m6秒,連続走行距離1km以上,段差昇降3cm以内,スロープ昇降8°以内であった。満員電車内でのバランスは担保されており,電車乗降は駅員の介助を受けることで歩行時の問題点は解決した。走行時の問題点として,環境に応じた状況判断が困難であること,不整地走行や努力走行時に麻痺側膝伸展パターンによりフットサポートから足部が落下しやすいことが挙げられた。入所から4ヶ月目に公共交通機関の利用練習を2回実施し,5ヶ月目で電車とバスを利用しての施設と自宅間の移動は自立となり,耐久性向上を目的に施設と自宅間の移動を段階的にその頻度を増やしていった。なお,妻の希望により自宅から最寄り駅間は自家用車での送迎となった。車椅子は介護保険レンタル対応で,妻による積み込みが可能な重量,足部が落下しないフットサポートの位置と滑り止め,不整地走行時に痙性が誘発されないためのクッションキャスター,屋外での段差を考慮したキャスター径を検討して選択した。靴は約3週間で踵が擦り減るため,ソールに硬質の素材を貼り,点でなく面で受けるように歩行に影響が出ない範囲でカッティングした。頻度は週末を挟んでの片道,往復,同日内での往復,週2回と徐々に増やし,7ヶ月目にて週3回通勤時間帯で可能となった。8ヶ月目に職場最寄り駅から職場間の練習を実施した。12ヶ月目で試し出勤を開始し,15ヶ月目で復職に至った。【考察】本症例において,動作能力と通勤経路の適合を検討した結果,設定した通勤経路を車椅子にて走行する動作能力自体は備えていたが,高次脳機能障害により環境から判断して動作を選択する能力が不足していた。そのため,実際の通勤経路にて,どの経路を走行すれば良いか,各段差やスロープにてその状況に合わせて動作方法を指導し,経験を積む必要があった。さらに,週5日通勤可能な耐久性には至っておらず,疲労による歩行の安定性への影響や作業およびパソコンの授業への影響を確認しながら,PTが通勤練習回数を調整する必要があった。また,使用物品を検討することが通勤手段獲得への一助となった。【理学療法学研究としての意義】通勤手段の獲得における理学療法士の役割は,動作能力を的確に評価し,高次脳機能や環境要因,本人および家族の理解を踏まえて適合させていくことである。また,実際の環境にて練習することでより確実なものとなる。
著者
遠藤 浩士 朝倉 敬道 長瀬 エリカ 浦川 宰 佐々木 良江 藤縄 理 竹中 良孝 名塚 健史 水田 宗達 根岸 朋也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P1422, 2009

<BR>【目的】平成20年度全国高等学校総合体育大会ボート競技大会において、埼玉県理学療法士会スポーツリハビリテーション推進委員会の中でコンディショニングサポート活動(以下、サポート活動)を行った.本大会でのPTによるサポート活動は全国でも初めての試みであり、競技・障害特性、活動成果について若干の知見を得たので報告する.<BR><BR>【対象・方法】試合出場選手695名、他関係者に対し、競技前・競技後のサポート活動を行った.公式練習を含む計7日間において、PT24名(1日平均6~7名)体制で、活動内容や利用者アンケートの集計結果を基に、競技の障害特性、介入の有効性について検討を行った.介入効果判定として、症状変化(ペインリリース法)、満足度調査(10段階法)、PTの主観的効果を指標とした.評価用紙及びアンケートの使用については、利用者から承諾を得た.<BR><BR>【結果】総利用者件数は311件で、1日平均44件、再利用率としては33%であった.男女率は、男性62%、女性38%、種目別ではシングル15%、ダブル37%、クフォド48%であり、特にクフォドのポジション別では、2番26%、3番30%の利用率が多かった.主訴は、疼痛37%、疲労感27%、張り感19%、だるさ11%であった.障害発生部位としては、男女共に腰部35%と多く、大腿部20%、下腿部14%、肩11%、膝8%であった.男女比による障害発生部位では、肩に関しては、男性よりも女性に高い傾向があった.発症期間は、大会期間中31%、7日以内5.3%、1ヶ月以内6.7%、1ヶ月以上前31%、未回答23%であった.発症機転としては、練習中29%、練習後27%、練習以外5%、不明8%、未回答31%であった.実施した具体的な内容としては、マッサージ30%、ストレッチ29%、リハ指導16%、促通8.7%であった.介入効果として、症状変化は、4以下が全体の57%、満足度調査結果は8点以上10点までが全体の86%、PTの主観的効果は、有効が61%であった.<BR><BR>【考察】障害の特徴としては、男女共に腰部・下肢への障害が多く、競技特性としてローイング運動そのもののパワーが要求される2番・3番のポジションにおける利用者が多かった.長時間における姿勢や不安定状況下での体幹の固定性が影響しているかと考えられる.特に肩の障害発生率では、女性の方が男性よりも高い傾向にあり、女性は男性に比べ、上肢への運動負荷・負担が強いられることや関節の弛緩性の問題なども影響している可能性がある.1ヶ月以上前のものや発症期間が不明確な事例など、慢性的症状を抱えている利用者が多かった.また、大会期間中における発症が予想以上に多く、大会直前の練習の追い込みや日頃抱えている慢性的症状が悪化したと推測できる.今回の利用者の症状変化・満足度調査結果やPTの主観的効果が高かったことから、PTが日常的に選手のコンディショニングに関わる事の重要性が示唆された.