著者
荒木 智子* 清宮 清美 渡邊 雅恵 井上 和久 須永 康代 石渡 睦子 柳田 千絵 河合 麻美 須藤 京子 伯耆田 聡子 吉岡 明美
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.15-21, 2011

埼玉県理学療法士会全会員を対象に職場環境に関する調査を実施した。960名より回答があり,平均年齢は30.5歳,97.5%が従事しており,病院・診療所が最も多かった。全体の38.8%が既婚者で子どもがいるのは66.3%であった。有給休暇取得率は50.9%であった。産前・産後休暇は女性の73.6%が取得した一方,子どもがいない群に制度の有無や利用の可否が「わからない」が高率にみられた。育児休暇は男性の5.0%,女性の60.5%が取得していた。国民平均値に比して埼玉県内の理学療法士は産前・産後休暇の取得率が全国より高く,育児休暇の取得率は低く示された。産前・産後休暇,育児休暇の制度の違いや復職後の不安により,取得状況が異なる背景が示唆された。今後妊娠・出産を迎える会員が増加することを考慮すると,就労継続を前提とした制度の周知,職場環境の整備,利用の促進が必要と考えられた。<br>
著者
笠井 健治 水田 宗達 清宮 清美 板垣 卓美
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E-134_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】パーキンソン病(Parkinson's Disease:以下PD)患者の死因の第1位は肺炎であり誤嚥性肺炎の予防は重要である。PD患者の嚥下障害は疾患の進行と必ずとも相関せず、嚥下スクリーニング検査による嚥下障害の検出も難しいとされる。近年、誤嚥のリスクを検出するための咳嗽機能評価が注目されている。本研究の目的はPD患者について嚥下障害に関連するスクリーニング検査結果と咳嗽機能について後方的に検討し、嚥下障害等の関係を明らかにすることである。【方法】対象は当センターにH27年8月からH30年5月までの間に入院したPD患者のうち摂食・嚥下障害看護認定看護師に嚥下機能評価の依頼があり、検査可能であった18名(72.7±4.0歳、男性10名)。評価項目は疾患重症度としてHoehn&Yahr分類とPD統一評価尺度第3部の総合得点(unified Parkinson’s disease rating scale‐Ⅲ:以下UPDRS-Ⅲ)、嚥下スクリーニング検査として反復唾液嚥下テスト、咳嗽機能評価として咳嗽時最大呼気流量(cough peak flow:以下CPF)と咳テスト、呼気機能評価として最長発声持続時間を評価した。誤嚥の発生有無は聖隷式嚥下質問紙のA項目に1項目以上該当する場合もしくは嚥下造影検査において嚥下障害が確認された場合に嚥下障害ありと判断した。嚥下障害あり群となし群に大別し各評価項目における群間の差の検定を行った。連続変数に対しては対応のないt検定もしくはMann-Whitney検定を用い、他の変数はχ2検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】嚥下障害あり群は7名、なし群は11名で群間比較ではCPFのみ有意な差を認めた(あり群218.6±115.0m/s、なし群368.2±127.0m/s、p=0.023)。またCPFはUPDRS-Ⅲ(r=-0.67、p=0.04)、最長発声持続時間(r=0.57、p=0.02)と有意な相関を認めた。【考察】嚥下障害を有する群では有意にCPFが低下し、CPFは疾患重症度および呼気機能と有意に相関していた。このことから、PDでは重度化とともに咳嗽機能が低下しやすく、咳嗽機能には呼気機能が影響すると考えられた。したがってPD患者の嚥下障害に対する理学療法においては咳嗽機能を改善することが重要であり、呼気機能を改善するアプローチの重要性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】研究参加者には入院時に臨床において得られた情報が後方視的に学術目的に用いられることについて口頭および書面にて説明し、同意を得られた場合にのみ同意書への署名を依頼した。また、本研究は埼玉県総合リハビリテーションセンター倫理員会の承認(H30-002)を得ている。
著者
渡邊 雅恵 須永 康代 石渡 睦子 荒木 智子 伯耆田 聡子 井上 和久 柳田 千絵 吉岡 明美 清宮 清美
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.112, 2009

【目的】 近年女性の理学療法士(以下、PT)が増えており、埼玉県理学療法士会(以下、県士会)でも会員の約半数が女性である。その中で出産・育児の関係で離職するPTが多いのが現状である。また、女性に限らず労働条件等で転職・離職するPTも少なくない。<BR> 復職支援システム検討委員会は、離職率の低減および離職をした会員が復職できるようシステムを検討していくことを目的にアンケート調査を実施した。<BR>【対象と方法】 2008年10月における、県士会に登録されている会員2168名を対象に郵送調査法アンケートを実施した。内容は基本属性(経験年数、年齢、家庭環境、就労状況)、職場環境(職場形態、人数、収入、残業、制度利用状況)等を多選択方式および自由記載での回答とした。<BR> なお、対象者には、依頼文書にアンケートの目的を提示した上で、無記名調査、データの統計的処理、個人情報の保護等の説明を記載し、調査に同意していただける方のみアンケートを返送していただいた。 【結果】 回答数は960名、回収率は44.3%であった。男女比はほぼ同数。平均年齢は30.5歳で58%が30歳以下であった。就業しているPTは943名(98.2%)、離職中は17名(男1、女16、1.8%)であり、離職中の女性に注目した。16名の平均年齢は30歳でそのうち子ども有りは11名であった。離職の理由は、転居が多く次に結婚・出産・育児・健康上の理由であった。復職希望は、有りが8名、条件付きが4名であった。復職が困難な理由として、託児所の問題が最も多く70%をしめていた。その他に、労働条件、育児の問題、通勤条件があった。託児所に関しては、職場に職員専用託児所はあるがPTは利用できないという回答もあった。県士会に対するアンケートの自由記載として、保育施設の確保、パート・非常勤の求人情報の提供、出産育児に理解のある職場環境づくりがあった。また、それ以外にも職場を長期間休むことにより最新の情報入手困難、次々に変わるシステムを理解するのが困難、知識や技術の低下などがあり、それらに対するフォロー体制を作ってほしいという要望が見受けられた。<BR>【考察】 今回アンケートに回答して下さった離職者PTが少なく実態は把握できていない。しかし、就業を継続することや復職するために出産・育児、特に託児所の有無に関する影響が大きいことが再確認できた。<BR> 今回のアンケートの結果を基に、今後県士会としてフォロー体制を作るための研修会など復職支援の検討をすすめていく。
著者
廣島 拓也 杉山 真理 武川 真弓 清宮 清美 鈴木 康子 河合 俊宏
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-29, 2015 (Released:2015-01-09)
参考文献数
5

【はじめに】車椅子処方の際の座位評価において,左右の坐骨の高低差を数値で表現することは困難である。本報では,左右の坐骨の高低差を,股関節屈曲角度または上前腸骨棘(ASIS)傾斜角度から,推測可能か検証した。【方法】対象は股関節屈曲角度の片側が90度以上(健側)で,対側が90度未満(患側)の,脊柱側弯のない12名とした。両側の股関節屈曲角度と坐骨間距離,ASIS間距離を計測した。測定姿勢は,足底を床に接地させ,骨盤前後傾中間位,健側膝関節90度屈曲位,健側腓骨が鉛直となる姿勢とした。ASISの傾斜角度と坐骨傾斜角度は,臀部の陰性モデルを作成し測定した。坐骨高低差とASIS高低差を算出し,坐骨高低差を従属変数,患側股関節屈曲角度・ASIS高低差を独立変数とした単回帰分析により回帰式を算出し,検討した。【結果】回帰式は[坐骨高低差=-0.276×患側股関節屈曲角度+28.146](回帰係数p=0.01)と,[坐骨高低差=0.261×ASIS高低差+4.469](回帰係数p=0.96)が算出された。【結論】股関節屈曲角度に左右差のあるものに対して,患側股関節屈曲角度から坐骨の高低差が推定可能であることが示唆された。身体機能評価に基づいた車椅子処方の一助となると考えられる。
著者
石﨑 耕平 水田 宗達 清宮 清美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】当指定障害者支援施設は,障害者総合支援法に基づき理学療法士(以下,PT)が関わりながら就労を支援している。通勤の自立は就労の可能性を高める要素であるが,通勤は各々の環境や条件が異なるため,動作能力のみの評価では不十分である。今回,車椅子片手片足駆動での通勤手段を獲得した症例を通して,通勤手段の獲得におけるPTの役割について検討する。【方法】症例は脳出血により右片麻痺を呈した40歳代男性。入所時における発症からの期間は313日であった。身体機能は,下肢Brunnstrome Recovery StageIII,感覚障害は中等度鈍麻であった。高次脳機能は,記銘力低下,注意の分配・転換の低下,遂行機能の低下,易疲労性がみられた。失語症は軽度で日常会話は可能であった。動作能力は,基本動作は自立,Berg Balance Scale46点であった。ADLはすべて自立していた。【結果】通勤経路として,自宅から自宅最寄り駅までは1.3km,横断歩道は1ヶ所,段差は2cm以内であった。自宅最寄り駅から職場最寄り駅までは電車を利用し乗り継ぎが必要であった。職場最寄り駅から職場までは200m,横断歩道は1ヶ所,段差は2cm以内であった。本症例の歩行能力は,T字杖および短下肢装具を使用し,10m16秒,連続歩行距離1km,10cmの段差昇降は自立,施設内および横断歩道を利用しない範囲での自宅周囲の歩行は自立していた。通勤手段を歩行にて検討した結果,記銘力の低下はみられるが経路の記憶は可能,自宅および職場から各最寄り駅までは横断歩道を利用しない経路を設定することでその区間の歩行は可能であった。しかし,電車の利用はフレックス通勤であったとしても,ある程度の混雑が予想される。本症例においては電車乗降の流れにのる歩行速度や,満員電車内でのバランスが不十分であるうえ,注意の分配・転換の低下から周囲の状況把握と自身の安定性の双方を保つことは困難であるため,歩行での通勤は困難と判断した。会社側はどのような手段であれ通勤できれば復職は可能という状況であったため,通勤手段を片手片足駆動での車椅子にて検討した。車椅子走行能力は,駆動速度10m6秒,連続走行距離1km以上,段差昇降3cm以内,スロープ昇降8°以内であった。満員電車内でのバランスは担保されており,電車乗降は駅員の介助を受けることで歩行時の問題点は解決した。走行時の問題点として,環境に応じた状況判断が困難であること,不整地走行や努力走行時に麻痺側膝伸展パターンによりフットサポートから足部が落下しやすいことが挙げられた。入所から4ヶ月目に公共交通機関の利用練習を2回実施し,5ヶ月目で電車とバスを利用しての施設と自宅間の移動は自立となり,耐久性向上を目的に施設と自宅間の移動を段階的にその頻度を増やしていった。なお,妻の希望により自宅から最寄り駅間は自家用車での送迎となった。車椅子は介護保険レンタル対応で,妻による積み込みが可能な重量,足部が落下しないフットサポートの位置と滑り止め,不整地走行時に痙性が誘発されないためのクッションキャスター,屋外での段差を考慮したキャスター径を検討して選択した。靴は約3週間で踵が擦り減るため,ソールに硬質の素材を貼り,点でなく面で受けるように歩行に影響が出ない範囲でカッティングした。頻度は週末を挟んでの片道,往復,同日内での往復,週2回と徐々に増やし,7ヶ月目にて週3回通勤時間帯で可能となった。8ヶ月目に職場最寄り駅から職場間の練習を実施した。12ヶ月目で試し出勤を開始し,15ヶ月目で復職に至った。【考察】本症例において,動作能力と通勤経路の適合を検討した結果,設定した通勤経路を車椅子にて走行する動作能力自体は備えていたが,高次脳機能障害により環境から判断して動作を選択する能力が不足していた。そのため,実際の通勤経路にて,どの経路を走行すれば良いか,各段差やスロープにてその状況に合わせて動作方法を指導し,経験を積む必要があった。さらに,週5日通勤可能な耐久性には至っておらず,疲労による歩行の安定性への影響や作業およびパソコンの授業への影響を確認しながら,PTが通勤練習回数を調整する必要があった。また,使用物品を検討することが通勤手段獲得への一助となった。【理学療法学研究としての意義】通勤手段の獲得における理学療法士の役割は,動作能力を的確に評価し,高次脳機能や環境要因,本人および家族の理解を踏まえて適合させていくことである。また,実際の環境にて練習することでより確実なものとなる。