- 著者
-
永井 伸夫
佐伯 由香
- 出版者
- 文化女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
本研究の目的は,足浴操作が免疫機能および自律神経機能におよぼす効果を明らかにし,身体への効果を総合的に検討することである。健康な20歳前後の女子学生(21〜24歳)を対象者として,足浴操作は椅座位にて42℃の湯に足を浸けて10分間行うことを基本とし,その他に足を湯に浸けた状態で足底部への刺激として気泡刺激と振動を加える操作を行った。自律神経機能の評価は心拍変動の周波数解析を行い,免疫機能については,白血球分画,リンパ球サブセットをフローサイトメトリーにて解析し,またナチュラルキラー(NK)細胞の細胞障害活性を測定した。さらに足浴によるストレス軽減の有無等を検討するため,血漿中のTh1細胞産生サイトカイン(IL-2,IFN-γ,TNF-α),Th2細胞産生サイトカイン(IL-4,IL-6,IL-10)の測定を行い,Th1/Th2バランスについて検討した。足浴を行うことにより,副交感神経系の機能が亢進する傾向が認められ,これによって免疫機能においてもNK細胞障害活性が有意に増加し,これらの効果は足浴による温熱刺激に足底部への触・圧刺激が加えられることによって増強された。白血球分画においては,足浴後に好中球の増加が認められたが,これも自律神経系の変化によることが推察された。足浴の効果が,足底部への体性感覚刺激によるものなのか,温熱刺激が加わることによってもたらされた効果なのかを明らかにするために足底刺激のみを行った場合と,膝下まで湯につけた場合とを比較検討したところ,足底部への触・圧刺激と温熱刺激の両方が存在することで効果が現れることが確認された。足浴を一定期間(7日間)実施し,その前後における免疫機能,自律神経機能の評価を行ったところ,自律神経機能では副交感神経系の機能が亢進し,このことによりNK細胞障害活性が増加し,免疫機能を高める傾向が得られた。またTh1/Th2バランスを示すサイトカインについては,足浴により大きな変化を示すことはなく,概して低値を示していた。足浴によりリラクゼーション効果がもたらされ,副交感神経系が優位になることで免疫機能を高めることが推察された。これらのことから免疫機能の低下した患者や高齢者などを対象に気泡・振動付きの足浴を行うことによって,身体機能の改善が期待できることを示唆し,足浴を用いた効率的ケアに貢献するものと考えられた。