著者
永井 厚志
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.26-31, 2014-04-30 (Released:2015-11-13)
参考文献数
7

本邦では2013年に日本呼吸器学会と日本呼吸ケア・リハビリテーション学会から相次いでCOPD診療のガイドラインが上梓された.COPDの治療・管理にあたっては,多面的な病態像を示すCOPDを捕捉する視点によって提言する診療手順や内容が異なる.国際ガイドラインGOLDは,症状の程度と疾患進展のリスクを指標とし薬剤選択のあり方を示した.一方,スペインのガイドラインではCOPD病型を肺気腫型,慢性気管支炎型,喘息合併型とし,それらの病型を基本にして増悪頻度の多寡で治療方針を示した.また,英国では気管支拡張症に対応するガイドラインのなかでCOPDを取り扱い,カナダでは持続する呼吸困難を軽減する手順書のなかでCOPDを扱っている.一方,わが国のガイドラインは気腫型と非気腫型COPDに病型分類し,治療は呼吸機能や病状を複合的に把握したうえで重症度を決定し,それに応じたステップアップ治療を推奨している.
著者
石原 陽子 郡 和宏 永井 厚志
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

コラーゲン特異的分子シャペロンHSP47の肺の気腫化・線維化への関与について、ブレオマイシン肺臓炎、長期喫煙、TNF-α過剰発現肺線維症マウスを用いて下記の点を検討した。1.肺の気腫化と線維化病巣の並存においてHSP47は関与しているか。肺線維化と気腫化並存モデルでは、HSP47の明確な関与を示唆する明らかな所見を認めなかった。その原因として、長期喫煙暴露でのマウス肺の気腫化と線維化が軽度でありHSP47遺伝子発現へ影響するほどの肺傷害が誘導されなかった可能性があり、短期間で肺の気腫化と線維化が発現する実験モデルを作成し、さらに検討する必要がある。肺線維化に関しては、肺線維症モデル実験から、HSP47が肺線維化に関与している可能性を示唆する所見が得られた。2.HSP47遺伝子発現量と肺線維化・気腫化の発症・進展メカニズムとの関連性。喫煙モデルでは、肺気腫発症へのHSP47の関与を示唆する所見は得られなかった。可逆的肺線維症では、初期に一過性のHSP47遺伝子発現を認め、非可逆的線維症モデルでは発症よりもむしろ進展過程でHSP47遺伝子発現抑制が観察された。この結果は、非可逆的及び可逆的肺線維化の発症及び進展へのHSP47の関与を示唆する所見と考えられた。3.HSP47が可逆性及び不可逆性肺線維化の規定因子の一つとなりえるか。可逆性と不可逆性肺線維化モデルの成績を比較した場合、可逆性肺線維症では、HSP47遺伝子発現量の増加は一過性であり、不可逆性肺線維症では遺伝子発現の抑制が見られたことから、HSP47はその規定因子の一つとなりえる可能性が見いだされた。4.HSP-47の分子レベルでの発現量を調節することにより、肺マトリックス及び正常肺構築の保持は可能か。非可逆性肺線維症モデルでは、肺換気パターン、肺HOP、病理所見で肺線維化の著明な進展が認められた時期にHSP47遺伝子発現が抑制され、その状態は1年後まで保持された。この結果は、HSP47遺伝子制御によって肺マトリックス及び正常な肺構築への修復は不可能であるが、その進展を抑制することによって代償性肺呼吸機能を保持できる程度に制御できる可能性が示唆された。5.HSP47の調節による遺伝子治療の可能性。上述した実験成績から、HSP47遺伝子発現量の制御によって、ヒトにおいても肺線維化の進展抑制が出来る可能性が見いだされた。
著者
山脇 功 桂 秀樹 平良 真奈子 角陸 知妹 橋本 幾太 千代谷 厚 近藤 光子 玉置 淳 永井 厚志 金野 公郎
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.1331-1336, 1996-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
21

最近1年間に漢方薬による薬剤誘起性肺臓炎と診断した6症例を臨床的に検討した. 発症までの薬剤投与期間は14日から110日 (平均38日) であった. 症状は呼吸困難, 発熱, 乾性咳嗽が多く, 聴診上 fine crackles を聴取した. 検査所見では全例でCRPとGOTの異常を認め, LDH上昇は5例, 好酸球増多は1例であった. 胸部単純X線およびCT写真上, 陰影は両側びまん性で線状・網状の間質陰影を主体に種々の程度の浸潤影を伴うものが多く, その分布に一定の傾向はなかった. また, 1例は胸水を伴っていた. 4例に行われた気管支肺胞洗浄液では, リンパ球の増加とCD4/CD8比の低下が多く認められ, 経気管支肺生検では4例中3例に器質化肺炎像と胞隔炎の組織所見が得られた. 薬剤リンパ球刺激試験では6例中4例が陽性であった. 2例は漢方薬の中止により, 4例はステロイド投与により軽快した. 漢方薬服用中は薬剤誘起性肺臓炎の発現に注意が必要と考えられた.