著者
永嶋 久美子 小川 睦美 島田 淳子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.391-399, 2011 (Released:2014-04-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

凍みもちは鎌倉時代に端を発し,特に東北地方を中心に日常食として広く食されてきた伝統的保存食品である。伝統的凍みもちの製造における,凍結・乾燥工程中の内部温度は温度履歴より,凍結・融解を繰り返しながら最大氷結晶生成帯で長時間保持されており,極めて狭い温度帯に限定されていることを明らかにした。乾燥後は水分含量,重量,体積,密度の減少が見られた。乾燥後の伝統的凍みもちの内部組織構造を観察したところ,大小さまざまな空隙が生じ,切りもちとは異なる多孔質構造を有していた。水浸漬後では,密度の変化は見られなかったものの,吸水率は非常に高く,内部組織構造が影響を及ぼしていることが明らかになった。さらに,食味特性においては,伝統的凍みもちは焼成後の軟らかさを維持し,軟らかく,崩れやすいもちであり,切りもちとは明らかに異なる食感を有し,この特徴を長時間保持し得ることが明らかになった。
著者
前田 文子 早瀬 明子 蓮沼 良一 永嶋 久美子 黒川 理加 小澤 陽子 大坂 佳保里 陳 美慧 福永 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 今回提案の調理方法はオーブンを使い、60~90℃の範囲に保ち、温度管理を行ってセミドライ食品を製造する方法である。一般にはセミドライとは、常温で乾燥する方法を言うが、今回の提案した方法では、温度70~100℃の中温で乾燥する方法なので、中温乾燥セミドライ乾燥方法と名づけた。今回の発表ではこの方法により、各種の肉・果物・野菜についてその好適な温度設定などについて明らかにするために行ったことについて報告する。 【方法】 食材には肉類として鶏肉、豚肉、牛肉を、野菜としてトマト、キュウリ、ダイコンを、キノコ類としてエノキ茸、しめじ、エリンギを、果物としてりんご、パイナップル、キュウイを選び実験に供した。実験装置としては日立オーブンMRO-BV100型を改造して温度設定が可能ものを使用した。今回は70~100℃に設定し、90~120分間処理した。 【結果および考察】 全般的に生鮮食材の40~50%の水分量にすると、食材の味は損なわれずに旨味を引きだせることがわかった。肉類の好適な温度は水分の多い果物と比べてやや低い温度の方が良質のものが仕上がることが分かった。ささみ鶏肉の場合は添加物を一切使わなくとも冷蔵保存の場合より、数十倍長く保存できることがわかった。一部の素材では食塩で下処理することにより食味の向上、変色防止に効果があることがわかった。 【まとめ】 食材の味をそのまま生かし、旨味を引き出すことができること、温度設定だけで簡単に美味しい加工食品が出来、食塩を添加しなくても日持ちがよいセミドライ加工が製造できることがわかった。
著者
福永 淑子 船山 敦子 高崎 寿江 永嶋 久美子 臼井 照幸 蓮沼 良一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.11, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 冷蔵庫を用いて強性通風した庫内において肉、魚および野菜を低温で乾燥させることより新鮮さを保ちつつ保存性が高まった美味しいセミドライ食品製造する方法を開発した。セミドライ食品は一般には野外の通風のよい所にさせるものであるが、本開発技術では冷蔵庫内の低温乾燥した空気より食材を乾燥させてセミドライ食品を製造する方法であり、この方法を冷風乾燥法と名づけた。 【実験】 材料としては、肉類、魚類、野菜類、キノコ類および果物類を選び、その効果を検討した。今回は市販(日立R-SF60XM型)に強制通風させて8~12℃に設定した、約25cm×15cm×12cmのプラスチック性箱を製作し、この中に網棚を設けた。上記の食材をこの網棚に並べ約一日から二日間乾燥させた。 【結果および考察】 この操作により、個々の食材によって風味や色および味が異なるが、従来の常温乾燥セミドライものと比べて全体的に以下のような優れた特徴を持つ食品を製造できることが明らかになった。_丸1_常温乾燥のものと比べて、全体的にも元の生の色に近く、肉類については特に透明感と光沢感が強いこと、_丸2_特に肉類では生臭みはなくなり、野菜類ではその特有の風味が強まること、_丸3_一部の食材では熟成作用もあることが感じられ、果物と野菜では濃縮した美味しい味とともに、テクスチャーが変わり、新たな食感の食品となること、_丸4_キノコ類では水で戻すと速やかに旨味成分が溶出し、しかも濃いだしがとれること、エノキ茸ではそのまま食すると非常に美味しい新たな食品となることが、わかった。以上のように低温乾燥セミドライ法により新しい特徴を持った加工食品・食材が製造できることがわかった。
著者
福永 淑子 永嶋 久美子 小川 睦美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.147-157, 2015 (Released:2015-04-16)
参考文献数
12

shimi-mochi is a preserved food in the Tohoku area of Japan. The main materials used for shimi-mochi are glutinous rice and non-glutinous rice powder. shimi-mochi is repeatedly frozen and thawed in natural cold air to dry. It is soaked in water and cooked to eat, making it tender and easily broken. We made artificial shimi-mochi in this study by only using those main materials. The effect of the freezing and drying conditions on the characteristic inner structure and sensory properties of artificial shimi-mochi were investigated. It was possible to make artificial shimi-mochi by freezing and drying at -5℃ for 18 hours and at 3℃ for 6 hours, repeating this cycle for 28 days. Artificial shimi-mochi produced in this way had many vacant spaces similar to the traditional product, although it absorbed water in a shorter time than the traditional product. After absorbing water, artificial shimi-mochi retained its shape and, after cooking, retained its softness and stickiness for a significant time. Artificial shimi-mochi had the characteristic inner structure and sensory properties of the traditional product. Although the visual appearance was similar, the inner structure of artificial shimi-mochi produced under other conditions was completely broken after absorbing water. This result revealed that subtle differences in the process of freezing and drying affected the success or failure of producing artificial shimi-mochi.
著者
福永 淑子 蓮沼 良一 大坂佳 保里 永嶋 久美子
出版者
川村学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1.日本米(うるち米)の米粉を選別して180メッシュ以上の粒径の小さいものだけで米麺をつくると、でんぷんを一切加えなくとも、こしがあり、かつ嗜好性の高い純米麺を作れた。すなわち、純米麺は、米粉を180メッシュ以上の細かい粒径にするだけで日本米からでも製造できることが明らかになった。2.インディカ米であるタイ米や台湾米ではアミロペクチンの含有割合が少ないので純米麺が製造でき、一方アミロペクチンの含有割合が多い日本うるち米では純米麺が出来ないという通説がある。しかし、180メッシュ以上の粒径の小さい米粉にアミロペクチンをかなり添加しても純米麺が製造できることが分かった。3.以上の実験結果から、従前の通説は間違いで、純米麺が製造できる条件としては、アミロペクチン含有量が少ないということではなく、米粉の粒径が180メッシュ以上に細かいという条件が必要であることが明らかになった。4.また、アミロペクチンが少ないとこしが強くおいしい麺が製造できると言う説もあるが、アミロペクチン含有量は純麺のこしの強さや食味にはとくに関係はなく、米粉の粒径がこしの強さや食感に関係が深いことも明らかになった。5.180メッシュ以上の細かい粒径の米粉は、浸水しておいた日本うるち米を水挽きすることによって効果的に得ることができることが分かった。