著者
上園 昌武 江口 貴康 関 耕平
出版者
島根大学
雑誌
山陰研究 (ISSN:1883468X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-18, 2012-12-31

筆者らは、2012年5月下旬から6月15日まで松江市民を対象に「島根原発についての意識調査」(質問項目65問) を行い、福島原発事故後の原発立地住民の意識構造の特徴を明らかにした。島根原発1~3号機の稼働の是非について、「稼働すべきではない」が半数以上を占め、「稼働すべき」を大きく上回った。稼働賛成者は「原発による経済効果」や「原発の安全性」への信頼が高いが、稼働反対者は、地震対策・津波対策・安全管理体制などへの不信感が強く、巨額の迷惑料を原発立地地域にばらまいたとしても、この層が原発推進や容認に安易に転ずるとは考えにくい。この点は、福島原発事故によって松江市民の原発への考え方が大きく変わったとみるべきである。この他にも、原発の賛否の立場の違いが「地元」の範囲、原発の発電コストの高さ、節電への取り組みに影響を与えていることが明らかとなった。
著者
江口 貴康
出版者
島根大学
雑誌
山陰研究 (ISSN:1883468X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-22, 2013-12-31

本稿は、島根原発に対する諸不安と個人属性との関係について考察することを目的とする。分析に際しては、松江市民に対して実施した意識調査データを使用した。分析で扱った個人属性は、これまで先行研究で扱われてきた性別および年代のほか、同居家族の人数、生活水準、居住年数、居住形態、職業である。分析の結果、女性や主に高齢者で不安が強いことが示された。またそれ以外の属性要因で複数の不安に影響を与えるのは、同居家族の人数と居住年数であった。特に居住年数への着目は、原発立地地域に住む松江市民の諸不安への対処を講じるのに役立つ可能性がある。
著者
吹野 卓 江口 貴康 片岡 佳美 福井 栄二郎
出版者
島根大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、過疎集落において「聞き書き文集」を発行し、それが住民間の「共感形成」に及ぼす効果を検討する実験的な研究である。文集のような日常的対話とは異なる新たな媒体が一定の効果を持つこと、および過疎化・高齢化が進行している集落では「家」の垣根を越えた援助行動が必要となっており、そのために住民相互の「共感」がもつ意味が大きいことが判った。またこの手法は地方自治体の新人研修に応用された。