著者
高尾 義明 江夏 幾多郎 麓 仁美
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.68-81, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
12

本稿の目的は,COVID-19の流行に伴う職務環境の変化を営業・マーケティング職がどのような形で経験し,それにどう適応しようとしたのかを明らかにすることである。本稿では,2020年4月中旬から7月下旬にかけて,3,073名の就労者を対象に実施した質問票調査の分析を行った。その結果,営業・マーケティング職は,他の職種に比べ,①心理面では,4月調査では差が見られなかった不安感が7月調査では緩和され,差が拡大していること,②職務特性では,職務遂行プロセスの他者依存性(近接性)が4月から7月にかけて低下していること,③適応行動については,両利き行動の探索的行動は両方の時点で積極的に行えているものの,深化的行動は4月から7月の間で低下していることが明らかとなった。また,営業・マーケティング職の適応行動には,役割明確性や職務の裁量性,職務成果の他者依存性といった職務特性やその変化とリモートワークの実施が影響を与えていることも示された。
著者
江夏 幾多郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.33-48, 2022-09-20 (Released:2022-12-02)
参考文献数
66

本稿で行った質問票調査によると,人事評価の公正性認知は,現在や将来に関する時間展望をより前向きなものにする.また,人事評価の手順や実務を入念なものにすることは,従業員の総合的公正判断を高めると同時に,時間展望に対して直接的で否定的な影響を部分的に与える.配置転換が多く行われがちな日本の人事慣行の下では,人事評価に関するそれまでの好ましい経験が将来も継続するとは限らないことを,従業員が予期している可能性がある.
著者
米岡 秀眞 江夏 幾多郎
出版者
会計検査院
雑誌
会計検査研究 (ISSN:0915521X)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.9-31, 2022-03-22 (Released:2022-03-22)
参考文献数
59
被引用文献数
1

本研究の目的は,近年の公務員改革に伴う人事管理・給与上の処遇の変化を踏まえた上で,地方自治体における不祥事の目的の違いに着目して,その発生要因を定量的な実証分析により明らかにすることにある。 実証分析では,2006 年度から2013 年度までの都道府県パネルデータを用いて分析を行ったところ, ①金銭的な利得を目的とした不祥事と金銭的な利得を目的としない不祥事のいずれについても,地方公務員の給与水準が相対的に低くなる状況下でより多く発生する,②金銭的な利得を目的としない不祥事は,全職員に占める管理職比率が低くなる,もしくは管理職適齢期にある50歳代職員に占める非管理職比率が高くなる状況下でより多く発生するものの,退職金の水準を高く維持することでその増加が緩和される,との二つの主要な結論を得た。 得られた結論から,金銭的な報酬の多寡が不祥事の発生要因となる一方で,職員の年齢構成の偏りや組織変革の進展に伴う昇進可能性の低下が,特に勤務不良などの金銭的な利得を目的としない不祥事の発生要因となっていることが示唆される。既存の実証研究では,わが国の地方公務員による汚職や不祥事の発生に対して,給与水準の多寡が一般的に影響を与えるものと考えられてきたが,本研究によって給与水準以外の要因が不祥事の発生要因となり得ること,並びに不祥事の原因と結果の関係が複数存在していることが明らかとなった。 以上,わが国の地方自治体における不祥事の発生メカニズムに関して,新たな発見事実がもたらされており,学術上の少なくない貢献があるものと考えられる。
著者
江夏 幾多郎 平野 光俊
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.67-79, 2012-03-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
44

近年の日本企業で普及しつつある社員格付原理としての役割主義について理論的に定式化し,その機能要件を明らかにした.統計的分析の結果によると,能力主義と職務主義の性質を併せ持つ役割主義が業績に負の影響を与える傾向は,人事権が人事部に集中するほど弱くなる.また,対正規従業員比でスタッフ数が少ない,少数精鋭的でありうる人事部ほど,「役割主義×人事部集権」の機能性の向上に貢献できることが示された.
著者
江夏 幾多郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.80-94, 2012-03-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
38

人事システムがある方針を反映する際の首尾一貫性の程度が組織パフォーマンスに及ぼす影響について,統計的に解明した.人事施策の充実度における正規従業員と非正規従業員の間での均等度に着目し,その程度における「基本システム」と「個別の管理分野」のマッチングが中程度の時に組織パフォーマンスが最大化する,という傾向が見いだされた.人事システムにおける首尾一貫性の追求に際しては,機能と逆機能が同時に現われる.