著者
江澤 雅彦
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.449-456, 2014-08-10 (Released:2014-08-23)
参考文献数
40
被引用文献数
1

We review the recent progress of the study of silicene, which is a honeycomb structure of silicon atoms. Silicene shares many similar properties with graphene but has some extra exciting properties since it is a topological insulator due to its spin-orbit interactions. Silicene has so far been synthesized only on a substrate. The synthesis and the measuring physical properties of silicene are interesting playgrounds of the surface science.
著者
江澤 雅彦
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.610, pp.610_1-610_16, 2010-09-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
11

米国の住宅バブルを前提としたサブプライムローン・ビジネスにおいて,住宅ローン債権の証券化は,そのリスクを国境,業態を越えて拡散させ,またハイ・レバッレッジ経営はその拡散スピードを増加させた。そしてバブルの崩壊=住宅価格の下落により,AIGは,証券化商品の価値下落,CDS取引にもとづく保証金の請求急増という状況の中,準国有化に追い込まれた。またそうした米国発金融危機は,わが国の生保事業にも資産運用環境の悪化をもたらし,さらに商品販売においては特に変額年金保険の分野で問題を生じさせた。
著者
江澤 雅彦
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.289-294, 2020-05-05 (Released:2020-10-14)
参考文献数
31

トポロジカル絶縁体は近年発見された物性物理における重要な概念である.最近では物性物理に留まらず量子情報や素粒子など様々な分野で関心を集めている.トポロジカル絶縁体では,その名の通り試料内部(バルク)は絶縁体でバンドギャップがある一方,試料外部との境界にはギャップレスな状態が現れ金属的に振る舞う.これはバルクがゼロでないトポロジカル数をもつことの帰結であり,バルク境界対応と呼ばれている.ドーナッツとマグカップの例における穴の数のように,トポロジカル数は離散的な値しかとらない.今の場合,試料の外は真空であるからトポロジカル数はゼロである.一方,ギャップが開いている限りトポロジカル数は変化できないため,トポロジカル数が境界を挟んで両側で異なる値をもつためには境界でギャップを閉じなければならない.この結果,D次元のトポロジカル絶縁体にはD-1次元のギャップレス境界状態が現れる.このようにトポロジカル絶縁体の表面状態の存在はトポロジカルに保護されているので,ランダムさや不純物に対して堅牢であり,デバイスの微細化・高性能化・エラー耐性向上に寄与すると考えられている.同様の議論は超伝導体にも適用でき,トポロジカル超伝導体と呼ばれている.最近,このトポロジカル絶縁体を拡張した“高次”トポロジカル絶縁体という概念が提案され注目を浴びている.例えば3次元(D=3)の場合,従来のトポロジカル絶縁体では2次元表面にギャップレス状態が現れるのに対し,“2次”トポロジカル絶縁体では表面にはギャップがあり,境界の境界である結晶の稜線にヒンジ状態と呼ばれる1(D-2)次元状のギャップレス状態が現れる.同様に2次元(D=2)の場合,従来のトポロジカル絶縁体では試料端に1次元状のギャップレス状態が現れるのに対し,“2次”トポロジカル絶縁体では試料端にはギャップがあり,試料の角に0(D-2)次元状のゼロエネルギー状態(コーナー状態)が現れる.これらは従来のバルク境界対応と明らかに異なる.同様に高次トポロジカル超伝導体や高次トポロジカル半金属なども考えることができる.高次トポロジカル絶縁体は,バルク境界対応の観点から次のように理解できる.高次トポロジカル絶縁体もバルクはトポロジカル数で特徴づけられる.ただし,このトポロジカル数は鏡映対称性や回転対称性など,系がもつ対称性によって保護されている.このように対称性に保護されたトポロジカル数は,対称性が破れた場合には一般には量子化しない.よってトポロジカル数を規定する対称性が試料の境界で破れた場合,上述のギャップレス境界状態は混成してギャップが開く.しかしその場合でも境界の境界で対称性が満たされていれば,そこではギャップレス状態の存在が保証される.高次トポロジカル絶縁体のヒンジ状態はビスマスの単結晶で実験的に観測されている.また,鉄系超伝導体において高次トポロジカル超伝導を示唆するヘリカル・マヨラナ・ヒンジ状態が報告されている.この他,音響系,マイクロ波導波路,LC電気回路など人工トポロジカル系でも対応する現象が観測されている.電気回路ではトポロジカル相転移を容易に実現でき,インピーダンス共鳴によって実測可能である.さらに回路に抵抗を導入することで非エルミート・高次トポロジカル系へと自然に拡張される.また,回路にダイオードを導入することで非相反な非エルミート・高次トポロジカル系も実現できる.このように高次トポロジカル絶縁体へと概念を拡張することで,対象となる物理系が大きく広がるだけでなく,本来,トポロジカルな系の背後にある物理的構造も解き明かされつつある.
著者
江澤 雅彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

「保険顧客の需要を喚起・認識させ、その需要に合致した適切な保険商品を保険顧客が選択することを促すという役割を期待される募集行為の本質は、保険商品をめぐる情報を提供し、それについて保険顧客の理解を得て、その後、契約締結にいたらしめることに他ならない」という認識の下、平成16年度日本保険学会大会(10月23日、上智大学)の「シンポジウム」において、保険募集行為規制の沿革をたどり、特に、保険募集人の禁止行為を規定した保険業法300条のうち、情報提供に係るものとして、「重要事項の説明」、「不正転換・乗換」、「予想配当」を検討した。結論として、保険募集行為の2重構造性を認識すべきであると述べた。すなわち、1つは「全社共通部分」で、保険のニーズを喚起し、それを質的(保険種類)、量的(保険金額、保険料の大きさ)に明確にさせるプロセスである。これは特定会社の特定商品の購入に直接結びつくものではないが、それは募集行為の今1つの構成要素である、「自社商品販売促進部分」にとり不可欠の前提となっている。これは、保険という、その需要が間接的である商品を扱う「業界共通のコスト」として積極的に負担する必要がある。個別会社にとり一見迂遠に思える「保険リテラシー」を充実させ、「情報を十分得た上での保険購入あるいは保険の乗換」を図ることが、結局は、喫緊の課題である「失効・解約の増大」といった問題解決にも資すると主張した。