著者
高田 望 佐藤 悠 吉田 翔 池淵 周一
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2014年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100040, 2014 (Released:2014-12-01)
被引用文献数
2

近年、地上雨量観測所では捕捉出来ない局地的な大雨が多発しており、面的雨量情報(以下、メッシュ雨量データという)の重要性が一層高まっている。5分遅れ程度で利用可能な日本全域を網羅するメッシュ雨量データとしては気象庁合成レーダー、国土交通省Cバンド合成レーダ雨量(以下、国交省合成レーダーという)が存在する。 著者らはダム流入量予測を目的に、地上雨量計データ及びメッシュ雨量データを活用する降雨予測手法を開発し、そのシステム化と運用を行ってきた。ここでメッシュ雨量データは雨域の移動予測を行う上で初期値となる。さらに観測及び予測雨量は分布型流出予測システムの入力値となり流量に変換される。すなわち、メッシュ雨量データの精度は降雨予測及び流出予測の精度に直結すると言える。2014年1月、気象庁合成レーダーに続いて国交省合成レーダーについても、デジタル値の民間利用が可能となった。そこで両者の精度比較を、気象庁アメダス観測値を用いて行った。評価対象地域は近畿地方(東経134度30分~137度、北緯33度30分~36度)とし、2013年の1年間を評価対象期間として以下の方法で精度評価を行った。   (1)     5分毎のメッシュ雨量データを積算し、正時毎に1時間雨量データを作成する。 (2)     毎正時のアメダス時間雨量データに対する上記(1)で作成したメッシュ雨量データの、①相関係数 ②二乗平均平方根誤差 ③総雨量比(メッシュ雨量/アメダス雨量)をアメダス観測点毎に算出する。 (3)     上記評価指標①②③の分布図を作成し、両メッシュ雨量の精度特性を面的に評価する。 (4)     全141地点の評価値の算術平均値を算出する。   検討の結果、気象庁合成レーダーと比較して国土交通省合成レーダーの精度が高いことがわかった。特に、紀伊半島南部において気象庁合成レーダーの過小評価傾向が顕著であった。今後、評価対象地域、評価期間を拡張した検証および10分間雨量等の短時間雨量を対象とした検証を行う予定である。さらに検証結果を踏まえ、国交省合成レーダーと気象庁合成レーダーの合成等、リアルタイムで利用する上での補正方法についても検討を行う予定である。
著者
辻 基宏 大石 哲 中北 英一 池淵 周一
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報 (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.245-262, 1997-04

従来, 都市における水害の原因は台風と低気圧に伴う豪雨によるものが大半を占めていたが, 近年それらは相対的に減少し雷雨性の集中豪雨によるものが増加している.そこで本研究では, そのように都市の防災上重要となる狭域・短時間の可能最大降水量(PMP)の推定をColdRainも表現できる1次元積雲モデルを用い, 10分間のPMPとして80mmを物理的根拠を持って推定した.さらに, 得られたPMPを用いて確率雨量の評価も行った.In urbanized areas, heavy rainfall in short periods of time and in small areas can potentially result in extreme damage.It is important, therefore to estimate the short duration PMP(Probable Maximum Precipitation) which takes heavy rainfall into consideration when planning for river management in or near urbanized areas.In this study, traditional methods for PMP estimation are reviewed, and a new method for short duration PMP estimation, which uses a one‐dimensional cumulonimbus model developed by Ferrier and Houze, is proposed. The 10 minutes PMP for an urbanized areas in the Kinki region is estimated using this method, for which a value of 80 mm was obtained.
著者
田中 武志 山田 浩之 竹門 康弘 池淵 周一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.247, 2004 (Released:2004-07-30)

河川に生息するモンカゲロウ(Ephemera strigata)などの水生昆虫類では,砂礫堆上流端に位置する淵尻の瀬頭に集中的に産卵する行動が知られている.このような産卵場所選択性は,砂礫堆の河床間隙水の透水性や溶存酸素濃度などの物理化学特性と関係していると考えられる.しかしながら,産卵場所の環境条件と産卵個体数の関係や産下された卵やふ化幼虫生存率などを実証的に示した研究は行われていない.一方,近年各地の河川で生じている砂礫堆の樹林化やツルヨシの繁茂によって,このような産卵適地が減少しつつあると懸念されている.そこで,本研究では,産卵雌数に対する瀬-淵,樹冠の有無,岸際の状態,微生息場所環境条件として透水係数,動水勾配および河床間隙水流速の影響を調べた.また,モンカゲロウ卵野外孵化実験を通して,卵の孵化率・死亡率に対する河床間隙水域の物理化学的環境の影響を調べた.その結果,モンカゲロウは,上空が樹冠で覆われず,岸際が植生に覆われていない裸地部分を産卵場所に選ぶことが確認された.また,産卵場所と瀬-淵の相対的位置関係を分析した結果,産卵の集中地点は,必ずしも瀬頭とは限らず,瀬中央付近でも集中的に産卵することがわかった.次に,微生息場所条件の分析の結果,瀬の産卵雌数は,ばらつきは大きいものの動水勾配との間に有意な正の相関が認められた(r=0.61, p<0.01).これに対し,透水係数,間隙水流速との間には有意な相関は認められなかった(透水係数r=-0.17, 間隙流速r=0.25,n.s.).さらに,野外孵化実験の結果,モンカゲロウ卵は産卵場所に選ばれていない場所でも孵化できることが確認できたが,死亡率は,間隙水流速が小さく,DO供給量が小さくなる砂礫堆内陸側や下流側において大きくなる傾向が認められた.本研究の結果は,「モンカゲロウの選択する産卵場所条件は,間隙流速が大きく豊富な溶存酸素が供給される間隙水域に対応しており,卵や孵化した若齢幼虫の生存率を高めるのに役立っている」という仮説を支持している.
著者
池淵 周一 土屋 義人 VIEUX Baxter WAHL Iver M. CONNER Harol YEH Raymond CRAWFORD Ken 亀田 弘行 中北 英一 田中 正昭 桂 順治 村本 嘉雄 光田 寧 土屋 義人 SASAKI Yoshi EMERRY Garry w. SHARFMAN Mark GARY W. Emer HAROLD Conne BOXTER E Vie IVER N. Wahl KENNETH C. C 土岐 憲三 池渕 周一 YOSHI K. Sas RAYMOND W H IVAR M Wahr CRAIG St Joh MARK Sharfma STEPHAN Ewan GARY W Emery J R Cruz KENNETH C Cr YOSHI K Sasa
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

弱点を改善する方策を見い出すために、いくつかの実験を行った.これらの研究を通して家の軒高における耐風速設計や,気象情報に応じた有効な避難方法,強風災害の予防策などを提言した.3)局地的に激しい気象災害の防止軽減に関する日米防災会議;科学技術庁防災科学技術研究所,京都大学防災研究所,オクラホマ大学国際災害研究センターなどが協力して上記国際会議をオクラホマ大学で開催し,日米あわせて約50名の参加のもと,メソスケールの激しい気象擾乱のメカニズム解明とその観測システム,洪水予測,土砂害予測,災害リスクの評価などについて研究の現状と今後の共同研究のテーマ等を議論した.風水害の防止軽減に関する世界戦略の研究討議;本共同研究のメンバーが2回会合をもち,3年間にわたる共同研究の成果とりまとめ方針を協議するとともに,とくに日米の暴風雨に伴って発生する風水害の軽減化の知見,技術をさらなるステップアップするため今後とも共同研究を継続していくことを合意した.戦略としては防災産業のコンセプトを提言し,今後はそのための研究予算を保険会社等の民間資金の導入も含めて日米双方とも鋭意努力することを確認した.なお,阪神・淡路大震災に関しても日米双方のメンバーが現地に入り,建物被害の実態を調査し,今後,日米双方の耐震設計のあり方を協議する素材を取得した.最終報告書は英文で100ページ程度にまとめて発行することにした.