著者
佐藤 悠子
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.179, pp.179_126-179_141, 2015-02-15 (Released:2016-01-23)
参考文献数
92

There are two major political issues that have been repeatedly debated in China’s modern history; how China’s relationship with the West should be and how China should treat Western science and technology. During the Cultural Revolution (CR), criticism against “bourgeois academic authority” raged. Science and even the lives of Chinese scientists were in jeopardy. The world-renowned physicist Albert Einstein became one of the main targets of this campaign. It was triggered by an article titled “Xiangduilun pipan (Criticism on the theory of relativity)” written by a local middle school teacher. In Beijing, one of the vice presidents of the Chinese Academy of Sciences (CAS) Chen Boda took charge of the campaign. Most of the participants were young scientists whose knowledge was too limited to refute Einstein’s theory. Senior scientists such as Zhu Kezhen, another one of the vice presidents of the CAS, and Premier Zhou Enlai’s protégé Zhou Peiyuan, vice president of Beijing University and physicist who had worked with Einstein, took the side of Einstein. Chen brought the campaign to schoolchildren and even planned to organize a rally of ten thousand people. But he fell off the ladder of power when he joined the bandwagon trying to elevate his patron Lin Biao to the position of the President of the State at a conference in Lushan in August 1970. It made Mao suspect that Chen in fact intended to replace Mao with Lin who had demonstrated his ability to mobilize the People’s Liberation Army in October 1969. The anti-Einstein criticism ceased in Beijing after Chen disappeared, but in Shanghai Chen’s rivals Zhang Chunqiao and Yao Wenyuan continued it. Thereafter two major changes in domestic and international context strengthened the hands of Zhou Enlai, who had been protecting scientists, through the upheaval of the CR: the U.S.-China rapprochement and the Lin Biao incident. Henry Kissinger secretly arrived in Beijing in July 1971, which opened China’s door to the West. Zhou Enlai intentionally issued important directives on promoting basic theoretical study in science in front of the Chinese American scientists who were visiting China. Zhou also encouraged scientists to write him letters in order to make the issue publicly known. After the Sino-US rapprochement, a newly published Chinese academic journal “Wuli (Physics)” became the stronghold for physicists who supported Einstein and his theory. Soon after his allegedly aborted assassination of Mao Zedong in September 1971, Lin Biao died in Mongolia. It weakened the authority of Mao who chose Lin as his successor, and enabled Zhou Enlai to bring back the scientists to Beijing from local labor camps. Zhou also gave the green light to physicist Zhang Wenyu’s proposal to build a high energy accelerator at the cost of $ 2 billion, despite a contrary voice from Yang Zhenning, a Nobel laureate physicist and professor at the University of Chicago. High energy physics is based on Einstein’s theory of relativity. The physicists who had participated in building China’s first atomic bomb supported building a high energy accelerator. Zhang Wenyu led a delegation of Chinese scientists to the Fermi National Accelerator Laboratory in the United States in 1972, and Zhou Enlai established the High Energy Physics Institute in the CAS in 1973. By 1972, the Cultural Revolution in the field of science had lost steam because the physicists were now allowed to applying Western physics despite its “bourgeois”, “academic authoritarian”, and “wasteful” nature that had been fiercely condemned during the Cultural Revolution.
著者
Rob OGDEN 福田 智一 布野 隆之 小松 守 前田 琢 Anna MEREDITH 三浦 匡哉 夏川 遼生 大沼 学 長船 裕紀 齊藤 慶輔 佐藤 悠 Des THOMPSON 村山 美穂
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.9-28, 2020-03-31 (Released:2020-05-31)
参考文献数
68
被引用文献数
2 1

イヌワシの一亜種であるニホンイヌワシ(Aquila chrysaetos japonica)は,個体数と繁殖状況の現状調査に基づいて,環境省版レッドリストの絶滅危惧種に指定されている。現在,国による保全活動が行われているものの,個体数減少の原因とその改善方法に関する知見は,十分とはいえない。この数十年の間に,日本を含む世界各地において,イヌワシの種の回復に関する多分野にわたる科学的な研究が行われ,本種の保全計画に必要な情報が集められつつある。しかしながら,これらの研究は個別に進められており,学際的なアプローチが充分になされていない。本稿では,生態学,遺伝学,獣医学的健康管理,生息地管理などの,ニホンイヌワシの保全に関する諸研究を総合して概観した。野生および飼育下個体群の現状と傾向を分析し,現在および将来の保全管理の活動を報告し,ニホンイヌワシの生息域内保全および生息域外保全に向けた対策について,統合的な見地から議論した。この総説では,イヌワシの生物学や健康科学に関する国内および海外の専門家グループが,学術的な情報と実用的な解決策の両方を提示した。本稿によって,ニホンイヌワシの数の減少をくいとめるのに必要な情報と技術を提供し,日本における長期的な本種の保全に応用するための枠組みを示すことを目指す。
著者
佐藤 悠子 藤森 研司 石川 光一 佐藤 一樹 石岡 千加史 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.156-165, 2016 (Released:2016-06-13)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

【目的】保険診療情報が格納されたナショナルデータベース(National Data Base,以下NDB)を用いた,終末期がん医療の質の評価の実現可能性と限界を検討した.【方法】NDBのサンプリングデータセット(Sampling Data Set,以下SDS)を用いて,2012年10月の死亡がん患者を対象に死亡14日以内の心肺蘇生術と化学療法の実施率を算出した.【結果】対象者1,233例を解析した.心肺蘇生術と化学療法の実施率は,入院死亡症例(n=1079)で8.2%,3.5%であった.SDSの仕様では,解析対象の化学療法薬剤の27-70%が匿名化されていた.【考察】SDSでは匿名化処理や入院と外来レセプトが紐付けされない等の問題から,過小評価の可能性があり結果の解釈に注意を要する.しかしながら,NDBの特別抽出であればこれらの問題の一部は解決でき,同様の手法で質の評価は可能と考えられた.
著者
大友 真弓 佐藤 悠 飯田 佳世 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.79-82, 2003 (Released:2003-07-18)
参考文献数
14

一側上肢挙上運動と両側上肢挙上運動時における呼吸循環反応を呼吸様式の相違の影響とともに比較し,生体への負荷を検討した。対象は健常若年者12名で,座位での一側上肢挙上運動と両側上肢挙上運動を,条件設定を加えない自然呼吸と呼気を延長させた呼吸パターンの状況下で行い,運動中の呼吸循環反応を測定した。一側,両側上肢挙上運動を呼気延長呼吸で行った際の呼吸循環反応は,自然呼吸での運動時に比べ,高い値を示した。運動様式の違いとして,両側上肢挙上運動の方がVO 2/kgが高値の傾向を示した(P=0.080)が,呼気延長呼吸によって,その傾向を認めなくなった。RPEは一側上肢挙上運動の方が両側上肢挙上運動よりも高値となった。以上のことから,上肢の筋力が十分に維持された状態では,一側上肢挙上運動の方が生体に与える呼吸循環系への負担が少ないと考えられた。また,呼気延長呼吸は両側上肢挙上運動中の酸素需要量を減じる効果があることが示唆された。
著者
大平 征宏 齋木 厚人 山口 崇 今村 榛樹 佐藤 悠太 番 典子 川名 秀俊 南雲 彩子 龍野 一郎 小菅 孝明 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.191-196, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

以前我々は減量手術後に易怒性から過食,リバウンドした症例を抑肝散が改善させたことを報告し,肥満症患者の精神面に対する漢方治療が有用である可能性を提唱した。今回,頻用されている減量治療薬および抑肝散の減量治療に対する効果を比較した。当院で減量治療目的にマジンドール,防風通聖散または易怒性を指標に抑肝散を投与された肥満症患者107例を後ろ向きに検討した。投与3ヵ月後,マジンドールおよび抑肝散で有意な体重減少を認めた。糖代謝への影響を糖尿病患者のみで検討した。HbA1c の改善はいずれの群においても有意差は認めなかった。肥満症の減量治療にはメンタルヘルスの問題が重要であり,患者の精神面を意識した漢方治療は有効であることが示唆された。
著者
高田 望 佐藤 悠 吉田 翔 池淵 周一
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2014年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100040, 2014 (Released:2014-12-01)
被引用文献数
2

近年、地上雨量観測所では捕捉出来ない局地的な大雨が多発しており、面的雨量情報(以下、メッシュ雨量データという)の重要性が一層高まっている。5分遅れ程度で利用可能な日本全域を網羅するメッシュ雨量データとしては気象庁合成レーダー、国土交通省Cバンド合成レーダ雨量(以下、国交省合成レーダーという)が存在する。 著者らはダム流入量予測を目的に、地上雨量計データ及びメッシュ雨量データを活用する降雨予測手法を開発し、そのシステム化と運用を行ってきた。ここでメッシュ雨量データは雨域の移動予測を行う上で初期値となる。さらに観測及び予測雨量は分布型流出予測システムの入力値となり流量に変換される。すなわち、メッシュ雨量データの精度は降雨予測及び流出予測の精度に直結すると言える。2014年1月、気象庁合成レーダーに続いて国交省合成レーダーについても、デジタル値の民間利用が可能となった。そこで両者の精度比較を、気象庁アメダス観測値を用いて行った。評価対象地域は近畿地方(東経134度30分~137度、北緯33度30分~36度)とし、2013年の1年間を評価対象期間として以下の方法で精度評価を行った。   (1)     5分毎のメッシュ雨量データを積算し、正時毎に1時間雨量データを作成する。 (2)     毎正時のアメダス時間雨量データに対する上記(1)で作成したメッシュ雨量データの、①相関係数 ②二乗平均平方根誤差 ③総雨量比(メッシュ雨量/アメダス雨量)をアメダス観測点毎に算出する。 (3)     上記評価指標①②③の分布図を作成し、両メッシュ雨量の精度特性を面的に評価する。 (4)     全141地点の評価値の算術平均値を算出する。   検討の結果、気象庁合成レーダーと比較して国土交通省合成レーダーの精度が高いことがわかった。特に、紀伊半島南部において気象庁合成レーダーの過小評価傾向が顕著であった。今後、評価対象地域、評価期間を拡張した検証および10分間雨量等の短時間雨量を対象とした検証を行う予定である。さらに検証結果を踏まえ、国交省合成レーダーと気象庁合成レーダーの合成等、リアルタイムで利用する上での補正方法についても検討を行う予定である。
著者
赤林 伸一 坂口 淳 佐藤 悠一
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.52, pp.247-250, 2009-07-12

本研究では、焼肉店で主に使用されている卓上排気型ロースター(フードあり・なし)、無煙型ロースターを対象として、ロースターを単体で使用した場合の温度・汚染質濃度分布および店舗全体の室内温度・汚染質濃度分布を明らかにすることを目的とする。ロースター単体の場合の廃気捕集率は、卓上排気型(フードあり)、無煙型、卓上排気型(フードなし)の順で悪くなる傾向がある。呼吸域の汚染質濃度は、ロースター上に高濃度領域の集中が少ない無煙型で最も低い。
著者
佐藤 悠介
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ナノ粒子によるがん組織への核酸送達においては、ナノ粒子ががん組織に到達後に組織深部まで浸透できずに標的のがん細胞へ到達できないというがん組織内動態の制約が大きな問題となっている。本研究では上記問題を解決するため、脂質ナノ粒子の粒子径を小さく高精度に制御するための新規脂質様材料の開発および粒子化手法の検討を行った。加えて、脂質ナノ粒子の小型化に伴って核酸導入効率が低下するという問題を解決するため、その原因の解明を行った。
著者
木下 茜 山田 大介 本多 一貴 團野 哲也 徳永 まゆ子 宮川 仁平 田口 慧 秋山 佳之 山田 雄太 佐藤 悠佑 久米 春喜
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.113, no.4, pp.147-151, 2022-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
17

48歳女性.前医婦人科にて子宮筋腫,子宮内膜症に対し子宮全摘術と両側卵巣囊胞切除術を施行された.術後に腎機能の増悪を認め,病理組織検査で尿管組織を指摘され,左尿管損傷修復について当科紹介受診した.腎瘻からの順行性腎盂造影検査にて尿管欠損部は9.5cmであった.尿管損傷修復として尿管膀胱吻合は困難と考えられ,右腸骨窩の癒着が強くなく血管が確保できれば自家腎移植術の方針とした.術中操作で骨盤内の血管を確保できたため,左腎の右腸骨窩への自家腎移植術を施行した.術6カ月後の腎機能は保たれ,エコーで水腎を認めず腎血流も良好であった.尿管損傷の再建法を苦慮し文献検索をした経験から,尿管損傷長によるアルゴリズムを作成した.
著者
細川 健治 佐藤 悠有 坂田 敏行
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.70, no.690, pp.440-444, 2004-02-25 (Released:2011-03-04)
参考文献数
7

The elastic parameters of skis are essential for simulation on skiing. Generally, the elastic parameters of skis have not been reported. Also, the elastic parameters of skis are difficult to determine by either theoretical and experimental approach. Therefore, an inverse analysis method to identify equivalent elastic parameters of skis is very important. In the identification method, mainly, the experimental modal analysis technique, the finite element method and the sensitivity analysis method are used. First, by applying the experimental modal analysis technique to a ski with free boundary conditions, natural frequencies and mode shapes are obtained. Secondly, from the obtained natural frequencies and mode shapes, the equivalent elastic parameters of the ski are identified numerically. Finally, to justify the application of this approach, the bending stiffness and twisting stiffness in longitudinal direction calculated by the obtained equivalent elastic parameters of the ski are compared with those obtained by the other experimental method.
著者
杉生 憲志 枝木 久典 平松 匡文 菱川 朋人 春間 純 髙橋 悠 村井 智 西 和彦 山岡 陽子 佐藤 悠 胡谷 侑貴 木村 颯 伊達 勲
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.384-392, 2022 (Released:2022-06-25)
参考文献数
7

Digital subtraction angiography (DSA) の三次元画像やslab maximum intensity projection (MIP) 画像に加え, DSAとMRIやCTとのfusion画像により, 血管と脳・神経や骨構造との関係性が明瞭に描出可能となり, 血管機能解剖の理解が容易となった. 本稿では, 各種疾患の具体例を示しながら, われわれが行っている臨床例の実際を紹介したい. これら最新の診断技術と解剖を熟知した血管内治療医が詳細な術前診断を行うことによって病態理解が深まり, 開頭術を含む脳神経外科全体の治療成績が向上することが期待される.
著者
佐藤 悠介 畠山 浩人 兵藤 守 秋田 英万 原島 秀吉
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.12, pp.1355-1363, 2012-12-01 (Released:2012-12-01)
参考文献数
19
被引用文献数
5 7

The development of a carrier for the delivery of siRNA is a factor in the realization of RNA interference (RNAi) therapeutics. Modification of siRNA carriers with polyethylene glycol, i.e., PEGylation, is a general strategy for stabilizing a particle in the blood stream and delivering it to tissue or cells. However, it is well-known that, when a carrier is modified by PEGylation, it results in a significant inhibition of both cellular uptake and the endosomal escape process. In a previous study, we reported on the development of a multifunctional envelope-type nano device (MEND) for delivering siRNA and peptide-based functional devices for overcoming the effects conferred by PEGylation and succeeded in the delivery of siRNA to tumor tissue. In this study, we noticed that the pH-sensitive property, changing from neutral to cationic in response to a decrease in pH, could avoid the inhibition caused by PEGylation and succeeded in synthesizing a pH-sensitive cationic lipid, YSK05. The YSK05-MEND had a higher fusogenicity and potency for endosomal escape than other MENDs containing conventional cationic lipids. The PEGylated YSK05-MEND induced efficient gene silencing and avoided the inhibition of endosomal escape caused by PEGylation followed by optimization of the lipid composition. Furthermore, the intratumoral injection of the PEGylated YSK05-MEND resulted in a more efficient gene silencing compared with MENDs containing conventional cationic lipids. Thus, the YSK05-MEND is a promising siRNA carrier for avoiding the inhibition in intracellular trafficking caused by PEGylation both in vitro and in vivo.
著者
佐藤 悠士朗 櫨原 弘貴 添田 政司 深見 桜
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.11-22, 2020 (Released:2020-03-15)
参考文献数
9

コンクリートの品質を向上させる施工方法の一つに振動締固めを行った後,一定時間をおいてから再び振動を与える再振動がある。しかし,再振動の明確な実施時期や実施方法に関する情報は極めて少なく,現場では感覚と経験に基づいた加振が行われているのが現状である。そこで本研究は,再振動の実施時期の指標としてN式貫入深さから求めたコンクリート抵抗値を用い,再振動の実施時期や加振時間の影響について検討を行った。その結果,コンクリート抵抗値が17×10-3N/mm2に到達した時期に再振動を行うのが最も効果的であることが分かった。また,再振動時の加振時間は,5~10秒程度で行うことでコンクリートの品質は向上する結果となった。一方で,再振動の実施時期が遅い場合や加振時間が長くなると,再振動によるコンクリートの品質の改善が期待できなかった。
著者
佐藤 悠人 中北 英一 山口 弘誠
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2016

2008年神戸市都賀川で豪雨による突然の出水により5名の方がなくなるという悲惨な事故が起こった.河川付近にいる人々をゲリラ豪雨から安全に避難させるため,わずか数分でも早いゲリラ豪雨の予測技術の確立,高精度化がより一層急務であると言える.中北らはゲリラ豪雨に発達するタマゴ内部に高い渦度が見られることを発見し,渦度がゲリラ豪雨の危険性予測に極めて有効な指標であることを示しゲリラ豪雨の予報システムを開発した.しかしなぜ高い渦度を持つ積乱雲が発達するかというメカニズムについては未だに明らかでない点が多く,メカニズムの解明が重要である.そこで本研究では渦度とタマゴ発生・発達の理論的背景を解明するために積乱雲初期の渦度分布構造を詳細に解析し,新たな知見を得ることを目的とした.中北らはゲリラ豪雨のタマゴが鉛直渦管構造を持っていることを発見し,これはスーパーセル発達過程初期に見られる渦管構造と類似していることを示した.これによりスーパーセル初期の渦管の発達を表現する流体力学の理論を用いて上昇流の位置を推定できると考えられる.そこで本研究では観測されたレーダー反射因子差<i>Z</i><sub>DR</sub>を用いて上昇流の位置を推定し,理論から導かれる上昇流の位置と一致するか検証を行った.鉛直渦度方程式から上昇流の両脇で正負の渦度が形成されることがわかっており,上昇流がゲリラ豪雨の事例で確認できるか<i>Z</i><sub>DR</sub>を用いて検証した.融解層以上の<i>Z</i><sub>DR</sub>に注目したところ,High<i>Z</i><sub>DR</sub> Columnが確認された.これにより本事例に上昇流が存在しているということがわかりHigh <i>Z</i><sub>DR</sub> Columnの位置と理論から推定される上昇流の位置を比較したところ,上昇流と渦度が対応していると考られるという結果を得た.しかし下層に雨粒がなければ上昇流があってもHigh <i>Z</i><sub>DR</sub> Columnが見られないこと,強い上昇流の位置を正確に知ることができないことからより詳細な上昇流解析を行うためには実際に鉛直風速を算出する必要がある.そこで清水らの手法を用いたTriple Doppler手法から鉛直風速を算出した.ペアーの渦管の間には周囲と比較しても強い上昇流が存在しており,<i>Z</i><sub>DR</sub>による上昇流部推定の結果と矛盾しないことがわかった.
著者
佐藤 悠 井上 健司
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.82, no.843, pp.16-00348, 2016 (Released:2016-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

A method for a six-legged robot of walking on terrain with various undulations by tripod gait is proposed. First the robot detects foot landing using touch sensors, and estimates the inclination angle of the ground from the landing positions; the estimated ground is called “reference ground”. Second the robot measures the inclination angle of its body using acceleration sensor. Then the legs move up and down so that the body may be parallel to and may keep a constant distance from the reference ground. If the robot encounters deep depressions or downward slopes, the robot suspends walking and actively inclines the reference ground. As a result the body inclines, and the swing leg goes further down. When the swing leg reaches the ground, the robot restarts walking. Due to the feedback gain of body orientation control, the robot does not respond to fine change of undulation. Hence the body keeps a constant orientation on short distance undulation or rugged surface, and gradually inclines its body on long distance undulation such as slopes and stairs. The ability of climbing up and down slopes and steps in longitudinal and transverse directions is evaluated by experiments. The maximum angle of climbing up slopes is 30 degree, and that of climbing down slopes is 40 degree. The maximum height of climbing up steps is 150 mm, and that of climbing down steps is 180 mm. The robot can also go through a bump of 125 mm width and 60 mm height.
著者
石山 歩 伊藤 泰 入間田 美咲 片岡 満里奈 佐藤 悠里 篠田 祐子 関根 孝幸 小野部 純
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Db1212, 2012

【はじめに、目的】 ヒトの肢体容積は,重力やホルモンなど様々な要因が影響して経時的に変化している.ヒトの下肢容積の変化は、歩行などの活動量に依存するといわれているが,それらの明確な関係についての報告は少ない.また、容積の算出方法は水置換法やMRIから算出するものなど様々な方法が用いられているが,臨床的に用いる場合は衛生面や簡便性から考えると周径計測を用いられていることが多い.しかし,周径から計算式を用いて容積を算出した場合,誤差が大きくなると報告されており,注意が必要である.本研究では,健常人における下肢容積の日内変動量と活動量の関係について比較・検討を行った.そこで,今回は下肢容積を表す指標として対象部位の数箇所の周径を計測しその総和を用いた.さらに,病的な浮腫の早期発見のための足がかりとするために,下肢容積の生理的変化と病的変化との境を明確にすることを目的とした.【方法】 対象者は健常人39人(男性18人,女性21人)とし,対象肢は右下肢とした.また,下肢容積の指標として下肢周径,活動量の指標として歩数を計測した.周径計測は朝8時~9時,昼12時20分~13時20分,夜17時~19時の時間帯に計3回,背臥位にて同一検者がメジャーを用いて行った.測定部位は膝関節外側裂隙を基準とし5cm間隔で中枢側へ25cmまで,末梢側は30cmまで,さらに外果下縁と第5中足骨底の計14箇所計測した.これらの結果をもとに,大腿部(膝関節外側裂隙から中枢側へ25cm),下腿上部・下部(膝関節外側裂隙から末梢側へ15cm・さらに末梢側へ15cm),足部(外果下縁と第5中足骨底)に分け,それぞれの周径総和を容積を表す指標として作為的に定義した.歩数の計測は,カロリズムTMAM-120(TANITA社製)を用いた.対象者は第1回計測後から携帯し,周径計測時に歩数を確認した.統計処理にはSPSS 13.0を用い,統計学的有意差は大腿部,下腿上部・下部,足部について反復計測による分散分析を行い,有意水準は0.05未満とした.また,下肢容積の変化率と歩数の相関を検討した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究の趣旨と予測されるリスク,さらにヘルシンキ宣言を遵守する旨と,計測中であっても対象者の意思により中止できる旨も併せて説明し同意を得られた者のみとした.【結果】 下肢容積の日内変動について,大腿部では,朝-昼間で有意な差がみられた(p<0.05).下腿上部・下部では朝-昼間と朝-夜間で有意な差がみられた(p<0.01).足部では有意な差は見られなかったが,第5中足骨底部のみでは朝-昼間と朝-夜間で有意な差がみられた(p<0.05).この変化率は各部位とも約1~2%となり,男女間の下肢容積の日内変動に有意な差は見られなかった.また,各部位において下肢容積の変化率と歩数の間に相関はみられなかった.【考察】 本研究の結果から,朝-昼間,朝-夜間の下肢容積に有意な差がみられ,その変化率は約1~2%であった.また,本結果からは下肢容積の変化率と歩数の間には相関がみられなかった.まず下肢容積の日内変動においては,対象者全員が約1~2%の変化率であったため,この変化範囲が健常人の生理的反応を示しているといえる.次に下肢容積と活動量の関係においては,一般的には筋ポンプ作用の影響が大きく,活動量が多いと筋ポンプ作用が促進されて容積が減少すると考えられている.この容積の増減には健常人の場合,血液や組織間隙などの水分量が大きく関与しており,これらの運搬には血流とリンパ流の影響が関わっている.血流量やリンパ流量は、筋ポンプ作用によって促進されると10~20倍に増加するとされ,これが容積の減少に繋がると考えられている.しかし本結果では,活動量の指標である歩数と容積変化に相関はみられなかった.その要因として活動時間と計測時間の関係性が挙げられる.筋ポンプ作用により血流量やリンパ流量が増大することは明らかだが,下肢容積に影響を与えるまでの時間(潜時)や負荷強度などは明確ではない.そのため,計測時に筋ポンプ作用と容積変化に相関がみられなかったと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 近年、がん治療の後遺症として注目されているリンパ浮腫は,摘出手術後に自覚がないうちに重症化を引き起こすケースが多数みられる.これは,現在リンパ浮腫を早期発見するための明確な指標がないことが一因と考えられる.そのため,より詳細な指標をつくることが重要と考え,本研究を行った.本結果より,健常人における下肢容積の日内変動が明らかとなり,今後の病的浮腫の早期発見の足がかりとなると考える.また,活動量と下肢容積においては関係性がみられなかったため,今後は筋ポンプ作用が下肢容積に及ぼす効果のタイミングを明確にすることが重要であると考える.
著者
佐藤悠士朗 櫨原弘貴 添田政司 山田浩嗣
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次大会2018(神戸)
巻号頁・発行日
2018-06-20

再振動締固めは,コンクリートの施工において耐久性を向上できる工法の一つである。再振動締固めはできるだけ遅い時間に行なうと良いとされているが,明確な再振動締固めを行う時期の検討は少ない。本研究では,再振動締固めを行うタイミングの指標として, N式貫入深さを用いて,再振動締固め時期の違いがコンクリートの長期品質に及ぼす影響について検討を行った。その結果,再振動時期の遅いN式貫入深さ100mmの際に,再振動を行うことでコンクリートの比抵抗や透気係数の改善が確認された。また,塩分浸透の抑制および鉄筋腐食の抵抗性の向上にも効果的な方法であり,これらの効果は,長期材齢においても確認することができた。