著者
池田 黎太郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.104-113, 2005-06-30
参考文献数
22

医学校の標章としておなじみの「杖に絡みつく蛇」のデザインは何に由来し,何を意味するのだろうか?この疑問を解く鍵になると思われるのが,「サモスのヘルメース」と呼ばれる浮き彫りの蛇の像である.このヘルメースと呼ばれる巨大な蛇は岩の上に厳かに鎮座して人々の崇拝を受け,その足下に8の字形の頭部を持つ杖を置いている.古代ギリシアの神々はふつう人間の姿をしているが,神である徴しとしてそれぞれの神格を表す付属物と共に描かれる.ヘルメースの場合は神々の伝令使としての職分を示す杖を持ち旅人の服装をして,それらには天空を駈け巡るための翼が附けられている.本来この伝令使の杖には蛇が居ないはずであるが医学校の標章には2匹の蛇が絡みついている.じつはここにはヘルメースの別の職分である「死者の霊魂の導師」を表すための表象が混同されているのである.強い毒と強靭な生命力を持つ蛇は,地面の穴から地下へ自由に行き来して冥界の事情に通じ,生死の秘密を知る存在として古来畏怖と崇敬の対象となっていた.だから死者を蘇らせる能力がある神として崇拝されていたアスクレーピオスは神殿に蛇を住まわせ,蛇を侍らせた玉座に座り,巨大な蛇を巻き付かせた杖にもたれた姿で描かれている.むしろ神格化した蛇そのものがアスクレーピオスと呼ばれ崇拝されていると考える方が自然である.じっさい蛇とアスクレーピオスが同時に病人の治療にあたっている情景を描く奉納の浮き彫りがあるほどである.だから医学校の標章は蛇を軸にしてアスクレーピオスとヘルメースのイメージが混同され重ね合わされたものだろうと説明することができる.
著者
池田 黎太郎
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.104-113, 2005-06-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
18

医学校の標章としておなじみの「杖に絡みつく蛇」のデザインは何に由来し, 何を意味するのだろうか?この疑問を解く鍵になると思われるのが, 「サモスのヘルメース」と呼ばれる浮き彫りの蛇の像である. このヘルメースと呼ばれる巨大な蛇は岩の上に厳かに鎮座して人々の崇拝を受け, その足下に8の字形の頭部を持つ杖を置いている. 古代ギリシアの神々はふつう人間の姿をしているが, 神である徴しとしてそれぞれの神格を表す付属物と共に描かれる. ヘルメースの場合は神々の伝令使としての職分を示す杖を持ち旅人の服装をして, それらには天空を駈け巡るための翼が附けられている. 本来この伝令使の杖には蛇が居ないはずであるが医学校の標章には2匹の蛇が絡みついている. じつはここにはヘルメースの別の職分である「死者の霊魂の導師」を表すための表象が混同されているのである. 強い毒と強靱な生命力を持つ蛇は, 地面の穴から地下へ自由に行き来して冥界の事情に通じ, 生死の秘密を知る存在として古来畏怖と崇敬の対象となっていた. だから死者を蘇らせる能力がある神として崇拝されていたアスクレーピオスは神殿に蛇を住まわせ, 蛇を侍らせた玉座に座り, 巨大な蛇を巻き付かせた杖にもたれた姿で描かれている. むしろ神格化した蛇そのものがアスクレーピオスと呼ばれ崇拝されていると考える方が自然である. じっさい蛇とアスクレーピオスが同時に病人の治療にあたっている情景を描く奉納の浮き彫りがあるほどである. だから医学校の標章は蛇を軸にしてアスクレーピオスとヘルメースのイメージが混同され重ね合わされたものだろうと説明することができる.
著者
池田 黎太郎
出版者
日本西洋古典学会
雑誌
西洋古典学研究 (ISSN:04479114)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.22-27, 1969

この小論はOresteiaをθρασο&b.sigmav;に基づくδικηの否定という観点から論じようと試みる.周知のようにδικηはこの作品の中心になる重要な思想であり,それを主に「正義・裁き・報復」の意味に分ける.δικηはこの劇の中で,「正義の名によって敵を裁く行為が実は報復にほかならない」というパターンを構成し,報復は報復を呼んで悲劇的な悪循環を生ずる.これがアトレウス家に伝わる呪いの実態であり,オレステースの母殺しはその呪いの頂点に立つ.女神アテーナーはオレステースの罪を裁き,「自らの手」による報復行為を否定すると共に,劇の背後にある市民の抗争をも警告している.この報復のδικηをθρασο&b.sigmav;, τολμαとして把えようとする私の試みは,アトレウス家の呪いと,当時のポリスの問題の特質を示し,この伝承を劇化した作者の意図を明らかにすることができると思う.
著者
岡田 隆夫 新井 康允 池田 黎太郎 各務 正 小川 秀興
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.177-181, 1999-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2

順天堂大学医学部では1年生に対する一般教養教育カリキュラムの改革を行い, 実施後半年を経た段階で学生・教員に対するアンケート調査を行いその結果を検討した. 改革の骨子は必修科目の削減と選択科目の大幅増加であり, これにより学生の個性を重視, 自主的な科目選択による勉学意欲の向上を目指した. 新カリキュラムでは各講義に対する学生の満足度が上昇したのみならず, 授業内容は以前と同様であった科目に対する満足度も上昇し, 授業の活性化が明らかとなった.