著者
河内谷清久仁 石川 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1431-1439, 1998-05-15
被引用文献数
6

PDAに代表される超小型の携帯情報機器が数多く登場してきている.このような機器では,電車やバスの中で立ったまま,もしくは歩きながらでも簡単に情報にアクセスできるような操作性が重要である.しかし,携帯情報機器の操作では,画面が小さい,画面を注視できない,片手しか使えない場合もある等の様々な制約がある.そのため,このような環境で情報へのアクセスを快適に行うには,入力デバイスも含めた操作方式に対する工夫が必要となる.本論文ではまず,このような携帯環境での情報ブラウジングで求められる要件について述べ,従来の操作方式の比較検討を行う.次に,これらを考慮した新しい入力デバイスである「NaviPoint」を紹介する.NaviPointは,携帯情報ブラウジングに特化した入力デバイスで,「アナログ入力」「クリック入力」の3種類の入力操作を指1本で行うことができる.これにより,メニュー選択やハイパーメディア・ブラウジング等の操作が指1本で可能となる.本論文ではNaviPointの構造と定性的な評価に加え,試作したプロトタイプの構造についても述べる.プロトタイプを用いた評価実験の結果,従来のマウスとスクロールバーを用いた操作方式と比べても,1.5倍以内のオーバヘッドでハイパーメディア・ブラウジングが行えることが分かった.A mobile computing environment imposes various restrictions on users.For example,most mobile devices have a limited screen size,and it may be difficult to watch the screen closely.While the user is walking or standing in a bus or train,he or she may have only one hand free to manipulate the device.Therefore,some new operation method must be developed for comfortable information browsing in the mobile environment.In this paper,several existing methods are first introduced and compared from the viewpoint of their applicability in a mobile environment.A new input device for such an environment,named "NaviPoint,"is then introduced.The NaviPoint is a specialized device for mobile information browsing.By using this device,a user can perform three types of input-"analog input,""digital input," and "click input,"-with just one finger.After an explanation of the conceptual structure and a qualitative analysis of the NaviPoint,the structure of a prototype is described.Experiments using the prototype show that information browsing is possible with an overhead of less than 50% on the usual "mouse and scroll bar" method.
著者
河内谷清久仁 古関 聰 小野寺 民也
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.44, no.15, pp.13-23, 2003-11-15
被引用文献数
1

Javaでは言語の性質上,オブジェクトに対するロック操作が頻繁に行われる.これを高速化することは,システム全体の性能向上に非常に重要である.オブジェクトがそれぞれどのスレッドにロックされているかに着目した調査を行ったところ,特定のスレッドにのみ頻繁にロックされているという「スレッド局所性」が見られることが分かった.この性質に着目し本論文では,各オブジェクトごとに特定のスレッドに「ロック予約」を与え,ロック処理を高速化する手法について述べる.予約を持っているスレッドは,従来よりも軽い処理でそのオブジェクトのロックを行える.具体的には,従来ロック処理に不可欠と考えられていたcompare_and_swapなどの不可分命令ではなく,単純なメモリアクセス命令でロックを獲得/解放できる.予約者以外のスレッドがロックを行った時点でロック予約が解除され,以後そのオブジェクトは従来の方式でロックが行われる.この予約ロック機構を,IBM Java VMとJITコンパイラに実装し,いくつかのベンチマークを走らせたところ,従来のロック手法に比べて最大で53%の性能向上が確認された.In Java execution, lock operations are performed very frequently to realize exclusive oper-ations among multiple threads. Therefore, accelerating the lock performance has been very important to execute Java-based applications faster. We investigated the lock behavior of Java programs, focusing on the relation of each object and threads acquiring the object's lock. It turned out that for many objects, the lock is acquired by only one thread specific to the object, even in multi-threaded Java programs. By utilizing the thread locality, this paper shows a novel ultra-fast locking technique for Java. The algorithm allows locks to be reserved for threads. When a thread attempts to acquire a lock, it can do without any atomic operation if the lock is reserved for the thread. Otherwise, it cancels the reservation and falls back to a conventional locking algorithm. We have implemented the lock reservation mechanism in IBM's production virtual machine and JIT compiler. The results show that it achieved performance improvements up to 53%.
著者
河内谷清久仁 石川 浩
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.43, pp.55-60, 1997-05-16

携帯情報機器の操作では,画面が小さい,画面を注視できない,片手しか使えない場合もあるなどの様々な制約がある.そのため,このような環境でハイパーメディア・ブラウジングを快適に行なうためには,入力デバイスも含めた操作方式に対する工夫が必要となる.本稿ではまず従来の操作方式について述べ,携帯環境への適用可能性について比較検討を行なう.次に,これらを考慮した新しい入力デバイスである「ScrollPoint」を紹介する.このデバイスにより,文書の任意速度の「スクロール」とハイパーリンクの素早く的確な「指示選択」という2種類の基本操作が指一本で可能となる.本稿ではさらに,試作したプロトタイプの構造と,それを用いた評価実験の結果についても報告する.A mobile computing environment imposes various restrictions on users, and some new operation method must be developed for comfortable hypermedia browsing. Several existing methods are first introduced and compared from the viewpoint of their applicability in a mobile environment. A new input device for such an environment, named ScrollPoint, is then introduced. With just one finger, a user can "scroll" a document in an arbitrary direction at an arbitrary speed, and can quickly and accurately "point" to a clickable point. The. paper also shows the structure of a prototype and gives the results of an evaluation of the prototype.
著者
河内谷 清久仁 石川 浩
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.111-112, 1997-03-12
被引用文献数
2

PDAに代表される超小型の携帯情報機器がいろいろ登場してきている. このような機器では, 電車やバスの中で立ったまま, もしくは歩きながらでも簡単に情報にアクセスできるような操作性が重要である. 本稿では, そのような利用方法に適した入力機構(デバイス)について検討する. まず, 必要となる要件について述べ, 従来の入力機構の問題点を示す. 次に, これらの要件を満たし「指一本操作」が可能な新しい入力機構を提案する.
著者
山内長承 河内谷清久仁 串田 高幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.20, pp.19-24, 1996-02-29
被引用文献数
4

資源の確保状況に応じて、転送を拒否するのではなく、動画・音声データの圧縮率を変更するなどして、柔軟に転送サービスを実現する動的QoSの技術が試みられている。動的QoSの概念は、予約できない資源へも拡張できるので、予約できる資源とできない資源の混在する環境を統一的に扱える可能性を持っている。本報告では、初めに資源管理を利用してQoS制御をする技術を整理し、帯域予約できないネットワーク上での動的QoS技術の初期実験の概要と結果を報告し、問題点を整理する。The dynamic QoS technology, which, instead of refusing the service because of the short available resources, continues video/audio transmission by changing the data rate according to the available resource amount, has been experimented in several places. Since the concept of the dynamic QoS can be expanded to the resources where no reservation mechanism is implemented, it will be a reasonable candidate to manage services using both reservable and non-reservable resources. This report will first sort out the concepts and ideas about the dynamic QoS control, and then explain about our initial stage experiment and its results with a list of the problems to be solved in the next step.
著者
緒方 正暢 河内谷 清久仁 西尾 信彦 徳田 英幸
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.345-346, 1994-09-20

モービルコンピューティングは,現在最も注目されている技術の1つである.ノート型パソコンやPDAのような携帯型計算機は,従来のデスクトップ型計算機に匹敵する計算能力を備えながらも小型化が進んでおり,携帯可能なマルチメディア端末を実現可能にしている.しかし,分散マルチメディア処理基盤ソフトウェアの研究の多くは,動的に変化しない計算機資源と固定されたネットワーク資源を前提にしている.従って,その成果は携帯型計算機へはそのまま適用できない.我々は,携帯型計算機の特徴を生かした分散マルチメディア処理実現のための新たなソフトウェアプラットフォームの研究開発を行なっている.本稿では,携帯型計算機を使った分散マルチメディア処理における技術的な課題を指摘し,その解決方法について考察する.また,現在開発中の評価用プロトタイプシステムについて述べる.