著者
河村 哲也 林 農 佐藤 浩史
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では砂丘移動現象の解明と植生利用による制御を目的として数値シミュレーションによる研究を行い以下のような成果を得た。はじめに以下に示すような3段階の計算法を提案し実際にプログラム開発を行った。(1)砂丘など複雑な地形上を吹く風による風速場の計算,(2)風速場による砂面上の表面摩擦と砂の輸送量の推定,(3)砂の輸送による砂面形状の変化の計算そして、断面が二等辺三角形の砂丘に稜線に垂直に風があたっている場合を想定し、そのひとつの断面内での2次元計算を上述の手法で計算した。この研究により砂丘の移動が計算できることが確かめられ、また砂丘の風下側の傾斜が安息角になることがわかった。次に、二等辺三角形の底辺の長さを共通にして、高さをいろいろ変化させて計算を行い、砂丘の高さが移動速度に及ぼす影響を調べた。そして高さが低いほど移動速度が大きいことが明らかになった。さらに植生がある場合の影響も調べた。計算結果から、植生がある場合には、ない場合に比べ砂丘の移動速度が小さくなることも確かめられた。また植生の広さや配置場所を変化させその影響も調べた。また乱流の効果を入れるため、もっとも単純なモデルとして混合距離モデルを用いた計算も行った。以上の結果、基本的には計算法の妥当性が確認されたため、計算法を3次元に拡張した。そして、実際の砂丘地帯に多くみられるバルハン砂丘の成因をシミュレーションにより調べた。また砂の輸送と構造物との相互作用の計算も行った。具体的には、砂面上に鉛直または傾斜して立てられた円柱まわりの流れの計算を砂の移動を考慮して行った。この研究と平行して、現実の砂丘地形に対応させるため、鳥取砂丘まわりの流れのシミュレーションを植生を考慮して行い、実際の観測結果と比較して定性的によい結果を得た。
著者
林 農 HIGUCHI H. KLICK Heiko LAMPARD D. LICHTAROWICZ エー CLAYTON B.R. CHOI KwingーS 田辺 征一 若 良二 河村 哲也 望月 信介 大坂 英雄 LAMPARD Desmond HIGUCHI Hiroshi
出版者
鳥取大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本国際共同研究は、イギリス、ドイツ、及びアメリカの研究グルプと、本年13周年を迎えた西日本乱流研究会の研究者達が協力して、それぞれが既に研究成果を挙げ十分なデータを蓄積している運動量、熱及び質量輸送に関する実験結果を相互に交換して、これらに共通する基本原理を明らかにすることを目的としたものである。本共同研究の開始に先立つ4年前、研究代表者の林は文部省在外派遣研究員として、1991年8月から4ヶ月間ドイツ・ルール大学ボフム校に滞在し、K.Gersten教授及びHeiko Klick氏と遷移境界層中に発達する温度境界層に関して共同研究を行った。引き続き、1991年12月から4ヶ月間イギリス・ノッチンガム大学に滞在して、Kwing-So Choi博士とリブレット平面上に発達する境界層内の伝熱促進に関して共同研究を行った。その際、ノッチンガム大学のB.R.Clayton教授及びルール大学のK.Gersten教授の勧めもあって、3国間での資料交換についての国際共同研究を申請することに合意し、国内外研究者の組織化を進めた。その結果、幸いにも、平成7年度文部省科学研究費補助金国際学術研究に採択いただき、国際共同研究を実施する運びとなった。国際学術研究・共同研究では、国内の研究者グループと国外の研究者グループの対等の立場での研究者交流が重要な柱となっているので、本共同研究においても、研究経費は各研究機関の負担によることとし、研究者の交流による討論及び外国研究機関での研究に主眼をおいて学術交流を推進した。本共同研究の目的である討論をより深めるためには、各々の研究者が国内外の各地に点在する大学や研究所を訪問し互いの実験結果を比較し検討するよりは、経費と時間を有効に使うためにワークショップなりセミナーの形式を採用して多くの研究者が一堂に会して、課題の本質について討議することの方が能率良く且つ実り多い結果が得られると感じられたので、共同研究の実施期間である平成7年度中に、2度の 「質量,熱,運動量輸送の乱流制御」 に関する国際会議を開催した。一つは、1995年10月6日に鳥取大学において開催した国際交流セミナー 「質量,熱,運動量輸送に関する乱流制御」 であり、B.R.CLAYTON教授、Kwing-So CHOI助教授及びHeiko KLICK博士の3名に加えて、国際的学者である東京大学・笠木伸英教授及び名古屋大学・中村育雄教授、国内の研究グループである西日本乱流研究会の多くの研究者達が討論に加われるように配慮して、検討を十分掘り下げることができた。他の一つは、1995年8月22日にイギリス・ノッチンガム大学において開催したOne-day Colloquium 「Techniques in Turbulence Management of Mass,Heat and Momentum Transfer」 であり、西日本乱流研究会からも特別講師として、研究代表者の林農教授、研究分担者の大坂英雄教授、河村哲也教授、田辺征一教授が招かれて、ノッチンガム大学のスタッフのみならず、イギリス各地の大学、研究所、企業から集まった乱流制御問題に関心のある研究者達及び別途日本から参加の岐阜大学・福島千尋助手及び日本原子力研究所の秋野詔夫主任研究員らを交えて活発な意見交換が成され,十分な成果をあげることができた。また、河村哲也教授は、短期間であるが共同研究の相手先であるノッチンガム大学工学部機械工学科に滞在して、リブレット付き平板上に発達する境界層の数値シミュレーションに関する研究を行った。研究分担者の鳥取大学・若 良二教授もノッチンガム大学短期滞在中に乱流計測技術の調査研究についての成果を得た。今回の共同研究の結果として、本研究に加わったイギリス・ノッチンガム大学及びアメリカ・シラキュース大学と鳥取大学との大学間交流協定を締結する準備が進展している。したがって、ノッチンガム大学とはリブレット付き平板上の境界層の発達と熱伝達促進に関する共同研究を、シラキュース大学とは円柱後流の干渉とウェーブレット解析に関する共同研究を、大学間協力研究として、近い将来の文部省科学研究費補助金国際学術研究に申請するよう計画しているところである。
著者
菅 牧子 河村 哲也 岩津 玲磨
出版者
社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.65, no.629, pp.108-115, 1999-01
参考文献数
16

The natural convection with large temperature difference is computed numerically using the Low-Mach-Number approximation with temperature dependent viscosity and thermal conductivity. In this study staggered grid system is used in order to hold down the numerical oscillation. Firstly, steady laminar natural convection above a horizontal heat source is simulated in order to validate the simulation method. The result is in good agreement with the analytical solution. Secondly, two dimentional flow field driven by two parallel heat sources is computed. This boundary condition may be regarded as a model situation of the big fire covering both sides of a wide straight road. At the same time, it is interesting to investigate interactions between two thermal plumes. The numerical results disclosed different flow behavior when the imposed temperature of the heat sources is changed and the rest of the governing system parameters are varied.
著者
林 農 神近 牧男 若 良二 原 豊 田川 公太朗 河村 哲也 山田 廣也
出版者
鳥取大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
2000

本研究は、世界各地の乾燥地で運転可能な風車と風力発電を開発することを目的として着手した。得られた研究業績の多くは、その取り組みの容易さから、サボニウス風車と直線翼垂直軸風車の数値シミュレーションにまず成果を得た。風車の性能試験は風洞実験施設の設計と建設に時間を必要としたこと、新技術風車もまた設計と試作に時間を必要としたので多くの研究業績を得るまでには至らなかった。この研究期間の内に挙げることができた研究業績は次のように分類することができる。(1)直接研究:サボニウス風車、垂直軸風車の数値シミュレーション、風洞実験など(2)関連研究:(a)沙漠に関する研究(b)風力発電に関する研究:(i)風況精査に関する研究(ii)風車の要素技術に関する研究本研究のために開発した風洞は、風車研究用風洞として世界に稀な特性を有する風洞である。すなわち、動翼ピッチ可変式の軸流送風機により定常風のほかに自然風のように時間とともに風速が変動する風を吹かせられる風洞であり、脈動風、突風、瞬間風の3種類の変動風パターンを発生することができる。この科学研究費補助金は地域連携を推進するための助成金であるので、地域の産学官連携に携わる人達、鳥取大学と共同研究を望む人達、流体力学の分野で活躍する研究者達、風力発電を事業化しようとする自治体の人達など、鳥取大学を訪れる多くの人達に沙漠環境風洞を見学する機会を提供した。さらに、本研究費の趣旨に則って、地域の企業との産学連携を積極的に推進するために多くの共同研究を受け入れ、鳥取県、NEDOや企業などからの委託研究も積極的に受け入れた。さらに、本研究は、最終年・平成14年度に文部科学省の21世紀COEプログラムに採択された鳥取大学「乾燥地科学プログラム」の自然エネルギーグループに研究が引き継がれる幸運が重なることになった。したがって、地域連携推進研究費で設計し試作した新技術風車は、その風車の改良を含めて、乾燥地科学プログラムのなかで、詳細な特性試験と再設計を繰り返して完成品へと導かれることになる。