著者
河野 淳
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.99-109, 2016-02-20 (Released:2016-03-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

人工内耳植込み術は, 高度難聴者に対する聴覚獲得の手段として確立されており, 当院においては1986年に多チャネル型人工内耳を本邦で初めて施行して以来, 2014年12月までに710の手術例を数え, 本邦においては既に1万例を超えた. 今回, 本手術を細分化してレトロスペクティブに検討するとともに, 本手術の流れについて記載する. また従来の人工内耳手術に加えて, 2014年7月には残存聴力活用型人工内耳 (electric acoustic stimulation: EAS) が保険収載された. 低音残聴の聴力型に適応されるが, 残存聴力を悪化させることはできないので手術には細心の注意が必要である. また, 特に小児の手術においては通常例といえない奇形や中耳発育不良例, 骨化例などがある. 通常例でも思わぬ事態に陥ることもあるので, 術者はさまざまなトラブルなどに対応する技術を身につけておく必要があり, 術前からの患者への説明を含め, 手術における細心の注意と術後の適切かつ慎重な管理が必要であるのも言うまでもない.
著者
河野 淳 博久 詠司 舩坂 宗太郎
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.884-894, 1996-06-20
参考文献数
27
被引用文献数
3 2

今論文では, 聾仔猫の蝸牛神経核細胞の成熟が, 慢性電気刺激によりいかなる影響を受けるか調べた. 対象は生後10日目聾の仔猫4匹で, 電極挿入後1000時間以上慢性電気刺激を行い, 実験終了時2-deoxyglucose (以下2DG) を静注45分刺激後, 蝸牛神経核の連続切片を作製し, 蝸牛神経核細胞体の面積を測定した. その結果刺激側の2DGの取り込みが見られた部位の神経細胞体面積は2DGの取り込みが見られない部位に比べ, 前腹側核, 後腹側核, 背側核のいずれにおいても大きく, 多くに有意差が認められた. つまり蝸牛内の慢性電気刺激により, 蝸牛神経核内の特定の部位が機能的活動性が増し, その部位に限っては慢性電気刺激が成熟期の神経細胞の成熟に関与していることが示唆された.