著者
白井 杏湖 河野 淳 齋藤 友介 冨澤 文子 野波 尚子 太田 陽子 池谷 淳 塚原 清彰
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.576-582, 2018-12-28 (Released:2019-01-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1

要旨 : 人工内耳 (以下 CI) を装用する中学生40人を対象に, 相対式学力検査である教研式 NRT (国語) を実施し, 5段階評定値 (評定5が最良) を確認するとともに, CI 手術時年齢, CI 装用期間, 直近の CI 装用閾値および語音聴取能, WISC で評価した動作性知能 (以下 PIQ) ならびに言語性知能 (以下 VIQ), 在籍する学校種, との関連について検討した。国語学力の評定値は,「読み」「書き」ともに評定2が最も多かった。国語学力と, CI 手術時年齢, 装用期間, 装用閾値および聴取能においては, 有意な相関を認めなかった。他方, 国語学力と VIQ および PIQ, 学校種は有意に関連していた。「読み」では PIQ と r=0.4, VIQ と0.6,「書き」では PIQ と0.6, VIQ と0.7,「読み」と学校種は0.50で相関が示された (p<0.01)。しかしながら, 偏回帰分析により VIQ の影響を固定すると, 学校種と「書き」との関連は消失した。
著者
平澤 一浩 大塚 康司 伊藤 博之 上田 百合 白井 杏湖 鈴木 衞 永井 義幸 加藤 紀和 櫻井 衛
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.529-533, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3

Intranasal steroids are widely used to treat olfactory disorder, and are known to have fewer side effects than systemic steroids. However, there are some reports that intranasal steroids have induced adrenal insufficiency, even when the steroid dosage is appropriate. We encountered a case of secondary adrenal insufficiency after using intranasal betamethasone for olfactory disorder within the usual dosage. In this case, we were not aware of instructing the patient not to swallow the steroid which had dripped into her pharynx. Thus, a large amount of steroids which had passed through her nasal cavity might have been absorbed in the oropharyngeal mucosa and also ingested. That is possibly the main cause of developing adrenal insufficiency. Recently, Toki-shakuyaku-san, a traditional Chinese medicine, has started to be used for olfactory disorder after a cold. Because of its minimum side effects, it may be safely used for patients with the risk associated with steroid use.
著者
白井 杏湖
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.1, pp.12-15, 2023-01-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
8

2017年に成人人工内耳 (以下CI) 適応基準が改訂され, 平均聴力レベルが 70dB 以上で, 補聴器 (以下 HA) 装用下の最高語音明瞭度が50%以下の高度難聴例に対しても適応が拡大された. これにより, 今まで HA 装用効果が不十分であった進行性難聴を含む両側高度難聴例や左右差のある高重度難聴例に対しても CI によるシームレスな補聴が可能となった. 高度難聴に対する CI の有用性は世界で多く報告されている. HA と CI の適応境界については議論の余地があるものの, HA 装用下の語音聴取能は CI による語音聴取能改善の予測因子として重要であり, 世界でも CI 適応基準として重視されている. また, CI に求められる効果が高度になるほど, 純音聴力検査や静寂下の語音明瞭度での評価には限界が生じる. 今後日本語における機能的アウトカムを含めた評価方法の確立が求められる. 新基準の導入に伴い, 高齢者に対する CI 手術も増加している. 高齢者に対する人工内耳では, 聴取能改善に加え, 認知機能や QOL に効果を及ぼす可能性が示唆されている. 高齢化社会において大きなインパクトを与えることが予想される. あらゆる聴力像に対して複数の選択肢が登場し, 切れ目のない聴覚補償が可能になりつつある. “きこえと QOL を維持する” ために CI を積極的に活用する時代が見えてきている.
著者
野波 尚子 河野 淳 冨澤 文子 芥野 由美子 鮎澤 詠美 南雲 麻衣 西山 信宏 河口 幸江 白井 杏湖 鈴木 衞 齋藤 友介 池谷 淳
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.320-325, 2014 (Released:2015-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
2

当科にて80歳以上で人工内耳植込術を施行した4症例の術前から術後の経過を追い,人工内耳装用に伴うQOL改善点や問題点の検討を行った.術後の装用閾値や聴取能は全症例で改善が見られた.術前に比し,活動範囲の拡大や積極性の向上など心理面の変化があり,QOL改善につながったと考えられた.しかし,4症例ともに,ADLに大きな支障はなかったが,機器の管理・操作や異常時の対応などの問題点が挙げられた.対処方法としては,機器管理や操作方法の工夫,術前の十分なインフォームドコンセント,同居者や関係者への協力依頼,異常時の連絡手段の確保などが考えられた.
著者
冨澤 文子 塚原 清彰 河野 淳 野波 尚子 鮎澤 詠美 梅村 大助 西山 信宏 河口 幸江 白井 杏湖 斎藤 友介
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.500-508, 2017

<p>要旨: 人工内耳装用児の言語力に関する研究は本邦でも増加しつつあるが, 語彙力に関する詳細な研究は少ない。 今回我々は, 小学校就学前後期以前における人工内耳装用児の語彙力を, 良好群~不良群の6群に分類した。 88例中32例 (36.4%) が就学時期までに健聴児の生活年齢相当の理解語彙力を獲得していた。 一方で63.6%にあたる56例の装用児の理解語彙力は, やや不良~不良な状態であり, 健聴児との顕著な成績差が認められた。 手術時期に注目すると, 4歳時点で語彙発達指数が85以上になった群において手術時期が早い傾向がみられた。 他方, 補聴器開始年齢, 人工内耳装用閾値については, 各群で大きな差は認められなかった。 就学時期までの幼児期段階では, コミュニケーション方法として主に聴覚を使用する症例が多い傾向があり, 手話併用例は少なかった。 しかし, 小学校就学以降は, 理解語彙の不良例においては手話併用例が増加する傾向が認められた。 聴覚障害児の療育や教育の目的は幼児期の言語発達を促し, 就学以降の教科学習や社会生活に求められる書き言葉の獲得にある。 今後は語彙以外の言語の側面も含めた言語活動全体の発達を考慮し, 長期に渡って経過をサポートしていく必要がある。</p>