著者
永井 賀子 萩原 晃 河口 幸江 小川 恭生 服部 和弘 河野 淳 鈴木 衞
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.58-65, 2016-02-28 (Released:2016-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2 7

要旨: 突発性難聴例の治療開始後の聴力改善経過と改善率について検討した。2009年1月から2013年12月までの5年間に東京医科大学病院耳鼻咽喉科を受診し, 入院加療を行った Grade3 または 4 であった突発性難聴121例, 121耳を対象とした。Grade3 は70例, Grade4 は51例であった。治療開始後7日以内に5周波数の平均聴力が 20dB 以上改善した例を早期改善群, 8日以上14日以内に改善した例を中期改善群, 14日以内に改善がみられない例を改善なし群に分類した。治癒率は早期改善群で68%, 改善なし群で8.2%であり, 早期改善群で有意に高い結果であった。早期改善群では聴力予後は良好で, 改善なし群では聴力予後が不良であった。
著者
白井 杏湖 河野 淳 齋藤 友介 冨澤 文子 野波 尚子 太田 陽子 池谷 淳 塚原 清彰
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.576-582, 2018-12-28 (Released:2019-01-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1

要旨 : 人工内耳 (以下 CI) を装用する中学生40人を対象に, 相対式学力検査である教研式 NRT (国語) を実施し, 5段階評定値 (評定5が最良) を確認するとともに, CI 手術時年齢, CI 装用期間, 直近の CI 装用閾値および語音聴取能, WISC で評価した動作性知能 (以下 PIQ) ならびに言語性知能 (以下 VIQ), 在籍する学校種, との関連について検討した。国語学力の評定値は,「読み」「書き」ともに評定2が最も多かった。国語学力と, CI 手術時年齢, 装用期間, 装用閾値および聴取能においては, 有意な相関を認めなかった。他方, 国語学力と VIQ および PIQ, 学校種は有意に関連していた。「読み」では PIQ と r=0.4, VIQ と0.6,「書き」では PIQ と0.6, VIQ と0.7,「読み」と学校種は0.50で相関が示された (p<0.01)。しかしながら, 偏回帰分析により VIQ の影響を固定すると, 学校種と「書き」との関連は消失した。
著者
矢嶋 裕樹 間 三千夫 中嶋 和夫 河野 淳 硲田 猛真 嶽 良弘 榎本 雅夫 北野 博也
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.149-156, 2004-06-28 (Released:2010-08-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究の目的は, 難聴高齢者における聴力低下に伴うストーレス・イベント, 聴力低下に伴うストレス認知, 精神的健康の関連性を検討することであった。調査対象は, 和歌山日本赤十字医療センターを利用していた難聴高齢者235名であった。面接調査は, 聴覚言語療法士によって実施された。構造方程式モデリングによる解析の結果, 性, 年齢, 聴力損失レベルと聴力低下に伴うストレス・イベントのあいだに有意な関連性が認められた。さらに, ストレス・イベントは, ストレス認知を経由して, 間接的に精神的健康に影響を与えていた。なお, ストレス・イベントと精神的健康のあいだには直接的な関連性はみられなかった。これらの結果は, 聴力低下に起因するストレス・イベントやストレス認知から精神的健康に対する効果の軽減を目指した専門的介入策を確立することによって, 聴力低下による精神的健康の悪化を予防できる可能性を示唆するものである。
著者
城間 将江 菊地 義信 河野 淳 鈴木 衞 加我 君孝
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.755-764, 1998
被引用文献数
2

人工内耳装用者における音楽的要素の知覚度を調べる目的で, (1) リズム弁別, (2) 音程の弁別, (3) 楽器音の音色識別, (4) 旋律の知覚, (5) アカペラ歌唱の知覚テストを作成し施行した。 対象は成人中途失聴者16名で, 14名がNucleus 22, 2名がClarion人工内耳システムの使用者であった。 各テストの平均正答率は, リズムが90%, 音程は51.8%, 音色は25.8%であった。 旋律は11.8%と低い正答率であったが, 同旋律のアカペラ歌唱では71.4%に改善した。 なお, 語音聴取率と旋律の知覚率との相関は低く, 人工内耳機器間による差も無かった。 本研究から, 現在の人工内耳システムは強度の時間情報伝達は良好でリズムや語音の知覚には適しているが, 微細なスペクトルエンベロープの弁別が必要な楽音の知覚には不十分であることが示唆された。
著者
千葉 洋丈 河野 淳 冨澤 文子 佐藤 春城 植田 宏 鈴木 衞
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.261-265, 2000-08-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

1990年1月から1999年3月まで, 東京医科大学病院耳鼻咽喉科で人工内耳挿入手術をうけ, SPEAKコード化法, BP+1モードを使用中の56症例を対象としてTレベル, Cレベル, ダイナミックレンジの値とその聴取能の関係を検討した。 また電極位置を蝸牛開部窓部側, 中間部, 蝸牛頂側と3部分に分けた場合の, それぞれと聴取能の関係も検討した。 その結果, Tレベル, Cレベルよりダイナミックレンジがより聴取能に関与していた。 Cレベル, ダイナミックレンジは蝸牛頂側の方が聴取能との相関係数が高い傾向にあった。 ダイナミックレンジと聴取能の関係では相関係数が単音節で高く, 単語, さらに文と低くなる傾向があった。
著者
城間 将江 菊地 義信 河野 淳 鈴木 衞 加我 君孝
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.755-764, 1998-12-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

人工内耳装用者における音楽的要素の知覚度を調べる目的で, (1) リズム弁別, (2) 音程の弁別, (3) 楽器音の音色識別, (4) 旋律の知覚, (5) アカペラ歌唱の知覚テストを作成し施行した。 対象は成人中途失聴者16名で, 14名がNucleus 22, 2名がClarion人工内耳システムの使用者であった。 各テストの平均正答率は, リズムが90%, 音程は51.8%, 音色は25.8%であった。 旋律は11.8%と低い正答率であったが, 同旋律のアカペラ歌唱では71.4%に改善した。 なお, 語音聴取率と旋律の知覚率との相関は低く, 人工内耳機器間による差も無かった。 本研究から, 現在の人工内耳システムは強度の時間情報伝達は良好でリズムや語音の知覚には適しているが, 微細なスペクトルエンベロープの弁別が必要な楽音の知覚には不十分であることが示唆された。
著者
野波 尚子 河野 淳 冨澤 文子 芥野 由美子 鮎澤 詠美 南雲 麻衣 西山 信宏 河口 幸江 白井 杏湖 鈴木 衞 齋藤 友介 池谷 淳
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.320-325, 2014 (Released:2015-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
2

当科にて80歳以上で人工内耳植込術を施行した4症例の術前から術後の経過を追い,人工内耳装用に伴うQOL改善点や問題点の検討を行った.術後の装用閾値や聴取能は全症例で改善が見られた.術前に比し,活動範囲の拡大や積極性の向上など心理面の変化があり,QOL改善につながったと考えられた.しかし,4症例ともに,ADLに大きな支障はなかったが,機器の管理・操作や異常時の対応などの問題点が挙げられた.対処方法としては,機器管理や操作方法の工夫,術前の十分なインフォームドコンセント,同居者や関係者への協力依頼,異常時の連絡手段の確保などが考えられた.
著者
菅原 享 飯田 武揚 河野 淳夫 宮下 晃 三田村 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.4, pp.719-724, 1987-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

cis-ジクロロジアンミン白金(II)錯体(以下cis-DDPと略記する)には制がん作用があり,現在臨床治療に広く使用されている.このcis-DDPは生体内において特異的にがん細胞のDNAと結合し,そのDNAの複製を阻害することが知られている。このようなことから,白金錯体の配位子を種々変えた新規の白金錯体の研究が数多くなされているが,担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金錯体についての研究は,ほとんど報告されていない。そこで担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金錯体であるジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体を薪規に合成し,IRおよび13C-NMRスペクトル,元素分析,原子吸光分析などでその構造を解析し,この白金錯体とDNA構成ヌクレオシドとの相互作用をUV差スペクドルおよび解離塩化物イオン濃度を測定して研究した。その結果,ジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体とDNA構成ヌクレオシドのUV差スペクトルには等吸収点が観測され,この系でのUV差スペクトルに関与する化学種が二成分存在し,それらが平衡をなしていることが示唆された。また,DNA構成ヌクレオシド存在下で,この白金錯体から解離する解離塩化物イオン濃度を測定したところ,白金錯体1molに対して塩化物イオンが2mol相当解離していることが明らかになり,この白金錯体は塩化物イオンを解離し,DNA構成ヌクレオシドと錯形成を行なっていることがわかった。さらに合成した白金錯体はアドリアマイシン耐性白血病細胞に対して特異的ながん細胞増殖抑制・障害性を示すことがわかった。
著者
河野 淳 加藤 朗夫 田中 豊 小泉 理華子 舩坂 宗太郎 間 三千夫
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.51-56, 1994-02-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Full dynamic range compression (FDRC) 補聴器“ED2”は会話音声の音圧レベルにおいて等しく圧縮がかかる。 この論文では, 提示音圧レベルを変え“ED2”の圧縮比と語音聴取能 (単語了解度) の関係について検討した。 対象は11名20耳の軽度-中等度難聴者。 圧縮比 (1:1, 1.5:1, 3:1), 音声の提示音圧 (50, 65, 80dBA), 提示音声には各条件25個の単語を使用した。 単語了解度の平均は, 50dBAの1:1, 1.5:1, 3:1それぞれで43.1, 77.6, 84.3%, 65dBAではそれぞれ78.8, 90.8, 93.6%, 80dBAではそれぞれ89.2, 93.0, 90.1%であった。 提示音圧50, 65dBAの圧縮比1:1と1.5:1の間にそれぞれT検定にて危険率0.01%, 1.55%の有意差がみられた。 提示音圧が低い場合, 圧縮比を増し, 鼓膜面音圧を大きくすることにより有意に単語了解度が向上し, 補聴器“ED2”におけるFDRCの有効性が示唆された。
著者
河野 淳
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.466-477,549, 1993-03-20 (Released:2010-12-22)
参考文献数
41

平均聴力レベル90dB以上 (平均105.9dB) の補聴器装用の高度難聴者49名を対象に, 補聴器による聴覚補償, 主観的評価 (アンケート調査) と客観的評価 (語音了解度検査) との関連性について検討した. 主観的には「静かな所での一対一の会話」の聴覚補償可能例が90-110dBで約60%と高かった. 客観的には聴覚のみと視聴覚併用の正答率は, 単音節で19.6%, 46.3%, 単語で19.8%, 43.4%, 文で29.5%, 60.0%であった. 単語, 文および視聴覚併用, 聴覚の検査項目に他との関連性が多くみられた. 高度難聴者の検査として, 単語, 文の検査, さらに視覚の検査を行えば補聴効果を一層知りうると推察した.
著者
冨澤 文子 塚原 清彰 河野 淳 野波 尚子 鮎澤 詠美 梅村 大助 西山 信宏 河口 幸江 白井 杏湖 斎藤 友介
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.500-508, 2017

<p>要旨: 人工内耳装用児の言語力に関する研究は本邦でも増加しつつあるが, 語彙力に関する詳細な研究は少ない。 今回我々は, 小学校就学前後期以前における人工内耳装用児の語彙力を, 良好群~不良群の6群に分類した。 88例中32例 (36.4%) が就学時期までに健聴児の生活年齢相当の理解語彙力を獲得していた。 一方で63.6%にあたる56例の装用児の理解語彙力は, やや不良~不良な状態であり, 健聴児との顕著な成績差が認められた。 手術時期に注目すると, 4歳時点で語彙発達指数が85以上になった群において手術時期が早い傾向がみられた。 他方, 補聴器開始年齢, 人工内耳装用閾値については, 各群で大きな差は認められなかった。 就学時期までの幼児期段階では, コミュニケーション方法として主に聴覚を使用する症例が多い傾向があり, 手話併用例は少なかった。 しかし, 小学校就学以降は, 理解語彙の不良例においては手話併用例が増加する傾向が認められた。 聴覚障害児の療育や教育の目的は幼児期の言語発達を促し, 就学以降の教科学習や社会生活に求められる書き言葉の獲得にある。 今後は語彙以外の言語の側面も含めた言語活動全体の発達を考慮し, 長期に渡って経過をサポートしていく必要がある。</p>