著者
李 玉花 崎山 亮三 丸山 浩史 河鰭 実之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.28-32, 2001-01-15
参考文献数
16
被引用文献数
12

イチゴ'女峰'における果実の発達にともなうアントシアニン合成経路遺伝子の発現を調べた.果実の色は開花3週間後に薄い緑色から白色に変わり, その後成熟期までアントシアニンの蓄積は続いた.また, この時期から全糖含量が増加を始めた.スクロース含量が成熟期まで上昇し続けたのに対し, グルコースとフルクトース含量は成熟に伴ってほとんど変化しなかった.フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)とカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子の発現は果実の発育を通して大きな変化を示さなかった.カルコンイソメラーゼ(CHI)とジヒドロフラボノール4-還元酵素(DFR)遺伝子の発現は, 若い果実では高かったが, 白熟期に著しく低下したのち着色に伴って再び増加した.2回目のCHIとDFRの発現の上昇はこれらの酵素の発現が成熟期のアントシアニンの合成調節に関与することを示唆した.
著者
河鰭 実之 李 玉花 王 宇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

農作物の品質に関わる紫外線応答について特にUV-Aに焦点を絞って調査をした.カブ `津田蕪`の芽生えでは,ピーク波長350nmのUV-A蛍光灯ではアントシアニン合成が誘導されるが,単波長の315~345nmではアントシアニン合成はほとんどみられず, 315nmと355nmの共照射によってアントシアニン合成が誘導された.網羅的な遺伝子発現解析の結果,UV-A特異的に発現が誘導される遺伝子群があり,そののなかには,アントシアニン合成系遺伝子の他にROS応答に関わる遺伝子が多数含まれた. この間のROSの発生は明らかでなかったが,青色光によるアントシアニン蓄積ではROSの関与が示唆された.
著者
Edi SANTOSA 杉山 信男 中田 美紀 河鰭 実之 久保田 尚浩
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.220-226, 2005-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
9

西ジャワ州クニンガン県におけるカキ栽培の経済性を明らかにするため, 農民へのインタビューを実施した.その結果, カキ栽培からの所得が農業所得の19~35%を占めていることが明らかになった.カキの樹齢は1年生から100年生で, 平均29年生であった.農民は除草と収穫のために年に1ないし2回, 果樹園に出かけるが, 施肥, 農薬散布, 灌水は行っていなかった.カキの樹間でチャ, コーヒー, ショウガ, 野菜などを間作する農民もいた.新梢は雨季が始まる9月から11月に萌芽し, 11月に開花した.収穫は4月下旬から6月下旬の間に行われていた.7月から8月の乾季には多くの樹が落葉した.1樹当りの収量は94から130kgであった.農民や仲買人は収穫した果実を生石灰入りの水に5日間漬けて脱渋処理を行っていた.農民はカキ栽培が土壌浸食を防止する効果があることを認識していた.これらの結果から, 急傾斜地のカキ栽培は環境を破壊せずに農民の所得を向上させる上で有効であることが明らかになった.
著者
山根 健治 河鰭 実之 藤重 宣昭
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.798-802, 1999-07-15
被引用文献数
5 18 24

フリーラジカル捕捉剤である安息香酸ナトリウムおよび没食子酸n-プロピル処理により, 切り離されたグラジオラス小花における花被のしおれの開始がわずかに遅れた.花被のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性は花被の完全展開後2日間で著しく低下し, その後, 花被のしおれが開始した.300μMシクロヘキシミド(CHI)処理により花被のSOD活性の低下は緩和され, しおれは抑制された.花被のしおれが開始したとき, カタラーゼ(CAT)の比活性はほぼ一定であり, 花被当たりのCAT活性は低下した.CHI処理によってCAT活性はわずかに低下した.花被のペルオキシダーゼ(POD)活性は完全展開1日後から著しく上昇した.この上昇はCHI処理によりほぼ完全に抑制された.これらの結果から, フリーラジカル, SOD活性の低下およびPOD活性の上昇はグラジオラス花被の老化過程に関与することが示唆された.
著者
河鰭 実之 韓 尚憲 崎山 亮三
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.480-484, 2002-07-15
被引用文献数
3 10

果実による水の蓄積が糖の蓄積と濃度に与える影響をトマト'Brehem's Solid Red'と'81L1204-2'果実において評価しようとした.開花14日後で直径30-35mmの果実を選び, これをアクリル製のパイプで覆って肥大生長を機械的に抑制した.この処理によって開花35日後の果実新鮮重は対照果実の30から40%となった.乾物の果実あたりの蓄積も抑制されが, 乾物率は処理によって増加した.このことは, 糖の流入よりも水の流入の方が処理によって強く抑制され, さらにそれらの流入が独立に変動しうることを示唆した.処理果, 非処理果いずれもフルクトースとグルコールが主要な糖で, スクロースは非常に少ないか検出できなかった.ヘキソース(フルクトース+グルコース)濃度は, 'Brehem's Solid Red'では処理果の方が非処理果より有意に高かったが, '81L1204-2'では有意差は認められなかった.短期間の肥大抑制効果をみるため, 果実を直径30-35mmの果実をアクリル製の容器で覆い, さらに果実と容器の間の隙間をガラスビーズで埋めた.この処理によって果実の肥大は直ちに抑制された.5日間の処理の間, 乾物率はほとんど変化しなかった.ヘキソース濃度は, 非処理果ではほぼ一定だったのに対し, 処理果では, はじめのうちは増加し, その後増加はみられなくなった.糖濃度の変化は, 乾物率の変化とは一致せず, 果実に流入した糖が不溶性の炭水化物ではなく水溶性の糖として優先的に蓄積した可能性が考えられた.