著者
清水 かおり 片岡 弥恵子 江藤 宏美 浅井 宏美 八重 ゆかり 飯田 眞理子 堀内 成子 櫻井 綾香 田所 由利子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.267-278, 2013
被引用文献数
3

<b>目 的</b><br> 日本助産学会は,「エビデンスに基づく助産ガイドライン―分娩期2012」(以下,助産ガイドライン)をローリスク妊産婦のスタンダードケアの普及のため作成した。本研究の目的は,助産ガイドラインで示された分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所での現状を明らかにすることを目的とした。<br><b>方 法</b><br> 研究協力者は,東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の分娩を取り扱っている病院,診療所,助産所の管理者とした。質問項目は,分娩第1期に関するケア方針18項目であった。調査期間は,2010年10月~2011年7月であった。本研究は,聖路加看護大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った(承認番号10-1002)。<br><b>結 果</b><br> 研究協力の同意が得られた施設は,255件(回収率37.3%)であり,病院118件(回収率50.2%),診療所66件(20.8%),助産所71件(54.2%)であった。妊娠期から分娩期まで同一医療者による継続ケアの実施は,助産所92.9%,診療所54.7%と高かったが,病院(15.3%)では低かった。分娩誘発方法として卵膜剥離(病院0.8%,診療所3.1%,助産所1.4%)および乳房・乳頭刺激(病院0%,診療所1.5%,助産所5.6%)のルチーンの実施は低かった。入院時の分娩監視装置による胎児心拍の持続モニタリングの実施は,助産所の38%が実施していた。硬膜外麻酔をケースによって行っているのは,病院の31.6%,診療所の31.3%であった。産痛緩和のための分娩第1期の入浴は,助産所では92.7%,病院48.3%,診療所26.7%で可能とされていた。産痛緩和方法として多くの施設で採択されていたのは,体位変換(95%),マッサージ(88%),温罨法(74%),歩行(61%)等であった。陣痛促進を目的とした浣腸をケア方針とする施設は非常に少なかった(病院1.7%,診療所9.1%,助産所1.4%)。人工破膜をルチーンのケア方針としている施設はなかった。<br><b>結 論</b><br> 分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所における現状と助産ガイドラインのギャップが明らかになった。本研究の結果を基準として,今後助産ガイドラインの評価を行っていく必要がある。本研究の課題は,回収率が低かったことである。さらに,全国のケア方針の現状を明確化する必要がある。
著者
清水 かおり 片岡 弥恵子 江藤 宏美 浅井 宏美 八重 ゆかり 飯田 眞理子 堀内 成子 櫻井 綾香 田所 由利子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.267-278, 2013 (Released:2014-03-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

目 的 日本助産学会は,「エビデンスに基づく助産ガイドライン―分娩期2012」(以下,助産ガイドライン)をローリスク妊産婦のスタンダードケアの普及のため作成した。本研究の目的は,助産ガイドラインで示された分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所での現状を明らかにすることを目的とした。方 法 研究協力者は,東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の分娩を取り扱っている病院,診療所,助産所の管理者とした。質問項目は,分娩第1期に関するケア方針18項目であった。調査期間は,2010年10月~2011年7月であった。本研究は,聖路加看護大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った(承認番号10-1002)。結 果 研究協力の同意が得られた施設は,255件(回収率37.3%)であり,病院118件(回収率50.2%),診療所66件(20.8%),助産所71件(54.2%)であった。妊娠期から分娩期まで同一医療者による継続ケアの実施は,助産所92.9%,診療所54.7%と高かったが,病院(15.3%)では低かった。分娩誘発方法として卵膜剥離(病院0.8%,診療所3.1%,助産所1.4%)および乳房・乳頭刺激(病院0%,診療所1.5%,助産所5.6%)のルチーンの実施は低かった。入院時の分娩監視装置による胎児心拍の持続モニタリングの実施は,助産所の38%が実施していた。硬膜外麻酔をケースによって行っているのは,病院の31.6%,診療所の31.3%であった。産痛緩和のための分娩第1期の入浴は,助産所では92.7%,病院48.3%,診療所26.7%で可能とされていた。産痛緩和方法として多くの施設で採択されていたのは,体位変換(95%),マッサージ(88%),温罨法(74%),歩行(61%)等であった。陣痛促進を目的とした浣腸をケア方針とする施設は非常に少なかった(病院1.7%,診療所9.1%,助産所1.4%)。人工破膜をルチーンのケア方針としている施設はなかった。結 論 分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所における現状と助産ガイドラインのギャップが明らかになった。本研究の結果を基準として,今後助産ガイドラインの評価を行っていく必要がある。本研究の課題は,回収率が低かったことである。さらに,全国のケア方針の現状を明確化する必要がある。
著者
飯田 真理子 片岡 弥恵子 江藤 宏美 田所 由利子 増澤 祐子 八重 ゆかり 浅井 宏美 櫻井 綾香 堀内 成子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.73-80, 2018-06-29 (Released:2018-06-29)
参考文献数
14
被引用文献数
4

周産期を通して安全で快適なケアを提供するには助産実践指針が必要である。日本助産学会は健康なローリスクの女性と新生児へのケア指針を示した「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」を刊行した。この2016年版は2012年版に新たに妊娠期の臨床上の疑問(Clinical Question,以下CQ)を13項目加え,既にある分娩期のCQ30項目には最新のエビデンスを加えた。このガイドラインでは助産実践を行う上で日常助産師が遭遇しやすい臨床上の疑問に答え,ケアの指針を示している。推奨は最新のエビデンスに基づいているため,ここに示している内容は現時点での“最良の実践”と考える。本ガイドラインに期待する役割は次の3つである:1)助産師がエビデンスに基づいたケアを実践し,女性の意思決定を支援するための指針としての役割,2)助産師を養成する教育機関において,日進月歩で進化していく研究を探索する意味を学び,知識やケアの質が改善している事実を学ぶ道具としての役割,3)研究が不足し充分なエビデンスが得られていない課題を認識し,研究活動を鼓舞していく役割。そして本稿においてガイドラインの英訳を紹介する目的は次の通りである:1)日本の助産師が編纂したガイドラインを世界に紹介・発信すること,2)日本の研究者が英語で本ガイドラインを引用する際の共通認識として用いること。2016年版では,合計43項目のCQに対して推奨を示しているが,次の6つに関しては産科領域で広く用いられているものの,医行為に関わるため推奨ではなく「エビデンスと解説」にとどめている:CQ1分娩誘発,CQ2卵膜剥離,CQ7硬膜外麻酔,CQ21会陰切開,CQ26会陰縫合,CQ28予防的子宮収縮薬投与。2012年版から推奨が改訂されたCQは次の通りである:CQ3乳房・乳頭刺激の分娩誘発効果,CQ9指圧,鍼療法の産痛緩和効果,CQ14指圧,鍼療法の陣痛促進効果。なお,本論文の一部は「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」からの抜粋であり,推奨の部分は翻訳である。
著者
江藤 正通 堀場 匠一朗 浅井 宏樹 津邑 公暁 松尾 啓志
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.55-65, 2012-10-15

マルチコア環境における並列プログラミングでは,メモリアクセスの調停には一般にロックが用いられてきた.しかしロックを使用する場合,デッドロックの発生や並列性の低下などの問題がある.そこでロックを用いない並行性制御機構として LogTM が提案されている. LogTM では possible_cycle というフラグを用いて競合を解決する.しかし,この競合解決手法では starving writer が発生し,長期にわたるストールや競合の繰返しにより性能が大きく低下してしまう.そこで本稿では, starving writer の解決手法を提案する.提案手法の有効性を検証するためにシミュレーションによる評価を行った結果,既存の LogTM に比べて最大で 18.7%,平均で 6.6% の性能向上が得られることを確認した.
著者
堀場 匠一朗 江藤 正通 浅井 宏樹 津邑 公暁 松尾 啓志
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.43-54, 2012-10-15

マルチコア環境における並列プログラミングでは,共有メモリへのアクセス制御にロックが広く用いられてきた.しかし,ロックには並列性の低下やデッドロックの発生などの問題がある.そこで,ロックを用いない並行性制御機構として,トランザクショナル・メモリが提案されている.このハードウェアによる一実装である LogTM においては, possible_cycle と呼ばれるフラグを用いてデッドロックの発生を検出する.しかしこの手法では,デッドロックの判定に偽陽性が存在し,アボートが過剰に発生する可能性がある.そこで本稿では, 3 者以上のトランザクション間の依存関係を考慮することでデッドロックを検出可能とする手法を提案し,さらに適切なアボート対象を選択する手法も検討する.シミュレーションによる評価の結果,提案手法によりアボートの発生が抑制され,ログの書き戻しコストなどが削減されることで,最大 31.5% の高速化を確認した.