- 著者
-
海後 宗男
- 出版者
- 日本教育メディア学会
- 雑誌
- 教育メディア研究 (ISSN:13409352)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.47-60, 2004
これまでの研究で、社会的デジタル・デバイドは、新しい情報通信技術へのアクセス能力(media access)の欠如によって形成されていることが検証されてきた。日本の場合、特にメンタルな接続能力の欠如(コンピュータ不安やコンピュータに対する興味の欠落によって生じる心的要因によるデジタル経験の欠如)とスキルの接続能力の欠如(教育環境やインターフェースの問題によって発生するデジタル・スキルの欠如)のふたつが、社会的デジタル・デバイドを構成する要因となっていると推測される。本研究では、2つの調査を行ってメンタルな接続能力とスキルの接続能力の欠如の実態を明らかにした。また本研究では、2つの調査結果を検証するなかで、日本のデジタル・デバイドの現状が本来の語義である「持つ者、持たざる者」に二分されるのみではなく、様々な要素が組合わさって、多層からなる階層が形成されていることに着目し、これを「デジタル階層」と呼ぶことにした。「デジタル階層」は日本の社会的デジタル・デバイドを捉えるために用いた構成概念ではあるが、社会的文化的背景や経済状況が異なる場合にも応用が可能で、各国のデジタル・デバイドの実態を捉えやすくし、系統的にデジタル享受を推進する方略を練る上で有効だと考えられる。