- 著者
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久保 慶明
岡田 勇
柳 至
- 出版者
- 日本政治学会
- 雑誌
- 年報政治学 (ISSN:05494192)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.1, pp.1_82-1_105, 2020 (Released:2021-06-16)
- 参考文献数
- 58
本稿の目的は、2019年沖縄県民投票における投票行動の分析を通じて、国家の安全保障をめぐり地方レベルで展開する対立軸を特徴づけることである。有権者の選好形成と選好表明を内生的に捉える枠組みを構築し、政策争点に関する態度、直接民主制に関する価値観、政党キューの影響に関する記述的分析と多項ロジット分析をおこなった。 得られた知見は以下の通りである。第一に、在日米軍基地に否定的な有権者、直接民主制に肯定的な有権者、オール沖縄を支持する有権者は、「反対」 に投票しやすい。第二に、米軍基地に肯定的な有権者、直接民主主義に否定的な有権者、自民党を支持する有権者は、「賛成」 への投票か 「棄権」 を選びやすい。これは 「賛成」 の選好を形成したために 「棄権」 した有権者、つまり選好形成と選好表明を内生的に選択した有権者の存在を示唆する。第三に、自らの争点態度と支持政党からのキューが一致しない有権者は、争点態度に沿って投票するか、政党キューにしたがって投票するか、という選択に迫られる。以上の知見は、保革対立が流動化した日本政治において、防衛・安全保障をめぐる対立軸が代議制と直接民主制の相互作用の中で展開していることを示している。