著者
佐谷 秀行 齋藤 潤
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

Benzaldehydeは古くからがん細胞抑制作用があることが知られているが、その作用機序は全く分かっていなかった。研究代表者らはこれまでの研究で、膵臓がん細胞では14-3-3ζが高発現することで細胞増殖シグナル分子が活性化し、その機能をBenzaldehydeが抑制していることを見出した。14-3-3ζはこれまでにもがん治療の標的として注目されてきたが、その阻害剤の開発には至っていない。本研究ではBenzaldehydeの効果と毒性をマウスモデルを用いて検証し、新たな膵臓がん治療薬開発の端緒とすることを目的とする。
著者
板野 理 松田 祐子 清水 宣明 荻野 千秋 藤村 智賢 佐谷 秀行 大島 正伸
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

悪性腫瘍による閉塞性黄疸に対しての金属性ステントを用いた姑息的減黄術はtumor ingrowthによるステント閉塞の問題が増加している。本研究では、チタン合金ステントに超音波を照射し、ラジカルの産生を利用したステント内再閉塞を予防・改善するための無侵襲的治療法の確立を目的とした。チタン合金に対し1MHzの超音波を30秒0.3 W/cm2照射し超音波のみと比較したところ、チタン合金で高いフリーラジカルの発生が確認され殺細胞効果も最も高かった。悪性腫瘍ステントモデルでは、1MHz、0.3W/cm2、10分の超音波照射を行った。超音波照射群でステントへのingrowth抑制が確認された。
著者
佐谷 秀行
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.10, pp.688-693, 2006-10-20

ゲノムの不安定性は悪性腫瘍の主たる特徴であり,細胞周期チェックポイントの異常はそれを誘導するきわめて重要な要因である.現在広く使用されている抗腫瘍薬として,DNA傷害性薬剤,微小管作動性薬剤があるが,これらの薬剤は腫瘍細胞のチェックポイントの異常を利用して選択的に癌に細胞死を引き起こすことが明らかにされてきた.タイムラブス顕微鏡とRNA干渉法を用いた解析により,これらの薬剤によって癌細胞に誘導される細胞死は,主として分裂中期から直接生じる分裂期崩壊であり,紡錘体チェックポイント機能など複数の要素によって制御されていることが明らかになった.本稿では現行の抗癌治療の分子論を整理したうえで,その特徴と問題点を議論する.
著者
高橋 玲 AARONSON Stu BENEDICT Wil 佐谷 秀行 松井 利充 BENEDICT William f. AARONSON Stuart a.
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究は、米国で数年間行われてきた癌抑制遺伝子の機能解析についての研究を継続し、日米の協力研究として発展させることを目的とする。基本的には我々のグループが樹立した癌抑制遺伝子の生物学的活性を直接的に細胞レベルで解析できる実験系を用い、その遺伝子異常を正常のものと比較する。また癌細胞における癌抑制遺伝子の発現を種々の方法で人為的に調節することで癌細胞の表現型の変化を誘導し、癌治療に向けての可能性を検討する。研究代表者高橋は、分担研究者全員の協力を得てRB遺伝子とp53遺伝子のトランスフェクションを進めた。膀胱癌,肺小細胞癌にRB遺伝子導入、口腔扁平上皮癌と大腸癌にp53遺伝子を導入し、それぞれの安定発現株を得て解析を進めた。時にp53遺伝子導入大腸癌細胞においては、アポトーシスを誘導できる系が確立されることが明らかとなり、制癌剤開発に適したモデルとして期待される。ヒト大腸癌培養細胞株WiDrはp53遺伝子上2つ3番目のコドンに相当する部位の点変異を有する。サイトメガロウイルスのプロモーターに制御される正常p53発現プラスミドベクターを安定性にトランスフェクションし、プラスミドのもつネオマイシン抵抗性を利用して正常p53の発現を獲得したクローンを得た。培養中の増殖態度は軟寒天中のコロニー形成率の著しい低下以外には、ほとんど変化がみられなかった。抗Fas抗体(IgM)で処理すると親株にはほとんど変化がみられなかったが、48時間後をピークとしてp53導入細胞に著明な細胞死(アポトーシス)が誘導された。アポトーシス処理後24時間後の細胞からのRNA解析によれば、内在性の変異型p53遺伝子の発現レベルには変化がなく、導入された正常p53の発現及びそれに関連してcdK2のインヒビターであるp21(WAFI)遺伝子の発現の亢進がアポトーシス誘導に伴って生じることが明らかとなった。このことは正常p53遺伝子の発現に担っているサイトメガロウイルスのプロモーターに特異的なシグナルがFAS依存性反応経路に存在していることを示唆しており、現在、同プロモーターに働くNFkBについて解析を進めている。現在までFasからのシグナルとp53依存性アポトーシスとの間に関連はないといわれているが、今回の人為的反応経路の連結により、Fasにより誘導可能なp53依存性アポトーシスのモデルとして、DNA損傷により誘導される場合とは異なりユニークなモデルといえる。トランスフェクションに用いた大腸癌細胞はγインターフェロン処理によってもp53遺伝子再構築なしに抗Fas抗体に感受性を示すようになることが知られており、遺伝子再構築と制癌剤との協同作用として興味深い。肺小細胞癌は神経内分泌特性によって他の肺癌と区別されているが、我々は今回NF1遺伝子mRNAのスプライシング様式の変化がその分化指標となりうることを発見した。NF1のスプライシング様式の変化は以前、分担研究者の佐谷らによって見出されたもので、多くの神経系細胞や腫瘍において、分化度と高い相関を示すことが明らかにされていた。我々は肺小細胞癌培養株で得られた所見をもとに臨床材料で形態学的あるいはNSEなどのマーカーとの関連において解析を続けている。口腔扁平上皮癌においてもp53変異に対して正常p53遺伝子導入株で角化傾向が誘導されることも確認されている。今回の協力研究により困難で長時間を要するヒト癌細胞への安定性癌抑制遺伝子導入にいくつかの細胞で成功し、解析が可能となった。特に定常状態での変化よりも、分化誘導や細胞死誘導などの刺激下では癌抑制遺伝子の細胞レベルでの機能が顕著になることが明らかとなった。今後さらに種々の組合わせで癌細胞における癌抑制遺伝子機能がさらに詳細に解析されることが期待される。今回は兵庫県南部地震のため、渡米計画が一部中止されるなどの変更が生じたが、おおむね、当初の研究交流の成果を待つことができたと考えられる。
著者
野田 哲生 田矢 洋一 石川 冬木 花岡 文雄 山本 雅之 下遠野 邦忠 中村 卓郎 石川 冬木 花岡 文雄 山本 雅之 畠山 昌則 中村 卓郎 高井 義美 丹羽 太貫 廣橋 説雄 下遠野 邦忠 佐谷 秀行
出版者
財団法人癌研究会
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

本総括班は、特定領域研究「遺伝情報システムと発がん」において、計画班と公募班からなる研究組織の立ち上げから、各研究班の研究成果の評価までを行い、さらに研究代表者会議の開催などを通じて情報交換の促進を図るなど、本領域の研究活動の効果的な推進のため、各種の支援活動を行った。その結果、がんの発生と進展の過程の分子機構に関し、がんの予防法の確立と治療法の開発に貢献する多くの新たな知見が得られた。