- 著者
-
清水 由紀
内田 伸子
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.3, pp.314-325, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
-
5
2
本研究では, 小学校に入学した児童が, 一対多のコミュニケーションにおける言語形態 (二次的ことば) やきまりの習得を含む教室ディスコースへとどのように適応していくのかについて検討した。1年生の4月と7月の朝の会において観察された相互作用を, カテゴリー分析と事例分析により比較した。その結果, 入学直後の教師による発話の指導は, 発話形態によって異なっていた。入学直後, 言い方や発話形式が完全に決まっている発話は, 教師が丁寧に説明や指示を行い, 児童がそれをそのまま繰り返していた。一方, 考えを伝える発話は, 教師が発話形式のモデルを示し, 児童がそれを積極的に取り込むという習得過程が見られた。そして7月になると, きまりに沿いながらも内容豊かで活発な児童主導の活動が行われるようになっていた。また仲間関係調査, 親に対するアンケート, 教師に対するインタビューより, このような適応過程は, 児童を取り巻く教師, 仲間との対人関係の成立と共に, 朝の会への関心の増加や, 教師による児童の状態の適切な認知により支えられていることが示唆された。