著者
渡辺 博明
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-74, 2007 (Released:2018-10-01)

スウェーデンの環境党は支持率5 %前後の小政党であるが、1998年から2002年までの2期8年にわたって閣外協力の形で社民党政権を支え、その影響力は無視できないものとなっている。環境党は88年に議会進出を果たした当初、他党との協力の可能性を否定していたが、やがて社民党との交渉を通じた政策決定への関与を模索するようになり、98 年選挙で「要政党」 となると閣外協力に踏み切った。かつて圧倒的な優位を誇った社民党の勢力に翳りが見え始め、同党と環境党および左翼党との協力が進むと、他方で保守・中道4党も、従来には見られなかった周到な協力体制の構築によって政権奪取を目指し始めた。左右二大陣営間のバランスの変化が環境党の議会政治戦略の変化につながった一方、同党が「左派ブロック」入りしたことで、今日のスウェーデンの政党政治において、多党化と政党支持構造の流動化にもかかわらず、「ブロック政治」の作用が強まることとなった。
著者
渡辺 博明
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-25, 2005 (Released:2018-10-01)

スウェーデンでは、1920年代以降、最大勢力の社会民主主義を中心に、共産主義、保守主義、自由主義、農民勢力のそれぞれの政党からなる5 党制の時代が長く続いた。 しかし、1980年代末から新党の参入が相次ぎ、長期安定を誇った同国の政党システムにも明確な変化が表れた。 その背景には、政党支持構造の流動化と政治的争点の多様化があった。他方、そうした変化が進む中でも、主要政党が左派と右派に分かれて対峙する「ブロック政治」の枠組みは、双方に新たな政党を加える形で存続し、それと結びついた社民党の優位も続いている。こうしたことから、スウェーデンの政党システムについては、時とともに不安定化要因を多く抱え込みながらも、今までのところ、包括的な対抗軸に基づいて作動する従来の形態が辛うじて維持されているといえる。
著者
寺野 寿郎 増井 重弘 寺田 達矢 渡辺 博明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.375-385, 1993-04-15
被引用文献数
5

画像処理の研究は非常に多いが, その大部分はパターン認識, 輪郭線検出, ノイズ除去, 二次元画像の三次元化など記号的な処理にとどまっており, 画像の持つ情報内容に立ち入った研究は少ない.マルチメディアの問題など考えると, 今後は画像情報の意味論的な処理が重要になると思われる.人間と画像のコミュニケーションのうち, 画像から人間へのインパクトは心理学などで多少研究されているが, 人間が心中に抱くイメージを画像に伝えて表現する研究はほとんど行われていない.本論文はその第一歩として無着色の風景画に人間の季節イメージに合った着色を施すことを試みた.イメージは抽象的なものなのでそのままではコマンドにならない.また, 色というものは物理量であるとともに心理的な量でもあるので数式的扱いは困難である.そこで, まず, 四季の色彩イメージを言語で表現することを試み, つぎにそれをRGBに変換するルールを作ってCRT上で実現させた.これらのルールに現れる変数はいずれも感覚的・定性的なものなので、ファジィ集合で表すことによって微妙な着色が可能になった.さらに, 基本着色ルールに加えて, 季節や時刻が標準状態から外れた場合の調整ルールを作成し, ファジィ推論によって季節の中間や夕暮れ時のイメージを実現させた.これらルールによって数種類の風景画を着色してみたが, いずれの場合もほぼイメージに合った彩色をさせることができた.
著者
渡辺 博明
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-25, 2005

スウェーデンでは、1920年代以降、最大勢力の社会民主主義を中心に、共産主義、保守主義、自由主義、農民勢力のそれぞれの政党からなる5 党制の時代が長く続いた。 しかし、1980年代末から新党の参入が相次ぎ、長期安定を誇った同国の政党システムにも明確な変化が表れた。 その背景には、政党支持構造の流動化と政治的争点の多様化があった。他方、そうした変化が進む中でも、主要政党が左派と右派に分かれて対峙する「ブロック政治」の枠組みは、双方に新たな政党を加える形で存続し、それと結びついた社民党の優位も続いている。こうしたことから、スウェーデンの政党システムについては、時とともに不安定化要因を多く抱え込みながらも、今までのところ、包括的な対抗軸に基づいて作動する従来の形態が辛うじて維持されているといえる。
著者
渡辺 博明
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-74, 2007

スウェーデンの環境党は支持率5 %前後の小政党であるが、1998年から2002年までの2期8年にわたって閣外協力の形で社民党政権を支え、その影響力は無視できないものとなっている。環境党は88年に議会進出を果たした当初、他党との協力の可能性を否定していたが、やがて社民党との交渉を通じた政策決定への関与を模索するようになり、98 年選挙で「要政党」 となると閣外協力に踏み切った。かつて圧倒的な優位を誇った社民党の勢力に翳りが見え始め、同党と環境党および左翼党との協力が進むと、他方で保守・中道4党も、従来には見られなかった周到な協力体制の構築によって政権奪取を目指し始めた。左右二大陣営間のバランスの変化が環境党の議会政治戦略の変化につながった一方、同党が「左派ブロック」入りしたことで、今日のスウェーデンの政党政治において、多党化と政党支持構造の流動化にもかかわらず、「ブロック政治」の作用が強まることとなった。
著者
渡辺 博明
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.2_80-2_99, 2015 (Released:2018-12-15)
参考文献数
26

本稿は, スウェーデンの民主政治における代表と統合の変容を, 政党政治の変化から論じるものである。従来の同国政治の特徴は, 議院内閣制の中でも特に 「委任―責任」 関係が単純化された制度設計になっていることと, 多党制でありながら 「ブロック政治」 や 「消極的議院内閣制」 の慣行により少数派政権でも意思決定を進めやすいことにあった。そして, それらを結びつけて機能させていたのが, 職能的ないし思想的に社会集団を代表しつつ, 議会内では合意形成を目指して合理的に行動しうる諸政党であった。しかし, 高度経済成長を経て有権者の政党支持が流動化するとともに, 予算編成方式の変更を機に政党側の多数派形成志向が強まり, ついには左右の選挙連合が対決するに至った。そこでは各党の政策距離が縮小する中, 有権者が政権選択のみを迫られる傾向が強まった。その一方で, 移民政策をめぐる既成政党の対応を批判する右翼ポピュリスト政党が台頭し, 議会政治に大きな影響を与えるまでになっている。今日のスウェーデンは, 選挙制度を含む諸制度への支持の安定という点で直ちに統合の危機に陥る恐れはないものの, 政党による代表と調整の機能が問い直される局面を迎えている。
著者
渡辺 博明
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.32-43, 2010

2006年のスウェーデン選挙は,3期12年ぶりの政権交代によって注目された。その際,中道右派4党の勝利を可能にしたのは,前例のない周到な選挙協力であった。本稿では,(1)それに先立つ社民党政権期に,連立政権ではなく文書化した政策合意に基づいて多数派を確保しようとする「契約主義的議会政治」が現れたこと,(2)それが右派の結集を促し「選挙連合の政治」を生んだこと,(3)2006年での右派の勝利が今度は左派3党を次期選挙に向けた事前協力に踏み切らせたこと,を見ていく。その上で,選挙を前に左右両陣営が政権構想を固めて有権者の支持を奪い合う現在の状況は,同国の伝統的な「ブロック政治」の枠組みを越え出るものであることを指摘し,政党自身の変化や有権者の投票行動の変化にも言及しながら,この10年余りの間に同国の政党政治と選挙をめぐって構造変動が起きていると結論づける。