著者
七山 太 渡辺 和明 重野 聖之 石井 正之 石渡 一人 猪熊 樹人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.6, pp.413-433, 2018-06-15 (Released:2018-08-18)
参考文献数
66
被引用文献数
3 4

千島海溝沿岸域は本邦屈指の地震多発地帯である.この地には未開の原野も多く,手つかずの自然が残されており,400~500年間隔で繰り返し発生した超巨大地震(17世紀型)によって生じた離水地形や津波堆積物が観察できる唯一無二の地域と言える.また北海道東部には偏西風によってもたらされた完新世テフラが1000年オーダーの頻度で挟在し,地震津波イベントの同時性を議論するうえで有用である.津波堆積物の自然露頭は北海道東部太平洋沿岸でも限られるが,この巡検で最初に議論する根室市西端部のガッカラ浜地域には小規模な沿岸湿原が存在し,その太平洋側には湿原堆積物の断面である泥炭層が,高さ約2m程度の海蝕崖が連続して露出している.この露頭では,6層の完新世テフラと過去4000年間に発生した12層の津波堆積物を確認することができる.一方,根室海峡に面する風蓮湖と野付半島には,我が国には珍しい現在も活動的なバリアーシステムが認められている.これらの沿岸地形を特徴づける分岐砂嘴(バリアースピット)の相互の分岐関係と7層の完新世テフラとの対比によって,過去5000年間の地形発達史が解読され,このうち過去3回分の離水(強制的海退)については,超巨大地震(17世紀型)に伴う数mオーダーの広域地殻変動が大きく寄与している可能性が示唆される.
著者
須藤 茂 斎藤 英二 渡辺 和明 安田 聡
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.283-292, 2003-07-10 (Released:2017-03-20)
参考文献数
44

Ground deformation around Iwate and Mitsuishi-yama volcanoes was monitored by Electro-optical distance measurement (EDM), global positioning system (GPS), and leveling from 1998 to 2002. Repeated GPS observation data, which showed a four to six centimeter eastward movement of the summit of Iwate volcano in 1998 and 1999, are concordant with the interferometry SAR analysis by the NASDA, which showed the expansion around the Mitsuishi-yama in 1998. The leveling on the north side of Iwate and Mitsuishi-yama volcanoes also showed the upheaval around the Mitsuishi-yama between 1998 and 1999, and depression between 1999 and 2000. The automatic continuous GPS observation and data transfer system was developed in this study, and the data showed the depression of the Mitsuishi-yama area from 2000 to 2002. The direction of the depression was not straight downward, but the south or south-south-east at the rate of one to three centimeters a year. According to the extent of the deformation area, their source is thought to be at a depth around eight kilometers. A higher temperature granitic body of five hundred degrees centigrade or more has been already detected directly by drilling in the Kakkonda geothermal field, just south of Mitsuishi-yama. The addition of new magma to the granitic body or separation of gas from the magma possibly caused the expansion in this area in 1998 and 1999, but it may be difficult to explain the depression of this area from 2000 to 2002.
著者
渡辺 和明 小池 真史 立石 章 高久 雅喜 本宮 栄二 道廣 英司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学研究発表会 報告集 (ISSN:18848451)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.193, 2005 (Released:2010-11-22)
参考文献数
16

筆者らは, 供用開始から約30年が経過した沈埋トンネルを対象に, 現状のトンネルが有する耐震性能について調査した. まず建設当時の設計図書, 工事記録, 既往の現地調査結果の情報を収集し, それらに基づいて検討条件を設定した. また当該地区の歴史地震や活断層等の地震環境を調査し, 耐震検討に用いるレベル2入力地震動を設定した. そしてトンネル周辺地盤の地震応答解析, トンネルの横断及び縦断方向の地震応答解析を実施し, トンネル躯体や継手部の安全性を照査した. これらの検討結果より, レベル2地震動に対して両側立坑部の一部の部材でせん断耐力が不足すること, 立坑部と函体間の継手部で最大目開き量が大きくなること等, 今後, 耐震補強を検討する上での貴重なデータを入手できた.