著者
蛇口 達造 吉野 裕顕 森井 真也子 蛇口 琢 渡部 亮
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.1105-1108, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
20

血漿シトルリン濃度が短腸症候群の消化管順応の生体指標として簡便且つ有用であることが Crennらにより提唱されて以後、栄養学的自立の評価に重要な位置をしめるようになっている。その解釈には小腸で合成されるシトルリン(Cit)が腎臓でアルギニン(Arg)に変換し、全身で利用される代謝機構の理解が必要である。新生児期発症 SBS自験症例の検討から、(1)血漿 Cit濃度は手術時残存小腸の長さを反映し鋭敏に増加する、(2)血漿 Cit, Arg濃度の両者とも絶食時基準値内なら栄養学的自立は可能である、(3)両者とも基準値内で TPNから離脱できない症例では、その原因検索を進めるべきであると考えられた。以上から血漿 Citと Arg濃度は SBSの消化管順応の評価に簡便かつ有用な検査であると結論した。
著者
渡部 亮
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.128, no.8, pp.1-32, 2019 (Released:2021-09-02)

本稿は、「大正デモクラシー」がいかに明治憲法体制に組み込まれたのか(または、組み込まれなかったのか)という視角から、昭和初期の右派無産政党である社会民衆党の分析を試みるものである。同党は吉野作造の指導のもとに「大正デモクラシー」を具現化しようとした政党であり、陸軍桜会のクーデタ計画である三月事件にも参加し、かつ強力な「革新」派政党である社会大衆党へ連なる政党でもあるという点できわめて注目に値するが、一九三二年の無産政党再編問題を「離合集散」ないし「復古」化と捉える先行研究は、同党のこうした性格に十分な関心を向けてきたとは言い難い。 そこで本稿では、社会民衆党の基幹イデオロギーである議会主義に対する思想史的分析を補助線としつつ、社会民衆党の「革新」プランとその展開過程を具体的な政局と関連づけて追跡することで、「革新」勢力が権力核へ接近する筋道を描出した。その成果は以下の通りである。 「少数賢明」の「嚮導」を共通の理想としていた社会民衆党は、田中・浜口内閣期を通じて二つの政治的潮流に分裂していった。吉野・安部磯雄を中心とする議会改革派は、有権者による議員の統制や大選挙区制・比例代表制の導入を主張して、未完の議会主義を育てる方針を堅持した。一方で、政友―民政の拮抗がくずれキャスティング・ヴォートの掌握が難しくなると、議会主義を悲観する声も強まっていった。こうした党内の対立は三月事件によって決定的となり、一九三二年には無産政党再編に至る。 ここで注目されるのは、クーデタによる新体制の構築を図った赤松克麿、永田鉄山を通じて非選出勢力と提携した亀井貫一郎、「大衆」と議会の接続強化を謳った漸進派、そのいずれもが議会主義の止揚を目指していたことである。議会主義をめぐる社会民衆党の変容は、満洲事変という外在的な要因による無産政党の「転向」ではなく、「革新」の方法面における深化であった評価できよう。
著者
渡部 亮 Watabe Ryo
出版者
法政大学経済学部学会
雑誌
経済志林 (ISSN:00229741)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.25-57, 2010-03

A key question regarding the international financial crisis of 2007-08 is whether it was mainly due to market failure or government failure. Regarding the former, there were well-known issues which had already been encountered in previous business cycles, including debt deflation andthe manic-depressive nature of asset markets, which therefore had been widely investigated by economists. But there were also new experiences such as the combination of securitization and credit derivatives in the socalled"shadow banking system." The expansion of non-banking financial sectors coupled with the networking economy led to creation of various sources of new credit which were not adequately monitored by regulatory authorities, giving rise to a new type of systemic risk. As for governmentfailure, collusive inter-relations between bankers on one hand, and law makers and government officials on the other, encouraged financial deregulations and caused unprecedented excesses in the banking sector.
著者
渡部 亮 坂田 祥子 丸山 敦史 菊池 眞夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.51-58, 2004-03-31

横浜市の三つ池公園の利用者から得られた支払意志額(WTP)を用いて都市公園の選好構造を検討した.公園が現状のままで有料化された場合入場料として幾ら払うかという質問に対して得られたWTPの平均値は138円であった.これに対して公園のサービスとインフラストラクチュアを改善した上で有料化するとした場合のWTPは平均180円であった.WTP関数の計測により,所得,年齢,公園訪問の目的が複数ある場合にWTPが統計的に有意に高められることが明らかにされた.公園の機能と快適さを高く評価する訪問者も高いWTP水準を示した.また計測された年齢とWTPの関係から,公園の入園料を平均WTPより低い100円に設定するとしても,35歳以下の若い世代の来園者を失う可能性が高いことが明らかになった.