著者
大倉 浩 (2007) 湯沢 質幸 (2006) 李 承英
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究においては、日韓文化史的な研究の一環として、日本に残存する中世の韻書に焦点を当て、それを同時期の韓国韻書と比較し、韻書の取り扱い方や位置づけにおける日韓間の同異を解明することを目的とし、本年度では以下のような研究を行った。1. 日本中世漢字音研究の指導的役割を果たした五山系抄物について、『玉塵抄』『史記抄』等、有用な資料を調査・収集し、韻書におけるデータを整理した。韻書や抄物等は関西の図書館や社寺に所蔵されている場合が多いので、本年度における資料調査は関西方面において行った。2. 資料の調査結果を踏まえて、まず、日本側の韻書である聚分韻略の音注の系統を探るため、五山系抄物、特に『玉塵抄』『史記抄』『漢書抄』等の呉音・漢音と比較を行った。3. 五山系抄物との比較した結果を基にし、中世の呉音漢音の資料である文明本節用集との比較も行い、聚分韻略の音注の系統を更に探った。4. 日本の韻書の聚分韻略と同じ三重韻形式を採用している韓国『三韻通考』とを比較し、両国韻書の歴史における位置を確かめ、この二書の前後関係を考察した。5. 日韓漢字文化史の比較研究を行うために、京都・中国地方の図書館や博物館等において漢字音資料の発掘や調査、資料収集を行った。
著者
湯沢 質幸 沼本 克明 小倉 肇 清水 史 二戸 麻砂彦 岡島 昭浩 佐々木 勇 肥爪 周二 蒋 垂東
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

成果の中心は次の4点にまとめられる。(1) 既に実験的に研究開発し終えた、日本漢字音データベース(大字音表)の根幹となるソフト及びデータについて、それが実用に十分耐えうるかどうかを実践形式を取り入れて検証したこと。(2)((1)を踏まえて)実用に耐えうるソフトの完成度を高めるとともに、それにのっとって日本漢字音研究における基礎中の基礎となる韻鏡データを実用に耐えうるまでに再構築し、一定の完成度に達したデータベースを作成したこと。(3) 将来における大字音表の発展・拡充を目指した基礎的な調査、研究作業を行うことができたこと。すなわち、近い将来における大字音表への複数資料の字音データ掲載を目指して一部資料について日本漢字音の整理を行えたこと。また、同様に、日本漢字音資料の発掘や調査、及び研究を行えたこと。(4) 国内外の漢字音研究者の研究の便宜を図って、実用に耐えうる『韻鏡』データを載せた日本漢字音データベースをインターネット上に公開したこと。
著者
湯沢 質幸
出版者
至文堂
雑誌
国語と国文学 (ISSN:03873110)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.p53-66, 1984-02
著者
湯沢 質幸
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1 日本漢字音資料, 取り分け中近世漢字音資料として有用なものを追求すべく, 京都泉涌寺を初めとして東北大学, 京都大学, 国立国会図書館等を巡り, 漢字音文献の調査を行った.2 各調査箇所において, 本研究に寄与する文献のリストアップ及び一部収集をした. 泉涌寺では特に執筆から,宋音(資料)に係わる実際の読経音や経文に付された各種記号の指示内容についての貴重な情報を直接得ることができた.3 本研究開始以前に収集したものも含め, 資料の分析を日本漢字音史の展開を脳裏に置きながら進めた. それとともに, 分析結果のコンピュータ処理を図るため付属部品を購入し, 必要な情報の入力を行いつつ所期の目的に沿って従来の研究を踏まえながら中近世漢字音, そしてその一構成要素であるところの泉涌寺宋音について考察を試みた.4 考察の過程で, 中近世漢字音なかんずく泉涌寺宋音の特徴の把握や歴史的な位置づけをし, さらにそれを通じて中近世日本語の音韻状態を明らかにするためには, 上代以降の日本漢字音史の解明が必要であることが明白となった. そこで, 中近世漢字音・宋音の研究を旨としながらも, 上代中古の漢字音すなわち呉音漢音の研究も行った.5 上記4までの研究の結果, 当初の目的を達成することができた. その成果の一部は, 62年度中に発刊予定の筑波大学の紀要で発表する. なお, 現在, その他の成果の発表を行うべく準備を進めている.