著者
湯淺 墾道
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.51-61, 2009

選挙権の性質については憲法学界において論争が続いているが,被選挙権の性質についての議論は少ない。しかし近時,多選制限と関連して被選挙権は憲法上の権利ではないとする見解が明らかにされたことを契機に,あらためて被選挙権の性質が問われている。従来の通説では被選挙権は選挙によって議員その他に就き得るための資格,選挙人団によって選定されたときこれを承諾し公務員となりうる資格であるとされたが,昭和43年の大法廷判決などに触発され,被選挙権の憲法上の権利性を肯定する学説も増えている。被選挙権の憲法上の権利性を認めるとすれば,選挙権の中に含まれていると見るべきであり,選挙権の公務性(一定の公共的性質)から説明できる。
著者
折田 明子 湯淺 墾道
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、昨年度実施した文献調査を継続したことに加え、現行の法制度および2018年5月より発効するGDPR、また個々のサービスのポリシーについて調査を行った。その結果、まず死者の権利に関する原則は、英米法系と大陸法系とで異なっていることがわかった。前者では死者の権利については一般に否定的であるが、大陸法系においては死後も一定の範囲で権利性を認める傾向にあった。また、GDPRでは、各加盟国が独自に死者の個人情報の取扱について規制することを妨げないこととなっていた。米国ではアカウントやデータを「デジタル資産」として一体的に法的に保護しようとする動きが比較的早くからあり、パブリシティの権利等の枠組みを活用して当該本人の死亡後も法的に保護しようとする動きもある。どのような制度設計が現実に即し、かつ多様な死生観を包含するものとなるのか、今後検討を進める、次に、個々のサービスを調査したところ、利用者の死亡時のアカウントの扱いを規定しているサービスの多くは、利用者死亡時に故人本人あるいは親族の身分証明を必要とする規定を定めている。そのため、仮名での利用や法律上の氏名・性別を非開示とする利用においては当人の確認ができなくなる。結婚その他のライフイベントで改姓し、法律上の名前と日常生活の名前が違う場合、例えばFacebookでは両者の併記を求めているが、実際の利用者は一方の名前のみを記載している。本人確認につながる個人情報や、見せたくない面を見せないといったプライバシーを保護した上での利用と当人確認を両立させる設計の必要性が見えてきた。
著者
折田 明子 湯淺 墾道
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2019-DPS-180, no.22, pp.1-6, 2019-09-12

グローバルに利用されているソーシャルメディアやメッセージングサービスについて,その一部は利用者の死後のデータの扱いを明記している.サービスの利用者はどのように考えているのか,サービスの利用頻度や目的と,自分の死後そのデータをどのように扱いたいかの意向について日本 ・米国 ・フランスの比較調査を実施した.その結果,FB と Instagram については,日本は削除が大半を占めた一方で,米国では 「追悼モード」 での保存が多数を占めた.また,Twitter については,日本では情報収集が利用目的であり,死後も大半は削除を希望しているが,米国 ・フランスでは日常的なコミュニケーション手段として使われており,削除を希望する割合も少ないなど,国による違いが見えた.
著者
湯淺 墾道
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2013-EIP-60, no.7, pp.1-6, 2013-05-09

平成15年の地方自治法の改正により導入された指定管理者制度は,自治体の個人情報保護との関係において多くの問題点を生み出している.自治体は公的機関として公共性や透明性が求められ,個人情報保護条例で個人情報保護を図っているのに対して,企業等の民間事業者である指定管理者には個人情報保護法が適用されている.本稿では個人情報の取扱をめぐる公的機関としての自治体と民間事業者との相違を明らかにし,公の施設の管理に際して指定管理者が収集・保有する個人情報に対する個人情報保護法と条例の適用問題について検討を加える.