著者
乃村 能成
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2017-DPS-172, no.17, pp.1-6, 2017-11-22

電子メールシステムは,歴史が長く枯れた技術であることから,相互運用性が高く,組織間の基本的な連絡手段として広く用いられている.電子メールで個人情報などの秘匿すべき情報を送信する際,暗号化された添付ファイルを送信し,共通鍵のパスワードを平文で別送することがよく行われている.本稿では,これをパスワード別送添付メールと呼び,パスワード別送添付メールの問題点を指摘する.また,問題点を受信側で解決する手法を提案する.提案手法は,暗号化されたメールに対応するパスワードメールとその中に含まれるパスワード文字列を効率よく発見し,パスワード解読を自動化する.さらに,提案手法を実装し,個人の電子メールシステムに組込み,運用した結果について評価する.評価では,多くのメールについて,数回のパスワード試行で解読が可能なことを示す.
著者
中沢 実 鷹箸 孝典 阿部 拓真
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2015-DPS-163, no.14, pp.1-8, 2015-05-21

近年,人の脳活動を読み取る研究の発展は目覚ましい.脳活動を読み取るには脳 (EEG) や機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) など,いくつかの方法が存在する.非侵襲的な EEG においては,リアルタイムで利用者の思考や感情,表情の検出や脳波の生データへ容易にアクセスできる製品が世の中に出ている.また,これらの脳波データを用いた工業用製品も徐々にではあるが,登場してきている.そこで,本論文では,既存の基礎研究に基づいて,福祉分野における人の脳活動の活用を現実世界で適用させることを目的とし,利用者が初めて訪れる施設であっても脳波から利用者の意図を読み取り,容易に目的地まで辿り着くシステムの実現を目的とする.
著者
本田 正美 梶川 裕矢
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2018-DPS-176, no.6, pp.1-6, 2018-09-06

自由に二次利用可能な形式でデータを公開するオープンデータの取り組みが広がりを見せている.日本での取組済の自治体数は,2018 年 7 月時点で 300 を超える.そのような中で,実際に提供されているオープンデータについては,その量や内容に相違が存在している.本研究では,かような自治体におけるオープンデータの取り組みにつき,自治体としてどのような契機でその着手に至り,その結果としてどのような自己評価を行っているのか事例分析を通して明らかにする.
著者
阿部 涼介 鈴木 茂哉
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2020-DPS-185, no.11, pp.1-8, 2020-12-14

Ethereumは,P2P ネットワーク上で改ざん困難な台帳を信頼する第三者なく形成するシステムであるブロックチェーン上でプログラムを実行できるプラットフォームである.Ethereum 上に構築されたアプリケーションの操作に要する時間は,そのアプリケーションが実用に耐えうるか判断するための重要な要素である.先行研究では,限られたネットワーク参加者を想定したブロックチェーン自体の性能を検証が行われているが,Ethereum のような開かれたネットワーク上での伝播遅延を考慮した検証,およびアプリケーションの実行時間の定式化には至っていない.本研究では,Ethereum の動作を精査し,その上に構築されるアプリケーションの実行に要する時間の定式化を試みる.定式化された実行時間を検証するために,遅延をエミュレーションしたプライベートなネットワーク,試験環境であるテストネットワーク上で実験を行った.実験の結果,一定以上の伝播遅延が発生する時に遅延以上のオーバヘッドが存在することが示唆された.本研究の成果を基にさらなる高精度な定式化を行うことで,Ethereum 上に構築されるアプリケーションの実行時間を想定し,実用に耐えうるか事前に検証可能となることが期待される.
著者
増田 尚之 中沢 実
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2023-DPS-197, no.12, pp.1-6, 2023-12-14

情報通信技術の向上に伴い,XR 技術を用いたコンテンツの実用化が本格化しつつある.XR 技術は,人間が観測する実空間を拡張する手段の一つである.XR 技術の一つに,Location-based AR がある.これは,GPS や BLE ビーコンなど,クライアントの位置情報を取得できる機器を用いて,クライアントの位置に基づいた AR オブジェクトを配信する技術である.実際にゲームやナビゲーションシステムに多く取り入れられている.しかし,既存のシステムでは描画する AR オブジェクトを取得する場合,インターネット環境がなければ正常にシステムを動かすことができない.また,クライアントの位置情報をもとに描画する AR オブジェクトが変化するため,位置情報を取得できない場合正常にシステムが動作しない.本提案では,災害時や屋内など,GPS やインターネット通信を利用できない環境でも動作する Location-based AR を提案する.
著者
加藤 尚徳 森田 朗 鈴木 正朝 村上 陽亮 花原 克年
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2021-DPS-188, no.15, pp.1-8, 2021-09-02

2021 年 2 月 1 日,欧州委員会は "Assessment of the EU Member States’ rules on health data in the light of GDPR" を公開した.これは,GDPR におけるヘルスケアデータについて,加盟各国の国内法の整備をはじめとした影響評価について調査されたものである.EU 加盟国間で起こりうる相違点を調査し,医療,研究,イノベーション,政策決定を目的としたEUにおける保健データの国境を越えた交換に影響を及ぼす可能性のある要素を特定することを目的としている.本稿では,この影響評価において分類されている 3 つの機能に着目し,それぞれがどのような位置づけをされているか分析を行う.
著者
鈴木 大志 鷹合 大輔 中沢 実
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2021-DPS-189, no.5, pp.1-6, 2021-12-13

声質変換とは,人物の声の声質のみを別人の声質に変換する技術である.その中でも,ゼロショット声質変換は,変換モデルの学習した音声にない声質間での変換が可能な手法である.AutoVC は,ゼロショット声質変換モデルで,入力話者の声のメルスペクトログラムと入出力話者の話者埋め込みベクトルを入力する事で,話者らの声を学習しているか否か関わらず,出力話者の声質のメルスペクトログラムを出力する.これを,音声波形に復元する際に,音既存手法では WaveNet や Griffin-Lim などの多くの計算時間を要する手法を用いておりリアルタイムな声質変換の弊害となっている.そこで,本研究ではメルスペクトログラムに代えて,スペクトル包絡を用いた.そして,波形の復元は WORLD を用いる事でリアルタイムな声質変換を実現した.
著者
中川 裕志
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2021-DPS-188, no.11, pp.1-6, 2021-09-02

死後の個人データの扱いは個人の尊厳の維持,あるいは生前の意思にできるだけ沿うことが重要である.この観点から,本報告では故人に永遠の生命をディジタルな形で与える不死のディジタル人格に関して,そのビジネス化あるは商業利用の実情を述べる.故人の顔画像の福笑いのような行き過ぎた,あるいはエンターテイメント化した故人の個人データのビジネス化などにみられる問題点を指摘して,故人の個人データのビジネス化のあるべき姿を模索する.
著者
板倉 陽一郎 寺田 麻佑
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2015-DPS-164, no.1, pp.1-7, 2015-09-03

長年,個人情報保護法はクラウド・コンピューティングの利用が個人情報の取扱いの委託に該当するかという問題について目を背けてきたが,マイナンバー法の本格施行,改正個人情報保護法における越境移転制限・記録義務の導入により正面からの議論が必要となってきた.本稿ではこれまでの議論・学説を整理するとともに,可能な限り諸外国での議論についても触れる.
著者
須川 賢洋
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2017-DPS-172, no.20, pp.1-6, 2017-11-22

他人の無線 LAN アクセスポイントを踏み台としてネットワーク犯罪が行われることが大きな問題となっている.東京地判 H 29.4.27 では,WEP キーを解読し他人のアクセスポイントに接続しただけでは電波法違反とはならないとの判断がなされた.本稿はこのような場合における不正アクセス禁止法等の諸法の可能性について考察する
著者
飯島 貴政 串田 高幸
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2020-DPS-182, no.57, pp.1-7, 2020-03-05

自然災害が発生した場合のデータセンターへの影響は地震や台風の直接的な損害に加え,電力供給会社による計画停電,土砂崩れによる電線の切断の間接的な損害が考えられる.この手法では 1 分ごとに災害の種類名を SNS 上で検索し,最新の情報のモデル,過去に災害が発生した時刻の前後で前述したデータのモデルをピアソンの相関関数によって類似率を計算し自動で構成とデータを複製することで耐障害性を実現する分散バックアップ手法を提案する.既存のバックアップ手法と比較してバックアップが完了するまでの時間の削減を目的とした.既存のバックアップ手法と提案手法での災害発生からバックアップが完了するまでの時間面と費用面での比較を行うことで評価を行った.結果,既存の手法に比べ災害発生からバックアップ開始から終了までの作業時間が約 51.8% 削減された.また,期間を設定し評価を行った際に約 49.9% コストが削減できた.
著者
間形 文彦 藤村 明子 亀石 久美子 加藤 俊介 板倉 陽一郎
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2019-DPS-180, no.3, pp.1-8, 2019-09-12

「パーソナルデータは新しい石油」 といわれ,その利活用がユーザや社会に利便性と新たな価値を提供している.その一方で,本人の意思に反する利活用をした事業者が法的制裁を受け,社会的な批判を浴びる事例も後を絶たない.事業者は個人情報の利用目的を特定し,通知又は公表若しくは同意を得てその目的の範囲内で取扱うことはもちろん,その目的と取扱いをユーザにより分かりやすく説明する責任がますます求められる傾向にある.同じユーザに対して複数のサービスを展開する事業者の場合,サービスごとに個人情報の利用目的を次々と定めることが多い.その場合,業務と利用目的の対応関係は複雑となりがちで,複数サービスの提供を受けるユーザは自分の個人情報が何の目的で利用されるのか把握するのは容易でない.他方,事業者にとっても複数の業務において利用目的を逸脱せずに個人情報を扱えるか正しく判断することは困難となる.そこで,数多くの外延を列挙して定義する従来の利用目的の特定方法に代わり,ユーザの意思決定に重要な契約履行上の必要性と利用行為の方向性の 2 つの軸による内包的枠組みを用いて利用目的を分類する方法を提案し,その枠組みを適用した事例を紹介する.
著者
折田 明子 湯淺 墾道
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2019-DPS-180, no.22, pp.1-6, 2019-09-12

グローバルに利用されているソーシャルメディアやメッセージングサービスについて,その一部は利用者の死後のデータの扱いを明記している.サービスの利用者はどのように考えているのか,サービスの利用頻度や目的と,自分の死後そのデータをどのように扱いたいかの意向について日本 ・米国 ・フランスの比較調査を実施した.その結果,FB と Instagram については,日本は削除が大半を占めた一方で,米国では 「追悼モード」 での保存が多数を占めた.また,Twitter については,日本では情報収集が利用目的であり,死後も大半は削除を希望しているが,米国 ・フランスでは日常的なコミュニケーション手段として使われており,削除を希望する割合も少ないなど,国による違いが見えた.
著者
原田 要之助
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2017-DPS-172, no.11, pp.1-8, 2017-11-22

昨今,多くの組織がビッグデータや個人情報を収集し活用するようになっている.また,IoT では,様々なデバイスがネットワークに接続されて,様々な情報が集められ,例えば,個人情報と連携して利用することが可能となっている.2018 年 5 月に,データガバナンスに関する規格 (ISO / IEC38505-1) が出版された.この規格は,このような現状において,組織には収集し,保存し活用するデータについての,組織に求められるデータガバナンスについて述べている,今回は,この規格は,2018 年 5 月に EU が施行する GDPR が求めるガバナンスについて適用できることを目指している.今回は,この規格について分析し,内容の報告と,規格の活用について述べる.
著者
落合 桂一 深澤 佑介 松尾 豊
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2017-DPS-171, no.7, pp.1-7, 2017-05-25

スマートフォンの普及を背景に位置情報サービスが注目されている.位置情報サービスは現地に行くことで利用が可能となるものもありコンテンツ配置がユーザの行動に影響を与えると考えられる.そこで,本研究では Pokemon Go を例として位置情報サービスの利用によるユーザの行動変化を分析する.具体的には Foursquare のチェックインデータを用いて,チェックイン回数や時間帯,訪問したスポットの傾向やカテゴリの傾向,移動距離などを,サービス利用前後および利用者と非利用者で比較し特徴を分析する.
著者
福光 正幸 長谷川 真吾 岩崎 淳也 酒井 正夫 高橋 大樹
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2016-DPS-166, no.6, pp.1-8, 2016-02-25

商用オンラインストレージサービスに保存されたユーザデータは,ターゲット広告配信や犯罪捜査の目的でサービス事業者側で解析されたり,第三者からの攻撃により改変/漏洩される恐れがある.その対策として,ユーザ側でデータを暗号化し,さらに,秘密分散法により分割して,複数のオンラインストレージに分散保存して守る技術が提案されている.しかし,強力な攻撃者から標的にされた場合,この対策だけでは十分ではない.攻撃者は,標的ユーザの通信を傍受することで分散保存先の特定が可能であり,さらに,その全ての攻撃に成功した場合は,保存データを消失させたり,暗号データを奪うことも可能である.また,奪われた暗号データが,オフラインのブルートフォース攻撃により解読される恐れもある.そこで,本稿では,秘密分散法に匿名通信技術を援用した P2P 型ストレージ技術を提案する.提案法では,P2P ノードが相互に匿名通信を用いてデータを送受信して保存し合うことにより,攻撃者の通信傍受による分散保存先の特定が不可能になり,分散保存先への攻撃を困難にできる.ところで,提案法のようにデータを不特定な P2P ノード群に分散保存して秘匿する場合,一般的には,その分散保存先の情報を復元用メタ情報としてユーザ端末などに残す必要がある.しかし,そのメタ情報は格好の標的であり,攻撃者によるユーザ端末の盗難やハッキングを受ける恐れがある.そこで,本稿では,ブロックチェーンの技術を援用することで,メタ情報も P2P ストレージ上に秘匿し,ユーザ端末でのメタ情報の保存を不要にし,復元時にはユーザ名とパスワードのみを用いて,P2P ストレージ上の保存データに安全にアクセスできる仕組みも提案する.