著者
三浦 瑠璃 江村 菜津子 齋藤 ゆり子 澤井 健
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.112, pp.P-42-P-42, 2019

<p>【目的】哺乳動物の初期胚は,桑実期から胚盤胞(BC)期にかけて,内部細胞塊(ICM)と栄養膜細胞(TE)への分化が起こる。SOX2はICM分化に重要な役割を担うと考えられているが,ブタ初期胚におけるSOX2発現動態と胚発生への役割については明らかではない。本研究では,ブタ胚におけるSOX2発現動態とその発現抑制が初期胚発生におよぼす影響について検討した。【方法】ブタIVM卵子および1-細胞期からBC期における<i>SOX2</i> mRNA発現量およびSOX2タンパク質の発現を解析した。次に,ブタ1-細胞期胚にSOX2発現抑制用siRNAを注入する区(SOX2 siRNA 区),Control siRNAを注入する区(Control siRNA 区),siRNAを注入しない区(無処理区)を設け,BC期までの発生率を調べ,BC期での<i>TEAD4</i>および<i>OCT-4</i> mRNA発現量を解析した。また,それら BC期胚の総細胞数およびSOX2発現陽性細胞率を調べた。【結果および考察】<i>SOX2 </i>mRNA発現量は,IVM卵子,1-細胞期,桑実期,BC期に比べ,8-~16-細胞期で有意(<i>P</i> < 0.05)に高い値を示した。SOX2タンパク質は8-細胞期以降の細胞核で発現が認められ,BC期胚においては,ICMと思われる部位に局在が認められた。Control siRNA区およびSOX2 siRNA区の4-細胞期以上への発生率は,無処理区と比較して有意(<i>P </i>< 0.05)に低い値を示したが,BC期への発生率は各処理区間に差は認められなかった。<i>TEAD4</i>および<i>OCT-4</i>発現量は,各処理区間に差は認められなかった。BC期での総細胞数およびSOX2発現陽性細胞率は無処理区に比べ,SOX2 siRNA区で有意(<i>P </i>< 0.05)に低い値を示した。SOX2 siRNA区においてはBC期ICMへのSOX2局在化が認められなかった。本結果より,SOX2はブタ初期胚におけるICM形成に関与する可能性が示された。</p>
著者
齋藤 ゆり子 江村 菜津子 三浦 瑠璃 澤井 健
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.112, pp.P-48-P-48, 2019

<p>【目的】microRNA(miRNA)はmRNAの翻訳抑制に関与する短鎖ノンコーディングRNAである。我々は,前回の本大会において,miRNA合成関連因子である<i>DROSHA</i>の発現を抑制すると,ブタ初期胚における16-細胞期以降の発生率が低下することを明らかにした。本実験では,<i>DROSHA</i>発現抑制がブタ初期胚の遺伝子発現に及ぼす影響を検討するとともに,それら遺伝子の発現に関与するmiRNAのブタ初期胚での発現動態を調べた。【方法】ブタ1-細胞期胚に,<i>DROSHA</i>発現抑制用siRNAを注入する区(DROSHA siRNA区),いずれの遺伝子の発現も抑制しないControl siRNAを注入する区(Control siRNA区),siRNAを注入しない区(無処理区)を設け,得られた8-細胞期胚における<i>KLF4</i>,<i>DNMT3A</i>および<i>RBL2</i>のmRNA発現量を解析した。次に,<i>KLF4</i>もしくは<i>DNMT3A</i>遺伝子発現を制御することが示唆されているmiR-29b,miR-145および,miR-371について,体外成熟(IVM)後のブタ卵子,1-細胞期から胚盤胞(BC)期のブタ胚における発現量を解析した。【結果および考察】<i>KLF4</i>および<i>DNMT3A</i>発現量は,無処理区に比べDROSHA siRNA区で有意(P<0.05)に低い値を示した。一方,<i>RBL2</i>発現量は各処理区間に差は認められなかった。miR-29b発現量は,IVM卵子からBC期胚のいずれにおいても差は認められなかった。miR-145発現量は,IVM卵子,1-細胞期胚およびBC期胚と比べ,16-細胞期胚において有意(P<0.05)に高い値を示した。miR-371発現量は,IVM卵子および1-細胞期から16-細胞期胚と比べ,桑実期およびBC期で有意(P<0.05)に高い値を示し,また,桑実期胚と比較してBC期胚において有意(P<0.05)に高い値を示した。以上の結果より,初期発生過程で合成されるmiRNAがブタ胚の遺伝子発現を制御する可能性が示された。</p>
著者
皆川 修人 櫻井 伸行 高橋 一生 江村 菜津子 東間 千芽 橋爪 力 澤井 健
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.109, pp.P-93-P-93, 2016

<p>【目的】miRNAの生合成を抑制したマウス胚では胚性致死となることから,miRNAを介した遺伝子発現制御が初期胚発生において重要な役割を担うと考えられる。miRNA-34cは,マウス胚において1-細胞期から発現量が上昇し,その機能を阻害すると卵割が停止する。またmiR-93およびmiR-34aはマウス胚性幹細胞および人工多能性幹細胞においてSox2や,Nanogの発現を制御している。しかし,ブタ胚においては上記miRNAの発現動態およびその機能は不明である。そこで本研究ではブタ初期胚における上記3つのmiRNAの発現動態とmiR-34cが初期胚発生に及ぼす影響について検討した。【方法】ブタ卵子(M-Ⅱ期)およびブタ体外受精(IVF)胚の1-細胞期,2~4-細胞期,8~16-細胞期,桑実期および胚盤胞期でのmiR-34a,miR-34cおよびmiR-93の発現量を解析した(実験1)。またmiR-34cに結合し,その機能を阻害するmiR-34c inhibitorを1-細胞期胚に注入し,その後6日間体外発生させ,胚盤胞期までの発生率を検討した(実験2)。処理区は,miR-34c inhibitor区および特定のmiRNAの機能阻害効果も持たないNon-effect inhibitor区とした。【結果および考察】実験1において,3種のmiRNAはいずれも全発生ステージで発現が確認された。miR-34cおよびmiR-93については各発生ステージにおいて有意な差は認められなかった。miR-34aについては桑実期および胚盤胞期において,発現量が他の発生ステージよりも有意(P<0.01)に高い値を示した。実験2おいて,miR-34c inhibitor区およびNon-effect inhibitor区で発生率に有意な差は認められなかった。本研究の結果より,ブタ初期胚における3種のmiRNAの発現動態が明らかとなった。マウス胚においてmiR-34cは受精後の1細胞期から発現量が上昇するが,ブタ胚においては受精以前のM-Ⅱ期から発現が認められた。またmiR-34cに関しては,その機能阻害が胚発生に影響をおよぼさなかったことから,初期胚発生におけるmiR-34cの機能は動物種によって異なることが示唆された。</p>
著者
櫻井 伸行 高橋 一生 江村 菜津子 皆川 修人 東間 千芽 橋爪 力 澤井 健
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.109, pp.P-92-P-92, 2016

<p>【目的】マウス胚において,内部細胞塊から胚盤葉上層(EPI)および原始内胚葉(PrE)への分化はFGFシグナルによって制御されている。FGFシグナルのリガンドであるFgf4はEPI前駆細胞から分泌され,隣接する細胞に作用することでPrE分化を促す。そのため,<i>Fgf4</i>欠損マウス胚はPrE分化に異常をきたし,胚性致死となる。一方,ウシ胚の発生および組織分化におけるFGFシグナルの役割は明らかでない。本研究では,ウシ胚の各発生ステージにおける<i>FGF4</i> mRNAの発現動態解析およびウシ初期胚に対するFGF4発現抑制実験を行い,ウシ胚の発生および組織分化におけるFGF4の役割について検討した。【方法】食肉処理場由来のウシ卵巣から卵丘細胞–卵子複合体を吸引採取し,体外成熟培養後に媒精を行うことで体外受精胚を得た。各発生ステージにおいてサンプリングを行い,<i>FGF4</i>の遺伝子発現量解析を行った。1細胞期胚の細胞質にFGF4発現抑制用のsiRNAを注入し,胚発生への影響を検討した。実験区はFGF4発現抑制区に加え,遺伝子発現抑制効果を有しないControl siRNA注入区および注入操作を行わないUninjected区を設けた。桑実胚を対象として,EPIの分子マーカーである<i>NANOG</i>およびPrEの分子マーカーである<i>GATA6</i>について遺伝子発現量解析を行った。【結果および考察】<i>FGF4</i>発現は16細胞期までは認められず,桑実期以降でのみ認められた。培養7日目における胚盤胞期への発生率は,Uninjected区(64.6%)およびControl siRNA区(60.1%)と比較してFGF4発現抑制区(20.6%)において有意(<i>P</i> < 0.01)に低い値を示した。FGF4発現抑制区における<i>NANOG</i>発現量は,Control siRNA区と比較して有意(<i>P</i> < 0.05)に高く,また<i>GATA6</i>発現量はUninjected区と比較して有意(<i>P</i> < 0.05)に低い値を示した。本研究では,ウシ胚の初期発生においてFGF4が重要な因子であることが明らかとなり,またウシ胚においてもFGFシグナルがEPI/PrE分化を制御する可能性が示唆された。</p>
著者
山下 哲郎 宮崎 雅雄 片山 泰章 澤井 健
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ネコは尿に分子量7万でエステラーゼ活性を持つコーキシンを大量に分泌している。我々はこれまでにネコの尿に含まれる特異なアミノ酸フェリニンの生産にコーキシンが関与していることを見いだした。しかしネコがなぜコーキシンを尿に大量分泌してフェリニンを生産しているか、他に生理機能があるか未解明である。そこで本研究では、コーキシンの遺伝子欠損ネコを作成し、コーキシンの機能解明を目指すための基礎的研究を行った。具体的にはネコ尿主要タンパク質コーキシンの機能解明を行うために人工DNA制限酵素「TALEN」をネコの受精卵に作用させコーキシン配列の破壊を行い、コーキシン遺伝子欠損ネコ作成を試みた。
著者
芦田 和男 湯城 豊勝 岡部 健士 藤田 裕一郎 澤井 健二 江頭 進治
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究は河床が低下する傾向にある河川の堤防・護岸の安全性を水理学的観点から明らかにすることを目的として行ったものである。以下、本研究によって得られた知見を要約する。1.河床低下の傾向にある交互砂州河道には、一般に抵水路が形成され、低水路の屈曲部には深掘れが生じる。これは流れの集中によるものであるが、低水路を満杯で流れる条件において、洗掘深は最大になる。2.護岸の被災過程には法勾配及び水潤している法長に応じて明確な差異がある。同一護岸高であれば、1割以上の急な護岸は主に土質力学的過程によって前方に押し出されるように起立して被災し、2割の護岸は目地等の間隙に働く流体力によって浮き上がるようにして被災する。3.低水路の屈曲部の深掘れを軽減するための方法の一つに不透過水制を設置する事が考えられる。この種の水制によって深掘れは著しく緩和されることが判明した。4.低水路を有する河川の弱点を捜し、その安定性を高めるための工法をより一般的に評価することを目的として、工作物の影響や2次流の影響を取り入れた平面2次元流れと河床変動に関するシミュレ-ション法を開発した。
著者
金 金 八重樫 朋祥 澤田 建 斉藤 隼人 後藤 由希 中嶋 侑佳 澤井 健 橋爪 力
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第103回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.101, 2010 (Released:2010-08-25)

【目的】本研究は,日長や温度変化が反芻家畜の成長ホルモン分泌(GH)に及ぼす影響を明らかにするために,ヤギを人工気象室内で飼養し,日長や温度を変化させた時のGH分泌の変化を調べた。 【方法】成熟雌シバヤギを室温20°Cに設定した人工気象室内で,8時間明,16時間暗(8L-16D), 12時間明,12時間暗(12L-12D)及び16時間明,8時間暗(16L-8D)の人工照明下で飼養した。また12L-12Dの一定照明下で室温を25°C又は5°Cに設定した人工気象室内でもヤギを飼養した。それぞれの条件下で飼養したヤギの頸静脈内にカテーテルを留置し,15分間隔で4時間採血して血中GH濃度の変化を調べた。また各期に成長ホルモン放出ホルモン(GHRH: 0.25 µg/kg b.w.)を頸静脈内投与してGHの放出反応も調べた。GHパルスの解析はEllisら方法に従った。 【結果】(1) 照明を変化させた時,GHのパルス頻度には有意な変化は見られなかった。パルスの振幅は8L-16D区に比べ12L-12D区と16L-8D区では高くなる傾向が見られた。平均GH濃度は8L-16D区に比べ12L-12D区と16L-8D区は有意に高かった(P<0.05)。(2)温度を変化させた時,パルス頻度と平均GH濃度には有意な変化は見られなかった。GHパルスの振幅は25°C区に比べ5°C区の方が高い傾向にあった。 (3) GHRH投与実験においては,16L-8D区は8L-16D区に比べGH放出反応が高まる傾向が見られた。温度変化による差は見られなかった。 本研究の結果は,ヤギのGH分泌は温度変化より,日長変化により修飾されることを示唆する。