著者
熊崎 薫 濡木 理 石谷 隆一郎
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.230-235, 2014-08-31 (Released:2014-09-03)
参考文献数
15

Structural determination of membrane proteins is a key step to understand the molecular mechanisms of the membrane proteins. Lipidic cubic phase (LCP) crystallization is a technique to crystallize the membrane proteins in lipid environment and one of the effective approaches for the membrane protein crystallization. In this article, we describe the overview of crystallization of the membrane proteins in LCP, including the basic principles and procedures of LCP crystallization.
著者
濡木 理 伊藤 耕一 MATURANA ANDRES 加藤 英明 石谷 隆一郎
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2016-04-26

光感受性チャネル:光駆動性カチオンチャネルであるチャネルロドプシンは励起光(480nm青色光)の照射によってイオンを流入させることができるため、「光遺伝学」と呼ばれる手法のツールとして神経生物学の分野で広く用いられている。平成28年度にはこのチャネルロドプシンのイオン流入の分子機構を明らかにするため、SACLA自由電子レーザーを用いた時分割構造解析を行い、励起光照射した後1, 50, 250, 1000, 4000マイクロ秒後における構造変化を明らかにした。その結果、発色団レチナールにおけるall-trans型から13-cis型への異性化に伴ってチャネルロドプシン内部に構造変化が生じ、イオン透過経路におけるinner gateと呼ばれる狭窄部位が広げられるように変化することがわかった。音感膜タンパク質:Transmembrane channel-like protein1/2 (TMC1/2) は,聴覚や平衡感覚の受容に関わる機械刺激受容チャネルの有力候補である.鳥類や爬虫類に由来するTMCホモログの発現・精製に成功し,熱安定性が向上して均一性高く発現するコンストラクトの同定に成功した.現在ネガティブ染色による電子顕微鏡観察を試みている.ニワトリ由来Prestinに関しては,さらにコンストラクトの改変および発現・精製系の検討を行った結果,細胞質ドメイン欠損変異体について大量かつ均一に精製することに成功した.これと並行して,ヒト由来Prestinのクローニングも新たに行い,さまざまな細胞を用いての発現条件の検討を行った結果、HEK293S細胞にて良好な発現が確認された.この発現系を用いて界面活性剤や緩衝液などの可溶化条件の検討および120種以上のコンストラクトの比較検討を行った結果,熱安定性が向上して均一性高く発現するコンストラクトの同定に成功した.
著者
二又 葉音 濡木 理
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.85-86, 2023-05-31 (Released:2023-06-06)
参考文献数
8
著者
岡本 紘幸 濡木 理
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.341-344, 2022 (Released:2023-01-25)
参考文献数
10

メラトニン受容体は睡眠障害の治療標的として注目を集めるGタンパク質共役型受容体だが,詳細な活性化機構は不明であった.本稿では,クライオ電子顕微鏡による解析で得られた立体構造情報から解明された,睡眠障害の治療薬によってメラトニン受容体が活性化し,下流のGタンパク質と共役する詳細な構造基盤を紹介する.
著者
加藤 英明 濡木 理
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.246-249, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Channelrhodopsin (ChR) is a light-gated cation channel derived from algae. Since the inward flow of cations triggers the neuron firing, neurons expressing ChRs can be optically controlled even within freely moving mammals. Although ChR has been broadly applied to neuroscience research, little is known about its molecular mechanisms. We determined the crystal structure of chimeric ChR at 2.3 Å resolution and revealed its molecular architecture. The integration of structural and electrophysiological analyses provided insight into the molecular basis for the channel function of ChR, and paved the way for the principled design of ChR variants with novel properties.
著者
濡木 理
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.123-127, 2018 (Released:2018-02-01)
参考文献数
6

2012年,細菌の獲得免疫機構に働くCRISPR-Casタンパク質が,ガイドRNA(crRNA, tracrRNA)を用いて真核細胞や個体のゲノムを配列特異的に切断し,細胞本来の修復機構を利用して,遺伝子のノックアウトやノックインを行うゲノム編集技術が開発された.しかしながら, CRISPR-Casには,1.分子量が大きくウイルスベクターに載せることが困難,2.CRISPR-Casは標的配列の下流にある2~7塩基からなるPAM配列を厳密に認識しており,Casをゲノム編集に用いる適用制限となっている,3.非特異的切断によるOff targetの問題など,現時点では医療応用に用いることは事実上不可能である.我々は,5生物種由来の大小様々なCas9について,ガイドRNA,標的DNAの4者複合体の結晶構造を1.7-2.5Åの高分解能で発表し,ガイドRNA依存的なDNA切断機構やPAM配列の認識機構を明らかにした.また,立体構造に基づいて,PAM配列認識特異性を変えることに成功し,ゲノム編集ツールとしての適用範囲を拡張することに成功した.
著者
濡木 理
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.725-730, 2014-11-01 (Released:2015-11-01)
参考文献数
6

MATEファミリーは,原核生物,古細菌,真核生物すべてに広く存在する膜タンパク質輸送体であり,ナトリウムイオンあるいはプロトンの濃度勾配を利用してさまざまな異物を細胞外へと排出することで,細胞の恒常性を維持している.そのため病原性細菌やがん細胞においては,薬剤を排出して薬効を低下させる薬剤耐性の一端を担うものであり,近代医療への脅威となっている.したがって,MATEによる薬剤輸送機構の解明および阻害剤の創出が長らく望まれてきた.しかし,MATEは,さまざまな低分子化合物を排出してしまうので,低分子化合物の阻害剤は薬効をもたないというジレンマがあった.今回,われわれは好熱古細菌由来MATEの単体および基質薬剤・阻害活性ペプチドとの複合体のX線結晶構造を高分解能で決定した.その結果,アスパラギン酸残基のプロトン化に伴って,TM1が大きく折れ曲がることで基質ポケットを縮小して基質を排出する機構を発見し,MATEの輸送機構について新たな仮説を提唱するとともに,ペプチド創薬の道を開いた.