- 著者
-
濡木 理
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.2, pp.123-127, 2018 (Released:2018-02-01)
- 参考文献数
- 6
2012年,細菌の獲得免疫機構に働くCRISPR-Casタンパク質が,ガイドRNA(crRNA, tracrRNA)を用いて真核細胞や個体のゲノムを配列特異的に切断し,細胞本来の修復機構を利用して,遺伝子のノックアウトやノックインを行うゲノム編集技術が開発された.しかしながら, CRISPR-Casには,1.分子量が大きくウイルスベクターに載せることが困難,2.CRISPR-Casは標的配列の下流にある2~7塩基からなるPAM配列を厳密に認識しており,Casをゲノム編集に用いる適用制限となっている,3.非特異的切断によるOff targetの問題など,現時点では医療応用に用いることは事実上不可能である.我々は,5生物種由来の大小様々なCas9について,ガイドRNA,標的DNAの4者複合体の結晶構造を1.7-2.5Åの高分解能で発表し,ガイドRNA依存的なDNA切断機構やPAM配列の認識機構を明らかにした.また,立体構造に基づいて,PAM配列認識特異性を変えることに成功し,ゲノム編集ツールとしての適用範囲を拡張することに成功した.