著者
鳥居 誠志 石岡 俊之 小池 祐士 濱口 豊太 中村 裕美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.654-662, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
23

我々は,脳卒中患者の排泄動作のうち,ズボンを上げる工程の練習方法を考案したいと考えた.脳卒中片麻痺者を対象に,その工程の自立群15名と,監視群7名のズボンを上げる工程中の足圧中心動揺を測定した.足圧中心動揺の速度や範囲を,自立群と監視群で比較したところ,監視群の左右方向への動揺範囲が,自立群の動揺範囲より有意に大きかった.監視群では,左右方向に大きい動揺が生じる結果,転倒の可能性があると推測された.それにより,生活場面の排泄動作に監視を要していると考えられた.この結果をもとに,本研究が提案する練習方法には,左右方向への重心動揺を制御する支援があげられた.
著者
濱口 豊太 金澤 素 福土 審
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-5, 2007 (Released:2014-07-03)
参考文献数
42

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)は脳腸相関の異常が病態の中心をなす疾患群である。IBSの病態は、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常で特徴づけられる。消化管知覚過敏の発生機序の解明に、脳腸ペプチド・免疫・粘膜微小炎症による消化管機能変化・遺伝子・学習・神経可塑性・脳内神経伝達物質およびヒトの心理社会的行動などから進歩が見られる。消化管への炎症や疼痛を伴う刺激が先行刺激となって内臓知覚過敏を発生させる機序の一つとしてあげられる一方で、腹痛や腹部不快感の二次的な増悪を心理ストレスが引き起こし、そのときの消化器症状が関連づけられている可能性がある。本稿は、消化管知覚過敏が発生するメカニズムとして考えられている消化管粘膜微小炎症後の消化管知覚過敏、繰り返される大腸伸展刺激後の内臓知覚と情動変化の視点から、ヒトの心理的背景と遺伝要因について概説する。