- 著者
-
藤本 智子
井上 梨紗子
横関 博雄
伊東 慶子
大嶋 雄一郎
柳下 武士
玉田 康彦
- 出版者
- 公益社団法人 日本皮膚科学会
- 雑誌
- 日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
- 巻号頁・発行日
- vol.123, no.3, pp.281-289, 2013-03-20 (Released:2014-10-30)
原発性手掌多汗症の中等症から重症(発汗量≧0.5 mg/cm2/min)の患者90例を対象に,20%塩化アルミニウム液・50%塩化アルミニウム液・プラセボの3群に無作為割付し,1日1~2回8週間の単純塗布を二重盲検下で行った.評価項目として発汗量・HDSS(Hyperhidrosis disease severity scale)・DLQI(Dermatology life quality index)を用い他覚的,自覚的な症状改善度を測定し治療経過中に診察と患者日誌を用いて副作用を集計した.結果85例がプロトコールを終了し,塩化アルミニウム液の外用群では濃度依存性に8週間後の発汗量の減少を認め,群間比較では治療8週間後の50%濃度群がプラセボ群と比較して統計学的に有意な(p<0.05)発汗量減少を認めた.患者の自覚症状であるHDSS,DLQIについては塩化アルミニウム液の外用群は2週間後から有意な(p<0.001)改善を認めたが,プラセボ群もHDSSでは4週間後から改善を認め(p<0.05),DLQIでは2週間後から有意な改善を認めた(p<0.01).以上の結果から原発性手掌多汗症に対する塩化アルミニウム液の外用療法の有効性を認めた.副作用として外用部位への刺激皮膚炎が濃度依存性に認められ,外用方法の指導と基剤の検討が今後必要であると考えた.一方塩化アルミニウムの血中濃度の上昇はみられず,体内への移行性は認めなかった.