著者
藤澤 隆一 高橋 宏明 大関 京子 田中 由美子 奥住 捷子 増田 道明
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.183-188, 2014 (Released:2014-08-05)
参考文献数
8

医療現場における手袋の使用は,接触感染防止の対策上有効かつ簡便な方法として奨励されている.一方,手袋は手の汚染を完全に防止するものではなく,不適切な使用により微生物の伝搬につながる可能性がある.本研究では,医療現場において日常的に使用する手袋着用の手指衛生教育を目的とした新たな実習を試みた.2008~2011年度に微生物学実習を受講した医学部学生を対象とした.手袋着用前の手指の汚染除去法の違いにより,学生を4群に分けた.それぞれ手指の汚染除去を行った後,手袋を装着し30分間作業を行った.手袋装着前および作業前後の手指雑菌をスタンプ法にて採取・培養し,手指の衛生状態を評価した.コロニー数の集計結果から,手袋着用前の手洗い・手指消毒により,手袋装着作業時の手指雑菌数が有意に減少した.芽胞形成菌では,クロルヘキシジングルコン酸塩スクラブを用いた手洗いが擦式アルコール製剤による手指消毒よりも優れていた.また,手袋を外した後の手指消毒は効果的であることが示された.実習の対象となる学生は年度により異なるが,得られた結果に年度間のバラツキは認められなかった.この方法は,手袋使用時の手指消毒のタイミングとその効果が視覚的に得られ,手指衛生に関する実践的な認識に寄与すると考えられた.
著者
青木 幸子 大竹 美登利 長田 光子 神山 久美 齋藤 美保子 田中 由美子 坪内 恭子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<br><br><目的><br>&nbsp;&nbsp; 2008年は「子どもの貧困元年」であるといわれる。それは子どもの貧困問題に関する政策論議が具体化したことに由来する。翌2009年の厚生労働省の調査によれば、子どもの貧困率は15.7%であり、約6人に1人の割合で貧困状態にあることが明らかになった。これはOECD調査においても「相対的貧困率」が加盟国34カ国中29位(ワースト6位)、「子どもの貧困率」は25位(ワースト10位)、「一人親家庭の子どもの貧困率」は33位(ワースト2位)という深刻な事態にあることを認識させた。さらに厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査の概況」によれば子どもの貧困率は16.3%を示し、確実に格差が拡大していく傾向を窺わせている。<br>&nbsp;&nbsp; 子どもの貧困は、学習面や心身の発達に影響を及ぼし、加えて経済的な理由から友人と同じ行動が取れないなど友人関係にもひずみをきたし、不登校や引きこもりの原因になっているともいわれている。また、経済的な理由から進学をあきらめざるを得ない者もおり、更なる格差を生み出す土壌ともなっている。このように現下の社会・経済状態は、貧困の連鎖を断ち切る抜本的な政策が求められている。<br>&nbsp;&nbsp; この政策のひとつに学校教育への期待がある。学校教育の一教科として生活の自立と共生を目標とする家庭科においては、生徒が貧困の連鎖について理解し、自己責任ではまかないきれない連鎖の経路を断ち切り、自らの人生を自己選択することができる力を育成するなど、たくましく生きる力を育んでいかなければならない。<br>&nbsp;&nbsp; そこで本研究では、貧困に対する理解、貧困に陥らないための知識と方法、不測の事態に備える力など、生活を創る主体としてたくましく生き抜く力を育てる家庭科の学習内容について提案することを最終目的に、まず高校生の生活実態や福祉制度への理解、将来の生活への意識を把握することを目的とする。<br><br><方法><br>1.&nbsp;調査の方法<br>調査対象;都立高等学校6校、有効回収数406票<br>調査時期;2015年1~3月<br>調査方法;家庭科教員に調査票の配布、回収を依頼した。<br>2.&nbsp;分析方法<br>調査対象校を4年生大学進学率の傾向の違いにより3群に分類し(80%以上をA群、21~79%をB群、20%以下をC群)、分析した。<br><br><結果と考察><br>1.&nbsp;&nbsp;高校生の日常生活の特徴として看過できない実態は、欠食率、栄養バランス、家庭の食卓状況の3点である。なかでもC群の欠食率がもっとも高く、とくに果物の摂取不足は80%以上であり、それは手作りの食事の摂取状況とも関連している。<br>2. アルバイトの経験については、アルバイトを禁止している学校がある一方で、アルバイトに精を出さざるをない状況の生徒もいる。とくにC群の生徒にアルバイト経験者が多い。<br>3. 授業以外の学習時間にも3群間には大きな差があり、通塾率との関連が推測される。また、ボランティア活動や地域での活動、家事手伝いについては3群間に顕著な差はなく、消極的な関与実態が明らかになった。<br>4.&nbsp;生活上のリスク管理に必要な福祉制度の項目に関しても、総体的に理解不足である。しかし、困難を克服し、希望は叶えられるとする将来の生活への見通しについてはおおむね肯定的に捉えている。 <br>5.&nbsp;以上の結果から、3群間での生徒の実態と意識を比較すると、C群の生徒に欠食率、アルバイト経験率が高く、将来の生活への経済的・職業的不安が強い傾向が明らかになった。
著者
田中 由美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<b>【背景と目的】</b><br><br>2005年、OECDが『DeSeCo』プロジェクトの中で提案した3つのキーコンピテンシーにより、日本の教育政策における学力の捉え方に変容が見られたといわれる。これは、今日的な教育目標とされる能力概念を示しており、社会で必要とされ、これからの社会で生きる子どもたちに身につけさせたい能力である。<br><br>一方、社会問題と捉えられる状況の渦中にいる子どもたちには、その状況から救済する視点での教育も考えなければならない。例えば、ネット・スマホ依存症、貧困などである。これらに陥らない予防策を学校教育の内容に導入することは、人生をよりよく生きていくために必要である。<br><br>ところで、家庭科教育での目標・学びと、今日的な教育目標は重なる部分が多い。言い換えれば、家庭科での学びを有意義なものにすることで、社会で生きるために必要な能力の多くを培えるということである。そこで、本研究の目的は、今日的な教育目標と、社会問題の予防策という両面からアプローチした教育内容・教材を提案することとした。<br><br><b>【方法】</b><br><br>1.OECD(2005) DeSeCoから、キーコンピテンシーのカテゴリー及び下位カテゴリーの抽出<br><br>2.青少年のインターネット利用環境(状況)実態調査及び、ネット・スマホ依存症に関する先行研究から、その原因の抽出<br><br>3.貧困の連鎖を回避する要因の抽出<br><br>4.2.3.を予防するための手法として認知行動療法等からの知見を援用し、予防に留まらずキーコンピテンシー育成を目指した教育内容・教材の考案<b></b><br><br><b>【結果】</b><br><br>青少年のインターネット利用環境(状況)実態調査より「規則正しい生活がなされていない」という実態が窺えた。 また、先行研究として、日本の大学生のインターネット依存傾向測定尺度作成を試みた鄭は、ネット依存傾向の問題点を分類すると①「欲求抑制・自制心の欠如」、②「時間管理能力の不足」、③「コミュニケーションスキルの不足」の3点とみなすことができる。<br><br>これらを解消する手法として「認知行動療法」を援用することを考えた。その手法の中での「気づき」をきっかけに「発見」「思考」「実践」「省察」「修正」と発展的拡張を可能にし、より良い成長、自己実現が可能になる。<br><br>また、適切で有意義な社会生活を送るには、自己のありのままの感情や欲求を自制(コントロール)することが必要であり、その第一歩は、それらを客観的にとらえ、望ましい状況・感情と比較・意識(モニター)することを要する。この一連の思考様式は、メタ認知である。<br><br> ネット・スマホ依存症、及び貧困の連鎖を予防するだけでなく、生活上の思考様式・行動様式をより自律性の高いものとするため、それを身につけた人材育成を目指した教育内容・教材に取り入れることを考え、下記項目を設定した。<br><br>1.生活時間を記録し、振り返り、気づき・満足度を記入する。<br><br>2.上記1.に改善点・向上点(できるようになったこと)も記入させ、自己効力感向上とモチベーション保持を行う。<br><br>3.やらなければならないことをリストアップし、優先順位を決め、時間を逆算し、予定を立てるスキルを身につけさせる。<br><br>4.予定を立てる際、上手くできたとき、できなかった時をイメージするトレーニングを行い、悪循環を自分で断ち切れる自己管理能力を身につけさせる。<br><br>5.他者とのコミュニケーションを行う際、ストレスを感じにくくするための主張行動スキルを身につけさせる。<br><br>今後は、本研究において作成した教材を教育現場において実践し、教育効果の測定を行う。<br><br>
著者
田中 由美子
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.20-30, 2004-03-29 (Released:2010-06-15)
参考文献数
21

本論文の主目的は、国際協力におけるジェンダー主流化の概念を明確にし、総合的なジェンダー政策分析および評価の手法を探ることである。この分析評価手法は、我が国の国際協力および他の国際援助機関においても十分に検証されておらず、先行事例研究に基づく試みが始まったばかりである。ジェンダー主流化とは、ジェンダーと開発 (GAD) を開発の重点課題とし、ジェンダー平等を進めるための包括的取組みであり、ジェンダー平等の視点を全ての政策・施策・事業の企画立案段階から組み込んでいくことをいう。ジェンダー平等視点に立って計画・実施・モニタリング・評価を行う過程であり、政策等のジェンダー分析や男女影響評価の実施が前提となる。