著者
田中 雅子
出版者
経営哲学学会
雑誌
経営哲学 (ISSN:18843476)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.19-36, 2022-01-31 (Released:2022-04-08)
参考文献数
31

経営理念と経営者の関係は論じられて久しい。その大半は経営者が哲学を持ち、それを表明することの意義や、浸透に果たす役割について考察されている。反面、経営者が理念を自分のものにするプロセスを検討したものは皆無に近く、数少ない研究も回顧的である。この問題意識を背景に、経営者として「プロセス真っただ中」にいるオーナー企業の後継者である三代目を対象に、彼の現在進行形で進んでいる理念を理解するプロセスを検討したいと考えた。理論的基礎に据えたのは、Lave and Wenger(1991)の「正統的周辺参加」である。この理論は5つの伝統的徒弟制にヒントを得た学習理論であり、周辺から十全へと移行する際にアイデンティティの増大が不可欠であるとされている。そこでその形成がより詳細に説明されている「断酒中のアルコール依存症者の徒弟制」の事例に重きをおいた。そしてこれらに基づき分析を行うことで、三代目の理念の理解を明らかにすると同時に、当該理論に新解釈を提供することを目的とした。結果、理論枠と同様に、組織における人・人工物といった「構造化された実践共同体」の存在や「アイデンティティ」が、三代目の理念の理解にとり重要であることが明らかになったが、追加点も導出できた。それはアイデンティティを増幅させるものは、行動以上に状況であることや、仕事や業務につく以前から周辺参加は始まっているという点であり、これらは本稿の新解釈でもある。また、理念浸透のレベルが異なる発言が出たことは、大変興味深い発見事実であった。本稿はそれを、経営者としての意識の高さと経験の間に乖離があるためと捉え、三代目の理念の理解は道半ばであると結論づけた。今後も継続して調査を実施し、レベルの差異が何に起因し、どのようなプロセスを経て十全の域に達するのかを明らかにすることが求められる。
著者
小田 尚子 田中 雅子 別府 道子
出版者
東京家政学院大学
雑誌
東京家政学院大学紀要 (ISSN:02866277)
巻号頁・発行日
no.22, pp.p41-44, 1982-12
被引用文献数
1

l-ペリラアルデヒドの抗菌性を,細菌5種類,糸状菌3種類を用いて,食塩との関係で検討し,更に,細菌についてはpHとの関係も併せて検討したところ,結果は以下のよぅであった。細菌においては(1)各菌におけるl-ペリラアルデヒドの生育阻害を最小生育阻止濃度で求めたところ,1600-1700ppmから3000ppm以上であった。(2)食塩とl-ペリラアルデヒドを同時に使用した場合は,併用効果がみられた。しかし,菌種によってその効果の程度に違いがみられ,S. aureusでは,効果は少なかったが,P. ovalisと,K. pneumoniaeでは顕著な効果がみられた。(3)l-ペリラアルデヒドの生育阻害作用は,水素イオン濃度の高い条件(pH5)では,より効果的になった。(4)いずれの条件でも,生育を阻害するためには,高濃度のl-ペリラアルデヒドが必要であり,実用性は期待出来ないように思われた。糸状菌においては(1)l-ペリラアルデヒドは,750ppmの濃度において,5〜7日の培養期間中,各菌の生育をほぼ完全に阻止した。(2)食塩との併用は,相剰的な効果があったが,耐塩性のP. chrysogenumにおいて,より顕著に現われた。(3)200ppm以下のl-ペリラアルデヒド濃度においても生育の阻害がみられたことと,(2)から,ある程度の実用性が期待出来るものと思われた。
著者
田中 雅子
出版者
国際ジェンダー学会
雑誌
国際ジェンダー学会誌 (ISSN:13487337)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.64-85, 2020 (Released:2021-12-25)
参考文献数
31

日本で暮らす移民女性のうち増加が著しい留学生や技能実習生の多くは,15歳から49歳までの生殖年齢層である。しかし,その中には「妊娠してはならない」,「妊娠したら帰国させる」と警告を受けている人もいる。解雇や退学処分を恐れて,自己服薬による中絶を試みたり,行き場がなく在留資格を失った状態で出産したり,帰国後も子どもの養育上の困難に直面するなど,彼女たちの心身の負担は大きい。本研究は,文献調査のほか支援者と当事者への聞き取りから,留学生と技能実習生の妊娠をめぐる課題を明らかにすることを目的とする。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)や移民に関する国際規範と日本政府の施策には乖離がある。移民女性のうち,技能実習生は労働関係の法令で守られるが,その運用は限定的である。留学生が妊娠し,教職員に早めに相談しないで欠席が続くと退学に追い込まれることがある。妊娠により休学した留学生を在留資格の取り消しから除外することも明文化されていない。彼女たちが妊娠しやすい背景のひとつに,出身国と日本で用いられている避妊の選択肢の違いがある。移民女性のSRHRをめぐる予備的考察から,日本で暮らす女性全般に共通する課題を探り,今後求められる調査を展望する。
著者
伊木 れい佳 齋藤 恵美子 和田 伸子 高田 寛仁 四宮 真利子 嶋田 雅俊 田中 雅子 吉住 智奈美 阪井 宏彰 片岡 裕貴
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.93-98, 2021 (Released:2021-03-22)
参考文献数
17

【背景と目的】国内外を通し苦痛のスクリーニングの効果を検証した研究は少ない.今回兵庫県立尼崎総合医療センターにて化学療法導入時にスクリーニングを実施し,緩和ケア介入件数が増加するかを検討した.【方法】2018年2月から2019年1月に化学療法同意書を発行された患者を対象にスクリーニングを実施した.回帰不連続デザインを用いて導入前後の緩和ケアチーム介入件数の変化を評価した.スクリーニング回収率を算出し,回収に影響した因子についてロジスティック回帰分析にて評価した.【結果】チーム介入件数の変化の推定値は3.32件/月(95%CI: −3.19〜9.82)であった.回収率は月平均35.2(±7.94)%であり,回収有に関して診療科による差がみられた.【結論】当院で導入したスクリーニングでは緩和ケア介入件数の有意な増加は得られなかった.
著者
渡邉 光一 岡田 正大 田中 雅子 北居 明
出版者
関東学院大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

経営理念と企業パフォーマンスとの関係を考える上で、経営理念とその浸透・実践・実現プロセス(マネジメントプロセス)の相互作用に踏み込み、「経営理念・マネジメントプロセス・企業パフォーマンスを統合した因果関係モデル」を構築していくため、本研究では以下のような研究目的を掲げた。[1]経営理念のグループ分類とそのキーワード・該当企業の同定(経営理念の言説への数理的分析)。[2]マネジメントプロセスの測定指標及びグループ分類の同定(実務家向けアンケートの設計・分析)。[3]「経営理念とマネジメントプロセスの相互作用が企業パフォーマンスに影響を与える因果関係モデル」の解明(企業理念キーワード・アンケートデータ・財務データの総合分析)平成18年度にマネジメントプロセスの構成要素の体系化と測定指標の同定を行い、それらについて約250社の調査データを収集した。今年度は、該当する企業の経営理念のテキストデータを最新のものに更新し、それらを活用して以下の研究を進捗させた。上記[1]については、収集・検分した企業の経営理念のテキストデータを、最先端のテキストマイニング技術を活用して分析し、経営理念のグループ分類とそのキーワード及び該当する具体的企業の同定を行なった。上記[2]については、マネジメントプロセスについての調査データを説明変数とし、また財務データや測定指標のうちのモチベーション指標を被説明とした分析を行う。分析手法としては、共分散構造分析などの線形的な解析と、非線形解析の双方を実施し、理論構築におけるそれぞれのメリットとデメリットを実データに基づいて明らかにした。上記[3]については、前年度に検討した上記[1][2]のデータを統合する分析枠組みにより、「経営理念とマネジメントプロセスの相互作用が企業パフォーマンスに影響を与える因果関係モデル」の解明を行なった。