著者
烏谷 竜哉 黒木 俊郎 大谷 勝実 山口 誠一 佐々木 美江 齊藤 志保子 藤田 雅弘 杉山 寛治 中嶋 洋 村上 光一 田栗 利紹 藏元 強 倉 文明 八木田 健司 泉山 信司 前川 純子 山崎 利雄 縣 邦雄 井上 博雄
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.36-44, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
3 6

2005 年6 月~2006 年12 月の期間,全国の循環系を持たない掛け流し式温泉182 施設を対象に,レジオネラ属菌等の病原微生物汚染調査を行い,29.5%(119/403)の試料からレジオネラ属菌を検出した.採取地点別の検出率は浴槽が39.4%と最も高く,貯湯槽23.8%,湯口22.3%,源泉8.3%と続いた.陽性試料の平均菌数(幾何平均値)は66CFU/100mL で,採取地点による有意差は認められなかったが,菌数の最高値は源泉,貯湯槽,湯口でそれぞれ180,670,4,000CFU/100mL と増加し,浴槽では6,800CFU/100mL に達した.陽性試料の84.7%からLegionella pneumophila が分離され,血清群(SG)別ではSG 1,5,6 がそれぞれ22,21,22%と同程度の検出率であった.レジオネラ属菌の汚染に関与する構造設備及び保守管理の特徴を明らかにするため,浴槽と湯口上流側とに分けて,多重ロジスティック回帰分析を行った.浴槽での汚染リスクは,湯口水がレジオネラに汚染されている場合(OR=6.98,95%CI=2.14~22.8)及び浴槽容量が5m3 以上の場合(OR=2.74,95%CI=1.28~5.89)に高く,pH 6.0未満(OR=0.12,95%CI=0.02~0.63)では低下した.同様に,湯口上流ではpH 6.0未満(OR=0.06,95%CI=0.01~0.48)及び55℃以上(OR=0.10,95%CI=0.01~0.77)でレジオネラ汚染を抑制した.レジオネラ属菌以外の病原微生物として抗酸菌,大腸菌,緑膿菌及び黄色ブドウ球菌を検査し,汚染の実態を明らかにした.
著者
松本 浩毅 田栗 利紹 手嶋 隆洋 小山 秀一
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-11, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
11

Malassezia pachydermatisとStaphylococcus intermediusに対する植物ポリフェノールの抗菌活性を調査した。ポリフェノールはエピガロカテキン,エピカテキンガレート,没食子酸エピガロカテキン,カスタラギン,カテキン,テアフラビン,テアルビジン,プロシアニジン,プロデルフィニジン,ミリシトリン,ルチンそしてレスベラトロールを用いた。これらポリフェノールの最小発育阻止濃度(MIC)は寒天平板培地法により求めた。M. pachydermatisとS. intermediusに対するMICが最も低値であったのはカスタラギン(それぞれ100 μg/mlと50 μg/ml)であった。以上の結果から,カスタラギンはM. pachydermatisとS. intermediusグループが原因となるイヌの皮膚疾患の治療薬として効果的である可能性が示された。
著者
辻村 和也 吉村 裕紀 田栗 利紹 本村 秀章
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.253-259, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
31
被引用文献数
7

2015年11月長崎県において,腐肉食性巻貝であるキンシバイ(Nassarius(Alectrion)glans)喫食による食中毒事例が発生した.本食中毒事例は,国内でも3例目の珍しい事例であり,知見が乏しい.そこで行政および医療機関の協力のもと,経日的に採取された患者血清および尿中のテトロドトキシン(TTX)濃度推移と巻貝中の毒成分解析を行った.LC-QqQ-MS/MSによるTTX分析の結果,調理済巻貝の食品残品,患者血清および尿のすべてからTTXが検出された.食品残品試料では,1個体でヒトの致死量に達する量のTTXを含有するものもあった(食品残品試料2:2.5mg/individual).また,患者血清においては,発症日翌日に最高濃度42.8ng/mLを示し,2日分の尿中排泄量は2.4mgと試算された.以上の結果から,本事例では患者は少なくとも致死量相当のTTXを摂取したと推察された.また,キンシバイの毒性成分解析のため,TTX定量分析に加え,LC-QTOFMS/MSによるTTX類縁体探索およびマウスバイオアッセイによる総毒量算出を行った.その結果,キンシバイの総毒量はTTX単体でないことが明らかになり,残余毒力の一部分はTTX類縁体である11-oxoTTXが占めることが推察された.以上の結果,本事例を含めキンシバイは過去の事例と同様に,食品衛生上極めて危険な種であると考えられた.