著者
田井中 秀嗣 織田 肇 中村 清一 田淵 武夫 野田 哲朗 三戸 秀樹
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.241-249, 1998-11-20
参考文献数
22

阪神淡路大震災における勤労者のストレス-家屋被害別にみた1年半後のストレス症状-:田井中秀嗣ほか.大阪府立公衆衛生研究所労働衛生部-阪神淡路大震災被災地域に職場のあった勤労者を対象に, 震災1年半後に, 被災実態とストレス関連症状の有無を尋ねる質問紙調査を実施した.製造業, 病院, 地方公務員, 交通・港湾関連の勤労者3, 015名から回収(回収率40%)した質問票を分析した結果, ストレス関連諸症状の訴えは家屋被害が大きい群ほど高く, また, それら諸症状の訴えは時間経過に伴い減少するが, 家屋被害の大きい群では1年半後にも高い訴えを示す.心的外傷後ストレス障害(PTSD: Post Traumatic Stress Disorder)様の症状を示す者の比率を男性勤労者についてみると「家屋被害なし, あるいは軽微であった群」では, 震災直後21.8%, 3ケ月後12.9%, 1年半後3.7%であり, 直後にはかなりみられるが, 1年半後は少ない, 他方「家屋被害が大きく元の家に住むことができなかった群」では, 直後48.0%, 3ケ月後34.2%, 1年半後12.6%であり, 直後も多く, かつ, 1年半後もかなり多い.持病の再発・悪化を訴える者の比率は震災直後頃よりも3ケ月後頃に高く, 1年半後でもほとんど減少せずそのまま残る.職業上の問題としては, 失業不安, 震災後の繁忙と過労, 無理な出勤, 通勤の不便, 危険を感じながらの作業, 収入減, 勤務地の変更・出向が訴えられた.
著者
熊谷 信二 田井中 秀嗣 宮島 啓子 宮野 直子 小坂 淳子 田淵 武夫 赤阪 進 小坂 博 吉田 仁 冨岡 公子 織田 肇
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.131-138, 2005 (Released:2006-01-05)
参考文献数
32
被引用文献数
18 10

高齢者介護施設の介護労働者における腰部負担を評価するために,30秒スナップリーディング法を用いて,6名の介護労働者の作業内容および作業姿勢を調査した.また,傾斜角モニターを用いて,上体傾斜角の調査も行った.作業内容については,「入浴・洗面関連」が勤務時間の22.5%,「食事関連」が21.1%を占めていた.「排泄介助」「移動・移乗介助」および「シーツ交換」はそれぞれ9.3%,8.7%および8.3%であった.介助作業を合計すると43.7%であった.作業姿勢については,「立位」が勤務時間の36.1%,「前傾」が29.5%を占めていた.腰部負担のある3姿勢(「前傾」「しゃがみ」「膝つき」)を合計すると39.0%を占めていた.上体傾斜角が20度以上の時間帯は45.7%に及んでいた.「入浴関連」「シーツ交換」および「排泄介助」における腰部負担姿勢はそれぞれ68.3%,58.2%および49.6%を占めており,これらの作業は腰部への負担がかなり大きいものと考えられた.
著者
冨岡 公子 熊谷 信二 小坂 博 吉田 仁 田淵 武夫 小坂 淳子 新井 康友
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.49-55, 2006-03-20
被引用文献数
9

特別養護老人ホームにおける介護機器導入の現状に関する調査報告-大阪府内の新設施設の訪問調査から-:冨岡公子ほか.大阪府立公衆衛生研究所生活衛生課-要介護者そして介護労働者の数は,年々増加している.2000年4月から,介護保険法が施行された.介護機器については,介護保険法が施行されてから,社会的に注目されるようになったが,介護機器の導入状況については把握されていない.そこで,介護施設における介護機器の現状を把握するために,現場調査と聞き取り調査を行った.対象は,2002年4月以降に開設された大阪府内の特別養護老人ホーム10施設である.調査対象施設は,平均入所者数79人,平均介護度3.52,平均介護職員数28.3人であった.介護機器に関しては,すべての施設で何らかの入浴装置が導入されていた.入浴装置の種類は,順送式が9施設,バスチェア型が8施設であった.バスチェア型は,機械浴槽に入るタイプが6施設,一般浴槽に入るタイプが6施設であった.その一方で,すべての施設において,「移乗は人の手で行うもの」という方針であり,リフト,移乗器,回転盤の移乗用介護機器は導入されていなかった.排泄介助については,オムツ交換では作業場となる,ベッドの高さ調節が実践出来ていなかった.日本の標準型車椅子はアームレストが固定式であり,トイレ介助では,車椅子と便座間の移乗の障壁となっていた.すべての施設で,介護の基本は人の手で行うもの,という方針であり,特に,移乗に関するリスク認識が弱かった.介護負担軽減のための介護機器導入という話はほとんど聞かれなかった.これらより,介護負担軽減や介護労働者の健康を守るという視点にたった,介護に対する意識改革が必要と考えられる.