著者
冨岡 公子 熊谷 信二
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.195-203, 2005 (Released:2006-01-05)
参考文献数
75
被引用文献数
11 9

欧米では,抗がん剤を取り扱う医療従事者の職業性曝露に関する危険性について,1970年後半から警告的内容の報告がなされ,1980年代から1990年にかけて安全な抗がん剤の取扱いに関するガイドラインが制定されている.ガイドラインによって,個人保護具や作業環境が改善されてきている.また,職業性抗がん剤曝露の健康影響に関する調査・研究も盛んに行われている.日本においては,1991年に,日本病院薬剤師会がガイドラインを制定し,それ以降,抗がん剤の安全な取扱いに対する認識が看護師を中心に関心が持たれるようになったが,医療現場はあまり変化してきていない.産業衛生の分野に限ってみると,抗がん剤の安全な取扱いに対する記事や研究は,ほとんど見あたらない.抗がん剤を取り扱う医療従事者の職業性曝露に関する危険性についてはいまだに不明な点が多い.しかし,医療従事者における抗がん剤曝露の低減は,産業衛生上の重要な課題である.日本においては,抗がん剤の取扱いに適切な保護具や作業環境を普及させ,抗がん剤の安全な取扱いに関して検討する必要がある.また,欧米同様に,国家レベルの実効性や強制力が付与された抗がん剤の安全な取扱い指針が策定されることが望まれる.
著者
平田 したう 立川 隆治 福島 典之 夜陣 紘治 松島 隆浩 熊谷 信二 森田 栄伸
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement3, pp.195-200, 1997-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
8

上気道感染症に対するネブライザー療法は広く行われている保存的療法の一つであるが, 室内環境や, 医療従事者への影響についての検討は極めて少ない。今回我々は, ネブライザー施行中のネブライザー粒子の飛散状況や換気扇の効果を検討した。医療従事者の血中ネブライザー薬液濃度は, 検出できなかったが, ネブライザー施行中にネブライザー粒子がかなり飛散するのが肉眼的に確認された。また密閉空間においてネブライザーを噴出させ, ネブライザー薬液を採取し測定したところ, ネブライザー装置と同じ高さの方が50cm上方よりも約10倍多く検出され, 換気扇を使用することにより約5分の1に減少した。さらに実際の外来診療室では, 換気扇を作動させなかった日にはネブライザー装置から7m離れた位置でもネブライザー薬液が検出され, ネブライザー装置の近くでは, 換気扇を使用してもあまり効果が得られなかった。今回の検討から, ネブライザーを施行する際換気扇を使用することは当然と考えられるが, 現状よりも強力なドラフト装置や, フードを低く設定する, あるいは複数の箇所に設置するなどの必要性が示唆された。
著者
吉田 仁 甲田 茂樹 吉田 俊明 西田 升三 熊谷 信二
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.145-155, 2011 (Released:2012-04-25)
参考文献数
25
被引用文献数
4 4

This study was conducted to develop a tool for evaluating the work environment for the preparation of antineoplasticdrugs and identify issues in safety assessment.We prepared a checklist for the safe handling of antineoplastic drugs,whichincluded the following items : A) safety equipment and its maintenance,B) training and training documentation,C) devicesfor ensuring safety,D) personal protective equipment and E) emergency care.Further,we examined relationships betweenattainment levels for checklist items and occupational contamination levels for cyclophosphamide (CPA),fluorouracil (5FU),gemcitabine (GEM) and platinum-containing drugs (Pt) based on wipe samples from equipment in the preparationroom (wipe test).Next,pharmacists in a particular hospital were asked to improve their work environment using the checklist.To evaluate their improvements,we collected wipe samples and one-day urine samples from them,before and afterthey took improvement measures.The results showed that an increase in safety attainment scores was reflected in a decrease in CPA,GEM and Pt contaminationlevels in the wipe test,as well as one in urinary levels of CPA.However,the 5FU level in the wipe test increased,probably due to a 6-fold increase in the amount of 5FU prepared,compared to before the improvement measures weretaken.From these findings,we concluded that the checklist would be useful for improving the hospital work environment.
著者
宮島 啓子 吉田 仁 熊谷 信二
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.74-74, 2010 (Released:2010-04-08)
参考文献数
17
被引用文献数
5 8

内視鏡消毒従事者におけるオルトフタルアルデヒドへの曝露状況:宮島啓子ほか.大阪府立公衆衛生研究所衛生化学部生活環境課―目的と方法:最近,内視鏡消毒剤として,グルタルアルデヒドの代替品としてオルトフタルアルデヒド(OPA)の使用が増えてきている.我々は,消毒従事者のOPA曝露状況と健康影響を明らかにするため,内視鏡洗浄室17ヶ所において作業環境調査と質問紙調査を行った.これらの内視鏡洗浄室には,スコープの消毒に浸漬槽を用いる9ヶ所の手動洗浄室と自動洗浄機を用いる8ヶ所の自動洗浄室がある. 結果:スコープ消毒時のOPA曝露濃度は,自動群(中央値:0.35 ppb,範囲:ND-0.69 ppb)と比較し,手動群(中央値:1.43 ppb,範囲:ND-5.37 ppb)で有意に高かった.同様に,消毒液交換時も,自動群(中央値:0.46ppb,範囲:ND-1.35 ppb)よりも手動群(中央値:2.58ppb,範囲:0.92-10.0 ppb)の方が有意に高かった.消毒従事者の勤務時間中の平均曝露濃度は,手動群では0.33-1.15ppb(中央値0.66ppb),自動群では0.13-1.28ppb(中央値0.33 ppb)であり,手動群でOPA曝露が高い傾向が見られた.OPA製剤のみを使用していた女性の消毒従事者80人における消毒作業に関連した自覚症状愁訴率は,皮膚症状10%,眼症状9%,呼吸器症状16%,頭痛3%であった. 考察と結論:これらの結果は,消毒従事者のOPA曝露レベルを低減するために,自動洗浄機導入が望ましいことを示唆している. (産衛誌2010; 52: 74-80)
著者
毛利 一平 小川 康恭 甲田 茂樹 熊谷 信二
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所(産業医学総合研究所)
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

1.清掃作業者を対象としたコホートの構築全日本自治団体労働組合の協力を得、全国の清掃労働者に対してコホート調査への参加協力を呼びかけた。コホート構築に必要な個人情報の収集(ベースライン調査)に、ごみ焼却炉での経験を有する者(曝露群)2,866名、ごみ収集作業者(非曝露群)6,239名の協力を得た。発がんリスクについては早期の評価を目指し、退職者を対象としたコホートの構築を試みたが、個人情報保護にかかわる社会環境の変化もあり、実現は困難であった。2.ごみ焼却作業におけるダイオキシン類へのばく露の評価全コホートを対象に、個々のダイオキシン類への曝露を、血液試料の分析により客観的に評価することは困難である。このため、作業内容や従事期間などの代理指標による曝露評価が必要であった。ベースライン調査において、清掃職場での職歴と飛灰に接触する頻度を、自記式調査票によって記録した。また、58人のごみ焼却炉作業員を対象に代理指標による曝露評価と血中ダイオキシン類濃度の相関を検討したところ、曝露期間(飛灰に曝露する作業に従事した期間の総和)と血中HpCDF濃度(PCDD/DFの異性体の一つ)に相関が認められた。3.がん死亡リスクの評価研究期間内に構築したコホートはすべて現役の労働者であり、労働に伴うがん死亡リスクを評価するには、今後さらに10年以上の追跡期間が必要である。4.児の性比への影響生殖障害の指標として、児の性比を検討した。複数の曝露代理指標を用いて解析した結果、統計学的に有意ではなかったが曝露期間が長いほど女児の比率が多くなる傾向を認めた。この傾向は、母親の出産経験、出生時における父親の年齢、出生年を調整しても変わらなかった。ただし、最も曝露期間が短い群で非曝露群よりも男児が多い結果となり、飛灰曝露と子供の性比に関連があるとするには根拠が弱く、現段階で明確な結論は得られなかった。
著者
熊谷 信二 車谷 典男
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2007年に、旧石綿工場の周辺住民1907人の参加を得て後向きコホート調査を実施したが、本調査では観察期間を2012年12月まで延長して死亡状況を観察した。そして推定石綿濃度に基づき、対象者を4群に分類して、肺がん死亡状況を検討した結果、石綿濃度がもっとも高い地区では、職業性石綿曝露がない肺がん死亡者は男性9人および女性4人であり、標準化死亡比(日本の一般人と比較して何倍かの指標)はそれぞれ2.40(95%信頼区間1.10-4.55)、3.27(同0.89-8.39)となり、男性では統計学的に有意であった。この結果により、周辺住民の肺がん死亡リスクが上昇していることが示唆された。
著者
冨岡 公子 名取 雄司 熊谷 信二 車谷 典男
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アスベスト曝露による長期健康影響を検討する目的で、某造船所でアスベスト曝露を伴う作業に従事していた元労働者を対象とした歴史的コホート研究を1996年に実施した(Ind Health 1999,37,9-17)。今回、その後の追跡調査を行なった。その結果、今回の追跡調査でも、先行研究同様に、アスベスト曝露に関連している肺癌および呼吸器系疾患の有意な過剰死亡リスクを再確認した。しかし、中皮腫の新たな発生はなく、喉頭癌については発生がなかった。今後、さらに追跡を続け、本コホートの最終的な死亡リスク評価を試みる予定である。
著者
冨岡 公子 熊谷 信二 小坂 博 吉田 仁 田淵 武夫 小坂 淳子 新井 康友
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.49-55, 2006-03-20
被引用文献数
9

特別養護老人ホームにおける介護機器導入の現状に関する調査報告-大阪府内の新設施設の訪問調査から-:冨岡公子ほか.大阪府立公衆衛生研究所生活衛生課-要介護者そして介護労働者の数は,年々増加している.2000年4月から,介護保険法が施行された.介護機器については,介護保険法が施行されてから,社会的に注目されるようになったが,介護機器の導入状況については把握されていない.そこで,介護施設における介護機器の現状を把握するために,現場調査と聞き取り調査を行った.対象は,2002年4月以降に開設された大阪府内の特別養護老人ホーム10施設である.調査対象施設は,平均入所者数79人,平均介護度3.52,平均介護職員数28.3人であった.介護機器に関しては,すべての施設で何らかの入浴装置が導入されていた.入浴装置の種類は,順送式が9施設,バスチェア型が8施設であった.バスチェア型は,機械浴槽に入るタイプが6施設,一般浴槽に入るタイプが6施設であった.その一方で,すべての施設において,「移乗は人の手で行うもの」という方針であり,リフト,移乗器,回転盤の移乗用介護機器は導入されていなかった.排泄介助については,オムツ交換では作業場となる,ベッドの高さ調節が実践出来ていなかった.日本の標準型車椅子はアームレストが固定式であり,トイレ介助では,車椅子と便座間の移乗の障壁となっていた.すべての施設で,介護の基本は人の手で行うもの,という方針であり,特に,移乗に関するリスク認識が弱かった.介護負担軽減のための介護機器導入という話はほとんど聞かれなかった.これらより,介護負担軽減や介護労働者の健康を守るという視点にたった,介護に対する意識改革が必要と考えられる.
著者
平田 衛 熊谷 信二 田渕 武夫 田井中 秀嗣 安藤 剛 織田 肇
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.190-201, 1999-11-20
被引用文献数
11

小規模事業所における産業保健サービスの実態を明らかにするために,大阪市に隣接する市の一部地域765の小規模事業所から回収された質問紙(回収率69.3%)を解析した.1∼4人事業所は358(46.8%),5∼9人事業所は203(26.5%),10∼29人事業所は163(21.3%),30∼49人事業所は41(5.4%)であり,主な業種は,製造業(374, 48.9%),卸小売飲食業(153, 20.0%),サービス業(132, 17.3%),建設業(72, 9.4%)であった.健康診断は47.7%でおこなわれ,それを実施しない理由は「時間がない」(不実施事業所の33.3%),「従業員が受診を望まない」(28.1%)であった.健康増進活動は29.2%の事業所でおこなわれていた.小規模事業所が望む産業保健活動として,健康診断(59.0%),健康増進(36.5%),メンタルヘルス対策(25.9%),労使への情報提供(25.5%)が挙げられた.財政的支援および経済的誘導策が各々46.4%,28.8%の小規模事業所から希望があった.地域産業保健センターはあまり知られていない(8.2%)が,健康診断(48.4%),情報サービス(37.5%),作業方法の評価および改善の助言(19.8%),環境測定(12.4%)の希望があった.