著者
中村 禎子 森田 茂樹 奥 恒行 田辺 賢一 大曲 勝久 中山 敏幸
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

加齢に伴い生理機能や認知機能障害が発症し、その要因の1つに酸化ストレスの影響が考えられる。水素ガスは抗酸化作用を示す物質である。難消化性糖質を経口摂取すると腸内細菌がこれを代謝して水素ガスが産生され、ガスは血流を介して肝臓および末梢組織へ運搬される。申請者らは、難消化性糖質経口摂取による腸内細菌由来内因性水素ガスの抗酸化作用を介して、疾病の発症あるいは重症化が遅延するという仮説を立て、これを検証した。その結果、過剰鉄による肝障害モデル動物および老化促進モデル動物において、難消化性糖質経口摂取による発症遅延ならびに重症化遅延が観察され、その要因として腸内細菌由来水素ガスの関連性が示唆された。
著者
中村 禎子 田辺 賢一 中山 敏幸 奥 恒行
出版者
日本応用糖質科学会
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.124-128, 2018 (Released:2018-08-22)

我々は,腸内細菌が難消化吸収性糖質から産生する水素ガスに着目し,腸内細菌由来水素ガスは,吸入などによる水素ガスと同様の抗酸化作用があり,疾病の発症遅延や重症化予防に寄与するという仮説をたて,実験動物を用いて検証してきた。老化促進モデルマウスを難消化吸収性糖質含有飼料で長期間飼育し,学習・記憶障害を発症するSAMP8特有の症状発症と重症化の遅延を観察した。Passive avoidance testの結果では,フラクトオリゴ糖(FOS)5%含有飼料群の成績が対照飼料群に比較して有意に良好で,学習・記憶障害の発症が遅延した。FOS群では水素ガス体外排出が有意に高く,老化度得点,酸化ストレスや炎症の関連指標は有意に低値を示した。また,鉄過剰投与による肝障害モデルラットをFOS含有飼料で飼育した実験では,血液中のALTならびに酸化度は有意に低値を示し,肝障害の改善や発症遅延が観察された。以上の結果より,難消化吸収性糖質継続的摂取は,生体内水素ガス濃度をある程度高く維持し,疾病予防や重症化遅延に寄与している可能性がある。しかし,その機序については,今後の検討が必要である。
著者
奥 恒行 田辺 賢一 渡邊 有希 尾野 春子 成瀬 真理 中村 禎子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.233-240, 2007-10-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
22
被引用文献数
4 6

本研究ではフラクトオリゴ糖 (FOS), ラクチュロース (LAT), ガラクトシルスクロース (GS) およびイソマルトオリゴ糖 (IMO) を用いて難消化性オリゴ糖の性状の違いがCaならびにMg代謝に及ぼす影響を比較・検討した。飼料組成は各オリゴ糖10%添加飼料とし, 対照にはスクロースを用いた。Wistar系雄ラット (3週齢) を1群6匹で44日間個別飼育し, 6週間後に出納実験を行った。なお, 給餌量は同一になるように軽い制限給餌とした。CaおよびMgは原子吸光法により測定した。尿中デオキシピリジノリン (DPD) はEIA法を用いて測定した。消化されないFOSおよびLATは腸管からのCaならびにMg吸収を促進し, 大腿骨中のCaおよびMg含有量を増加させた。しかし, 部分消化性のGSの効果はやや弱く, 消化性のIMOの効果はさらに弱かった。消化されにくいオリゴ糖は尿中DPD排泄量も低下させた。以上の結果, 難消化性オリゴ糖のCaおよびMg代謝への影響は, オリゴ糖の種類, 特に消化性の低いものほどCaおよびMgの腸管からの吸収を促進することが明らかになった。
著者
中村 禎子 田辺 賢一 中山 敏幸 奥 恒行
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.124-128, 2018-05-20 (Released:2022-03-09)
参考文献数
18

我々は,腸内細菌が難消化吸収性糖質から産生する水素ガスに着目し,腸内細菌由来水素ガスは,吸入などによる水素ガスと同様の抗酸化作用があり,疾病の発症遅延や重症化予防に寄与するという仮説をたて,実験動物を用いて検証してきた.老化促進モデルマウスを難消化吸収性糖質含有飼料で長期間飼育し,学習・記憶障害を発症するSAMP8特有の症状発症と重症化の遅延を観察した.Passive avoidance testの結果では,フラクトオリゴ糖(FOS)5%含有飼料群の成績が対照飼料群に比較して有意に良好で,学習・記憶障害の発症が遅延した.FOS群では水素ガス体外排出が有意に高く,老化度得点,酸化ストレスや炎症の関連指標は有意に低値を示した.また,鉄過剰投与による肝障害モデルラットをFOS含有飼料で飼育した実験では,血液中のALTならびに酸化度は有意に低値を示し,肝障害の改善や発症遅延が観察された.以上の結果より,難消化吸収性糖質継続的摂取は,生体内水素ガス濃度をある程度高く維持し,疾病予防や重症化遅延に寄与している可能性がある.しかし,その機序については,今後の検討が必要である.
著者
中村 禎子 中山 敏幸 奥 恒行 田辺 賢一 下内 章人 金高 有里
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、妊娠期の母体の栄養環境に依存して胎児期の発生に異常を来すモデルマウスを用いて、妊娠期に難消化性糖質含有飼料を摂取させ、母体の腸内細菌が産生する水素ガスが胎児へ移行することによって、胎児のWntシグナル伝達を調節して正常な発生に誘導し、成長後の疾病の罹患や重症化へ及ぼす影響をモデルマウスを用いて明らかにする。申請する科研費では、まず、【実験Ⅰ】において、妊娠期に葉酸過剰飼料と、これに難消化性糖質を含有する飼料を与えて、胎児の発生期に惹起する異常に対する影響を観察する。【実験Ⅱ】では、実験Ⅰと同じ飼料を妊娠2週間前から与えて実験Ⅰとの同異を検討する。