著者
奥 恒行 田辺 賢一 渡邊 有希 尾野 春子 成瀬 真理 中村 禎子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.233-240, 2007-10-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
22
被引用文献数
4 6

本研究ではフラクトオリゴ糖 (FOS), ラクチュロース (LAT), ガラクトシルスクロース (GS) およびイソマルトオリゴ糖 (IMO) を用いて難消化性オリゴ糖の性状の違いがCaならびにMg代謝に及ぼす影響を比較・検討した。飼料組成は各オリゴ糖10%添加飼料とし, 対照にはスクロースを用いた。Wistar系雄ラット (3週齢) を1群6匹で44日間個別飼育し, 6週間後に出納実験を行った。なお, 給餌量は同一になるように軽い制限給餌とした。CaおよびMgは原子吸光法により測定した。尿中デオキシピリジノリン (DPD) はEIA法を用いて測定した。消化されないFOSおよびLATは腸管からのCaならびにMg吸収を促進し, 大腿骨中のCaおよびMg含有量を増加させた。しかし, 部分消化性のGSの効果はやや弱く, 消化性のIMOの効果はさらに弱かった。消化されにくいオリゴ糖は尿中DPD排泄量も低下させた。以上の結果, 難消化性オリゴ糖のCaおよびMg代謝への影響は, オリゴ糖の種類, 特に消化性の低いものほどCaおよびMgの腸管からの吸収を促進することが明らかになった。
著者
渡邊 有希乃
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.162-177, 2020-12-10 (Released:2021-10-02)
参考文献数
38

日本では1990年代以降,入札の競争性向上を目的とした公共調達制度改革が進行した。しかし国士交通省直轄工事入札における一件当たり応札数は減少傾向にあり,入札の顕在的競争性は低く保たれている。なぜ行政組織は,改革下でもなおこうした制度運用を行うのか。本稿では,むしろ応札数の増大に合理性を見出す多くの先行研究が問題外としてきた「制度運用の取引費用」に焦点を当てることで,手続的合理性の観点から応札数抑制の優位性を検討する。公共工事調達は,低価格・高品質の追求という目標を伴った,事業者選定を巡る行政組織の意思決定活動である。だが,これらトレードオフ関係にある二目標を同時に考慮し,両者の適切なバランスのもとに唯一最適の事業者を決定するには膨大な取引費用がかかり,現実上の行政組織がこれを負担するのは難しい。しかし,事業者の施主能力をふまえた品質判断に基づいて参入可能な事業者を限定し,それを通過した事業者間で競争入札を行わせる,つまり,まずは品質・次に価格といった形で両価値を逐次的に扱えば,意思決定にかかる取引費用は削減される。即ち応札数抑制は,低価格・高品質という目標を同時に追求することの難しさを緩和するための戦略がとられていることの表出として説明され,このとき,事業者選定の手続的合理性は向上していると推論される。なお以上の妥当性は,国士交通省直轄工事の入札結果データを用いた計量分析によって,実証された。
著者
高見 一利 渡邊 有希子 坪田 敏男 福井 大祐 大沼 学 山本 麻衣 村田 浩一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.33-42, 2012-06-29 (Released:2018-07-26)
被引用文献数
1

2010年度に,日本各地で野鳥から高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認され大きな問題となるなか,発生地や調査研究機関など各所で体制作りが進められた。日本野生動物医学会も,野生のツルへの感染が確認された鹿児島県に専門家の派遣を行い現場作業に貢献した。これらの取り組みから一定の成果が得られ,情報収集や体制構築の検討も進んだ一方で,様々な課題や問題点も明らかとなった。一連の活動や検討を踏まえた結果,野生動物感染症対策を効果的に促進するためには,感染症の監視と制御に役立つ体制を構築することが必要であると考えられた。従って,本学会は体制整備として,以下の取り組みを進めることを提言する。1.野生動物感染症に関わる法律の整備2.野生動物感染症に関わる省庁間の連携3.野生動物感染症に関わる国立研究機関の設立4.野生動物感染症に関わる早期警報システムの構築5.野生動物感染症に関わる研究ネットワークの構築6.野生動物感染症に関わる教育環境の整備この提言は,本学会の野生動物感染症に対する方向性が,生態学的健康の維持にあることを示すものである。