著者
白井 滋 岡村 収
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.139-150, 1992-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11

ワニグチツノザメの内部形態 (骨格・筋肉系) を詳細に記載した.摂餌機能に関しては, 特殊な顎歯の状態から, 本種は餌を上下の顎で捕捉し, これを丸のみするものと考えられる.内臓弓およびこれに関係する筋肉構造には, こうした摂餌機能の向上に関連すると思われるいくつかの特殊な状態が観察された.これらの特殊な状態は, 同時に本種の系統的位置の解明をはなはだ困難にしている.しかし, 口唇軟骨が2本の離れた要素からなることなど, 本種は3つの派生状態をカラスザメ亜科と共有する.カラスザメ亜科全体との姉妹関係, カラスザメ亜科内に想定されている2っの姉妹群 (カラスザメ属とハシボソカラスザメ属およびAculeola属とカスミザメ属) それぞれとの類縁性について考察した.
著者
仲谷 一宏 白井 滋
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.37-48, 1992

1978年から3年間, 沖縄舟状海盆, 九州-パラオ海嶺, 茨城県から青森県に至る本州北部太平洋の陸棚斜面 ("東北沖") および北海道のオホーツク海陸棚斜面 ("オホーツク沖") において大規模な深海魚類調査が実施された.<BR>この中で著者らは軟骨魚類の分類を担当し, 水深200-1, 520mで行われた584回のトロール漁獲物から61種の深海底生性軟骨魚類を確認した.また, これら4調査海域に加え, 尾形他 (1973) による日本海でのトロール結果を含めて軟骨魚類相を検討した結果, 各々の海域が極めて特徴的な深海底生性軟骨魚類相を有することが判明した.沖縄舟状海盆は非常に多様性に富んだ海域で, 多くの分類群に含まれる37種が出現し, 中でもツノザメ科, トラザメ科, ガンギエイ科 (ガンギエイ属) の種が優占した.九州-パラオ海嶺には10種が出現し, その構成は比較的単純で, ツノザメ科の種が多く, ガンギエイ科やギンザメ目の種は出現しなかった.東北沖では18種の比較的多様な軟骨魚類が出現し, ガンギエイ科 (ソコガンギエイ属) の種が最も多く, ツノザメ科の種がこれに次いだ.オホーツク沖では軟骨魚類の構成は単純で, 2科9種が見られ, その大部分がガンギエイ科 (ソコガンギエイ属) の種であった.日本海で見られた深海底生性軟骨魚類はガンギエイ科 (ソコガンギエイ属) のドブカスベ1種で, 他の海域に比較して極めて貧弱な軟骨魚類相であることを再確認した.<BR>これらの深海底生性軟骨魚類の分布は琉球海溝等の超深海や対馬海峡等の浅海域の存在により大きな影響を受けているものと考えられる.また, 多くの種が出現した分類群について日本周辺での分布の特徴を調査した結果, 伊豆半島から南下する巨大な七島・硫黄島海嶺が深海底生性軟骨魚類の分布に大きな影響を与えているものと考えられた.すなわち, 中浅海部を黒潮で覆われた七島・硫黄島海嶺は, 特に北方産の深海底生性軟骨魚類の多くにとって越え難い障壁となっており, さらに, 北方深海底生性の魚類一般についてもこの考えを拡大できる可能性が示唆された.
著者
田中 義則 白井 滋久 湯本 節三 松川 勲 萩原 誠司 黒崎 英樹 山崎 敬之 鈴木 千賀 大西 志全 角田 征仁
出版者
北海道立総合研究機構農業研究本部
巻号頁・発行日
no.99, pp.47-60, 2015 (Released:2015-07-06)

「トヨハルカ」は,1993年に北海道立十勝農業試験場(農林水産省大豆育種指定試験地)で,ダイズシストセンチュウ抵抗性,低温抵抗性,低温着色抵抗性の白目中粒系統である「十系793号」を母,ダイズシストセンチュウ抵抗性の白目中粒系統である「十交6225F8」を父に人工交配した雑種後代から選抜・固定し,2005年に北海道の優良品種に認定され,2008年に品種登録された。本品種は,「トヨムスメ」と同様に中生の白目大粒で,ダイズシストセンチュウ抵抗性が強く,同品種より低温抵抗性が強く,同品種で問題となる低温によるへそおよびへそ周辺着色が極めて少なく外観品質に優れる。耐倒伏性に優れ,草型は分枝が少ない主茎型で最下着莢節位が高いことから,コンバイン収穫適性に優れる。加工適性は煮豆に適し,特に味噌に好適である。「トヨハルカ」を「トヨムスメ」の一部に置き換えて普及することで,道産大豆の安定生産と品質向上が期待される。
著者
谷藤 健 三好 智明 鈴木 千賀 田中 義則 加藤 淳 白井 滋久
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.74-82, 2009
被引用文献数
2

北海道内全域で栽培されたダイズのイソフラボン含量を調査したところ, 同一品種でも栽培地によって含量は変動し, 登熟期間の平均気温(以下, 登熟気温)との間に有意な負の相関が認められた. また, 同一栽培地での明らかな品種間差も確認され, 「ゆきぴりか」および「音更大袖」の含量が最も高かった. ゆきぴりかは, 各適応地帯において標準品種(トヨコマチ)比1.3~1.5倍の高含量を示す一方, 栽培地間の変動係数は年次間変動を含めても標準品種より低かった. また, ゆきぴりかの高イソフラボンは, 登熟後半におけるダイズイン類の蓄積が一般品種より顕著であることに起因しており, ダイズイン類のゲニスチン類に対する比率(D/DG率)も高まっていたが, 品種間および交雑後代系統間にイソフラボン含量とD/DG率の有意な相関は認められず, これらは, 独立した遺伝形質であると推察された. 一方, D/DG率は同一品種でも栽培地によって変動し, イソフラボン含量と同様に登熟気温と有意な負の相関が見られたことから, イソフラボン蓄積を促進する条件は, D/DG率の決定にも何らかの影響を及ぼしていると考えられた.
著者
白井 滋 後藤 友明 廣瀬 太郎
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.47-58, 2007-05-25 (Released:2011-06-08)
参考文献数
19

In February to March, 2004, 17 specimens of sail-fin sandfish, Arctoscopus japonicus, were collected off the Iwate area, Pacific coast of northern Honshu, Japan, during research on fishery resources by Iwate Fisheries Technology Center. Using all the specimens, a sequencing analysis of the mitochondrial control region was performed, and we found that they have a genetic composition closely approximating to the western Japan population distributed north of Oki Islands, the Sea of Japan. These specimens were estimated to be three years old, belonging the 2001 year-class. This year-class from the Akita coast area became a very large resource, and this may have led to the expansion of their distribution. The occurrence of sandfish off the Iwate area in 2004, should be an event through the enlargement of distribution area of the 2001 year-class that hatched along the Akita coast area.
著者
村田 吉平 白井 滋久 藤田 正平 島田 尚典 Shrestha Bhushan Wangchuk Tenzin
出版者
日本育種学会・日本作物学会北海道談話会
雑誌
日本育種学会・日本作物学会北海道談話会会報
巻号頁・発行日
vol.36, pp.120-121, 1995

十勝農試では、小豆の品種改良の母本として、国内(33府県)、国外(韓国、台湾)の小豆遺伝資源を1984年から、現在まで約2300点を収集している。今回、小豆栽培の西端と推定されるネパール、ブータンで収集したものが、従来と異なった特性を有していることが明らかになったので報告する。