著者
百瀬 優 大津 唯
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.74-87, 2020-11-30 (Released:2022-11-30)
参考文献数
4

本稿では,第一に,厚生労働省「障害年金受給者実態調査」の個票データを利用して,障害年金受給者の生活実態や就労状況を確認した。第二に,障害年金受給者の就労状況について多変量回帰分析を行った。主な結論は以下の通りである。①精神障害による受給者は,年金収入も就労収入も低い者が多く,他の収入を加えても,世帯収入が低くなる傾向が強い。生活保護を併給する受給者も多い。②知的障害による受給者では,親や兄弟姉妹との同居率の高さが目立つが,その他は精神障害による受給者と同様の傾向が見られた。③身体障害による受給者では,年金額が高い者ほど就労収入も高くなる傾向があり,この傾向が受給者間の生活状況の格差を大きくしている。④精神障害では,厚生年金3級の受給者が最も生活困窮に陥りやすい。⑤女性の受給者は男性に比べて,年金収入も就労収入も低いが,世帯収入や生活保護の併給状況において,明確な男女差は確認できなかった。
著者
百瀬 優
出版者
早稲田大学産業経営研究所
雑誌
産業経営 (ISSN:02864428)
巻号頁・発行日
no.37, pp.71-90, 2005

福祉国家に関する従来の研究で主流となっていた権力資源論では,一般的に,企業が社会政策の形成や拡充に対して与えた影響力は軽視されるか,あるいは,経営側は福祉国家に対する反対勢力としてのみ位置付けられる傾向があった。近年,こうした捉え方に異を唱え,企業の役割を重視する研究が見られる。本稿は,そうした研究の中から,Isabela Maresの研究を取り上げ,彼女の議論を整理するとともに,その有効性と問題点を指摘した。Maresは,社会政策が企業にとってコストとなるだけでなく,コントロールとリスク再分配という二つの側面で企業に便益をもたらす可能性があり,企業は社会政策に対して常に反対するわけではないことを強調している。同時に,企業規模や産業,熟練労働への依存度といった企業特性によって,異なった社会政策が企業によって選好されることを指摘している。そして,最終的には,経営側で優勢となった選好が,労働側の選好との戦略的妥協を通じて,制度の形成に大きな影響を及ぼしてきたことを明らかにしている。本稿でも,日本における社会政策の形成過程を振り返り,企業の社会政策に対する選好とその影響力を抜きにしては,制度の創設やその設計を論じることはできないということを確認した。その一方で,企業における技能形成の重視と社会保険に対する支持が必ずしも結びついていないこと,政策過程における企業の影響力が時期によって大きく変化していることから,Maresの議論には,二つの問題点があることがわかった。今後,社会政策の歴史的検討及び現状分析を行う際には,これまで軽視や誤解をされてきた企業の役割を適切な形で考察に取り入れるとともに,Maresの研究の問題点を克服していくことが必要になると思われる。
著者
庄司 洋子 菅沼 隆 河野 哲也 河東田 博 野呂 芳明 湯澤 直美 田中 聡一郎 百瀬 優 深田 耕一郎 酒本 知美
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「自立とソーシャルワークの学際的研究」と題し、自立についての規範的意味とソーシャルワークという実践との関連を包括的に検討した。その中で、社会福祉の領域で、中心的な議論であった経済的自立だけではなく、様々なフィールドで展開されている社会的な自立とソーシャルワークの重要性について明らかにした。
著者
百瀬 優
出版者
早稲田大学
雑誌
商学研究科紀要 (ISSN:02870614)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.177-186, 2004-03-25