著者
亀田 佳代子 前迫 ゆり 藤井 弘章 牧野 厚史
出版者
滋賀県立琵琶湖博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

かつて肥料として利用するために行っていたカワウの糞採取とそれに伴う保全管理技術が、カワウによる森林衰退を軽減する効果があったのかどうかを検証した。糞採取が行われていた愛知県のカワウコロニー、鵜の山で、当時の優占種であるクロマツをポットに植えて設置し、実験的に糞採取と同様の処理を行った。その結果、糞採取に伴う砂撒きが、クロマツの生存や成長を促進することが示唆された。現植生の調査からは、1960年代後半のクロマツ植栽域でタブノキの個体数が有意に多いことが明らかとなった。これらの結果から、砂撒きや植栽などの伝統的保全管理技術が、カワウによる森林衰退を軽減し遷移を促進していた可能性が示唆された。
著者
亀田 佳代子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.245-251, 2001-04-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
26
被引用文献数
5 3
著者
八尋 克郎 亀田 佳代子 那須 義次 村濱 史郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-23, 2013-01-05

滋賀県琵琶湖の竹生島でカワウの巣の昆虫を調査したところ,27種に属する466個体の昆虫類が採集された.鞘翅目が最も多く,すべての昆虫類の35.1%を占めた.鞘翅目のうち個体数の多い上位4科はゾウムシ科,コブスジコガネ科,ガムシ科,カツオブシムシ科で,合計個体数が148個体,全鞘翅目の90.8%を占めた.カワウの巣の昆虫相は主に生態系の腐食連鎖系に属する腐食性昆虫で構成されることが明らかになった.チビコブスジコガネ(コブスジコガネ科)は48個体確認されており,巣内の幼鳥の古い死体やペリット,食べ残しなどの分解者として重要な役割を果たしていると考えられる.
著者
亀田 佳代子 松原 健司 水谷 広 山田 佳裕
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.12-28, 2002 (Released:2007-09-28)
参考文献数
43
被引用文献数
21 26

全国で増加傾向にあり,内水面漁業への食害が懸念されているカワウについて,これまで行われてきた調査や研究をもとに,日本のカワウの採食魚種,食物のサイズ構成と採食量,採食場所選択の特徴についてまとめた.カワウは多様な魚種を食物としており,採食可能な魚類の体長幅は約3~30cm,野外で一日に必要な食物量は約500gと推定された.カワウはまた,季節や生息場所の状況に応じて,淡水域,汽水域,海域の採食場所を柔軟に使い分けていた.安定同位体比分析の結果から,カワウには地域個体群としての採食場所選択のほかに,個体ごとの採食場所選択の特徴があることが示唆された.これらの結果から,カワウの食性解析の研究は,魚食性鳥類の採餌戦略という鳥類生態学の課題としても,食害問題など野生鳥獣の保護管理における課題としても,今後さらに発展させていく必要があると考えられた.
著者
亀田 佳代子
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.94-97, 1999

ボルネオ島のマレーシアサラワク州において,これまで繁殖記録のなかったクリイロバンケンモドキの繁殖を観察したので報告する。1996年8月4日,ランビルヒル国立公園内にあるつり橋状のウォークウェイで,オスのクリイロバンケンモドキが枝をくわえてヒルギ科の樹冠付近に入るのが目撃された。8月7日にその木に巣があるのを発見し1羽が巣にいるのを確認したため,営巣が判明した。高さは地上約20mであり,営巣木である <i>Carallia brachiata</i> の樹冠付近には,数種のつる性植物が繁茂していた。巣は外側が小枝,内側には葉が敷かれており,近縁種の巣と似た構造であることがわかった。抱卵期にはオスメスが約1時間おきに抱卵しており,卵の形態や卵数は確認できなかった。8月28日には雛が確認され,9月2日には雛数は2羽であることが判明した。雛は9月6日には巣から歩いて枝に移動するのが見られた。翌7日には,頭の羽の色からオスメス1羽ずつであることがわかった。9月8日以降,雛は巣および営巣木からいなくなった。羽がほぼ生えそろっていたこと,歩いて巣から出ていたことなどから,巣立って他の場所に移動した可能性が高いと考えられた。育雛中の9月3日に終日観察を行ったところ,12回のエサ運びが観察され,雌雄が確認された10例は全てメスであった。しかし,巣作り,抱卵,および抱雛はオスも行っていたため,本種では雌雄とも何らかの形で子育てを分担していることがわかった。
著者
高橋 鉄美 亀田 佳代子 川村 めぐみ
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.576-578, 2002-07-15
被引用文献数
3 1

琵琶湖産アユとワカサギをカワウの胃内容物から種判別できるようにする目的で尾鰭骨格の観察を行った。両種は尾部棒状骨に下尾骨が癒合せず,2-5個の尾鰭椎前椎体に神経棘が関節することから他の琵琶湖に生息する魚類と区別できた。またアユは尾鰭椎前第3および第4椎体の神経棘が筒状の構造を持ち,先端に軟骨を有すること,そして上尾骨が2本で後方の下端が2叉するか,もしくは3本であることにより,ワカサギと明瞭に識別することが出来た。また両種の尾鰭骨格と体長の関係式も求めた。