著者
畑田 彩 鈴木 まほろ 三橋 弘宗
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.57-61, 2008-03-30 (Released:2016-09-16)
参考文献数
6
被引用文献数
5

連載「博物館と生態学」では、毎回生態学と関わりの深い博物館事業をテーマとして取り上げてきた。当初予定した6回が終わったところで、これまでの執筆者を中心に連載によって達成できた点や今後の課題について話し合った。その内容をまとめることで、連載「博物館と生態学」の意義を考えてみたい。
著者
原 正利 関 剛 小澤 洋一 鈴木 まほろ 菅野 洋
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.153-170, 2007-12-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
82
被引用文献数
1

1. イヌブナの分布北限域にあたる宮城県と岩手県,青森県東部を対象地域として,踏査データ(105地点),文献情報(112地点),標本データ(14点),岩手県自然環境統合時報(47地点)を情報源に,緯度経度情報を伴うイヌブナの分布データベース(278地点)を作成し,国土数値情報を用いて分布地点の気候,地質,地形の各情報を抽出し,GISを用いて分布との対応を解析した。  2. 詳細な分布図を作成した結果,分布北限域におけるイヌブナの水平分布は,分布上のギャップを多く伴うパッチ状で特徴的なものであることが明らかとなった.  3. 垂直分布については,奥羽山脈域では600m前後にある分布上限が,北上山地域では800m付近まで上昇していた.一方,分布下限の標高に地域差は無く,海抜数10m以下の低海抜地にも分布が見られた.  4. 気候的には,60℃・月<WI≦95℃・月かつ寒候期最深積雪深120cm以下の領域がイヌブナの分布可能な領域であると考えられた.特に最深積雪深はイヌブナの分布域を強く制限し,水平的な西限および垂直的な上限を規定していると考えられた.また,WIと寒候期最深積雪深の相関関係の解析から,イヌブナの分布上限が,北上山地域で奥羽山脈域よりも上昇しているのは,イヌブナの分布が,積雪深によって規定されているためであることが示唆された.  5. 地質的には,イヌブナの分布は,主に半固結-固結堆積物と固結火山性岩石の分布域に限られ,未固結堆積物,未固結火山性岩石,深成岩類,変成岩類の分布域にはあまり分布しないことが明らかとなった.  6. 地形的には,イヌブナの分布は,主に山地と丘陵地に限られ,他の地形にはほとんど分布しなかった.また,奥羽山脈沿いのイヌブナの分布上のギャップには,砂礫台地および扇状地性低地が対応して分布し,寒候期最深積雪深120cm以上の地域との組み合わせによって,イヌブナが分布しない原因を説明できると考えられた.また,特に北上山地では,イヌブナの分布は急傾斜地に限られる傾向にあった.  7. 植生改変などの人為的要因,および最終氷期におけるレフュジアの位置や後氷期における分布変遷などの歴史的要因がイヌブナの分布に影響している可能性についても考察した.  8. 分布北限域においてイヌブナの分布が気温的に予測されるよりも南部に限定され,しかも断続的な分布を示しているのは,積雪に対する耐性が低く地質・地形的な立地選択性の幅も比較的,狭いというイヌブナの種特性と,本州北端部が最終氷期末以降,火山活動の影響を受けて地表面が大きく攪乱された上,現在も火山性堆積物が厚く堆積しているという地史的な要因に起因すると考えられた.
著者
多田内 修 大石 久志 鈴木 まほろ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.27-35, 2014-03-30 (Released:2017-05-19)
参考文献数
60
被引用文献数
1

最も主要な送粉昆虫であるハナバチ類と訪花性双翅目について、それぞれの分類群の概要と送粉者としての重要性、日本におけるインベントリーの現状と課題を整理した。現在、日本産ハナバチ類の分類は総括的段階にあり、日本産全種を含む『日本産ハナバチ類図鑑』の出版が間近であるほか、アジア産ハナバチ類データベースの構築と公開も進行中である。これまで一般研究者にとって一部の分類群を除くハナバチ類の同定は困難であったが、これらによってかなりの程度まで同定が可能になり、生態学的研究が飛躍的に進むことが期待される。一方、訪花性双翅目は従来その送粉者としての重要性が軽視されてきたため、分類およびインベントリー作成は世界的にも遅れているが、送粉者の多様性に注目が集まっている昨今では、その必要性がますます高まっている。こうした中、日本ではハナアブ科やクロバエ科など一部の分類群についてはインベントリーの作成が徐々に進み、一般研究者でもある程度までは同定が可能になってきた。双翅目昆虫の送粉機能は温帯地域においても決して小さくはなく、今後は日本でも組織的なインベントリー整備を積極的に推進する必要がある。
著者
畑田 彩 鈴木 まほろ 三橋 弘宗
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.57-61, 2008
被引用文献数
3 2

連載「博物館と生態学」では、毎回生態学と関わりの深い博物館事業をテーマとして取り上げてきた。当初予定した6回が終わったところで、これまでの執筆者を中心に連載によって達成できた点や今後の課題について話し合った。その内容をまとめることで、連載「博物館と生態学」の意義を考えてみたい。