著者
谷口 ちさ 石山 恒貴
出版者
一般社団法人 日本キャリア・カウンセリング学会
雑誌
キャリア・カウンセリング研究 (ISSN:24364088)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.79-89, 2022-03-31 (Released:2022-08-19)
参考文献数
28

本稿では,組織を越えたデベロップメンタル・ネットワーク(DN)および支援者(メンター)に着目し,メンタリングへの参画動機とメンタリング・プロセスを通じて獲得した利益について,組織内外の違いを明らかにすることを目的とする。先行研究によれば,組織内DNにおけるメンターは,人の役に立ちたいという向社会的動機と,組織内で影響力を行使したいという動機からメンタリングに携わり,それを通じて自分の過去を再評価するという獲得利益が観察されていた。本稿では,組織を越えたDNにおいて,大学生のキャリア開発を目的としたメンタリングに参画する社会人メンターの参画動機と獲得利益を質的に調査した。結果として,メンターの組織を越えたDNへの参画動機は所属組織に対する閉塞感であり,大学生のキャリア開発支援への参画動機は向社会的動機であった。また,組織を越えたメンタリング・プロセスを通じて視野を広げるだけでなく,その学びを所属組織に還元する動きが明らかとなった。
著者
石山 恒貴 山下 茂樹
出版者
日本労務学会
雑誌
日本労務学会誌 (ISSN:18813828)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.21-43, 2017-06-01 (Released:2018-06-01)
参考文献数
50

This study analyzes the mechanisms and conditions of functioning for strategic talent management. Strategic talent management is a theoretical concept based on strategic human resource management. It focuses on key positions that contribute to the competitive advantage of a company and on developing a talent pool of high potential and high performing incumbents. The study investigates 11 foreign-owned companies and one Japanese company and its primary findings are as follows. (1) The key components of the mechanisms and conditions of functioning for strategic talent management are "definition of the key positions," "talent review," "participation of executive team," and "visualization with talent chart (block chart) ." (2) The involvement and participation of the executive team for talent development is essential. (3) The fundamental rules of Japanese style human resource management are different from that of strategic talent management. Therefore, a Japanese company should choose the most appropriate method to implement either strategic talent management or Japanese style human resource management.
著者
片岡 亜紀子 石山 恒貴
出版者
法政大学地域研究センター
雑誌
地域イノベーション = 地域イノベーション (ISSN:18833934)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.73-86, 2017-03-31

研究成果の概要 (和文) : 家でも職場でもない第3 の居心地の良い場所としてサードプレイスが注目されている。多様な人々が集まる地域のサードプレイスは、地域活性化の核として期待が高まっている。また離職や休職をきっかけに、女性がはじめて本格的に地域とかかわる場としてのサードプレイスの必要性が指摘されている。しかし、サードプレイスを創設したものの、地域に定着しないまま消滅する事例も散見される。地域で継続的なサードプレイスとして存在するための要素、およびその効果とはどのようなものであろうか。本稿はこれらの点を解明するためにリサーチクエスチョン(以下、RQ)を設定した。 RQ1: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスはどのような経緯で成立したのか RQ2: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスはどのような機能をもっているのか RQ3: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスの機能はどのように効果の発揮につながるのか、とりわけその地域の女性に対してどのような役割を果たしているのか RQ を解明するために、地域で継続性のあるサードプレイスを運営する2 団体を選定し、事例研究として観察調査、インタビュー調査、資料調査を行った。分析の結果、RQ1 では管理者が当事者として問題意識をもち、個人的な活動から外部との連携を経て、地域のサードプレイスとして成立したことがわかった。RQ2 では複数の参入機能、物理的な場、人的な場、インターネット上の場、地域のハブ機能、段階的に働く場、話し合う場、の機能があることがわかった。RQ3 では人的ネットワークの形成、地域への興味喚起、さらに地域の女性に対する自己効力感の向上、新しい働き方の認知、といった効果を発揮していることがわかった。以上から地域のサードプレイスが効果を発揮するためには、社会的、個人的背景からニーズを察知し発展の段階と目的に合わせ適切に設計し、地域のステークホルダーに働きかけ連携する必要があると考える。
著者
石山 恒貴
出版者
経営行動科学学会
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1-2, pp.11-28, 2020 (Released:2022-03-26)
参考文献数
56

This paper analyzes the negotiation of meaning at boundary crossings. Many studies have shown how the concept of boundary crossings is used in an interdisciplinary sense. In this paper, I focus on boundary crossings based on activity theory and communities of practice. In the existing literature, the negotiation of meaning is mainly placed in a homogeneity context. However, this paper offers a perspective on the importance of the negotiation of meaning at boundary crossings in a heterogeneity context. The review of the literature reveals that brokers in external communities of practice can introduce external practices into internal communities of practice through the reconciliation of decentralized selves. For brokers, the experience of crossing boundaries promotes the cognition and conflict of decentralized selves. The mechanism of reconciliation of decentralized selves for brokers can be explained with dialogical self theory with polyphony. Furthermore, the reconciliation of decentralized selves promotes brokers to deliver the negotiation of meaning at boundary crossings in a heterogeneity context.
著者
石山 恒貴
出版者
法政大学地域研究センター
雑誌
地域イノベーション (ISSN:18833934)
巻号頁・発行日
no.6, pp.63-75, 2013

研究の概要(和文):近年、企業内外の知識創造に関し、実践共同体の重要性が注目されている。地域活性化においても、先行研究では実践共同体が重要な役割をはたすことが指摘されている。地域における実践共同体の主な効果は、個人学習、組織学習、知識創造におよんでいる。先行研究のレビューでは、地域における実践共同体の類型を、①教育機関と地域との連携、②地域における横断的な人材育成、③地域の内発的な実践共同体、④外部団体と地域との協働、と整理することができた。本研究では、実践共同体という枠組みをとおして、地域活性化に取り組む NPO2 法人に聞き取り調査を行い、実践共同体の生成の過程を調査した。その結果、1)地域の利害関係に巻き込まれていず、かつ地域活性化に情熱を持ち、当該地域について素直に学びたいという姿勢を持つよそ者(若者)が、触媒として実践共同体の生成に効果的であること 2)実践共同体の生成において、従来型の方法論では不十分であり、デザイン思考の活用が有効であることという 2 点が明らかになった。本研究の意義は、実践共同体の生成過程の課題と対処の過程を明らかにしたことにある。今後、地域に実践共同体を創設したいと考える際には、本研究で示した具体的な対応方法を考慮することが望ましいであろう。研究の概要(英文):The purpose of this paper is to examine the roles of communities of practice in regional activation. Communities of practice are an integral part of regional activation, and previous studies show that their functions include the fostering of individual leaning, organizational learning, and knowledge creation. However, the concept of communities of practice is unfamiliar in the context of regional activation. We need to make the concept and its utility in context clear and useful. Therefore, the present study takes as a topic of research the process of creation of communities of practice. Interviews with people involved in 2 NPO s were conducted, and the major findings were as follows: 1) A catalyst with no interest in the region is required for the creation of communities of practice. 2) Design thinking is important as a methodology for the creation of communities of practice. On the basis of these findings, it is suggested that we should try to more deeply investigate and understand the importance of a catalyst and design thinking for the creation of communities of practice.
著者
片岡 亜紀子 石山 恒貴
出版者
法政大学地域研究センター
雑誌
地域イノベーション = 地域イノベーション (ISSN:18833934)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.73-86, 2017-03-31

研究成果の概要 (和文) : 家でも職場でもない第3 の居心地の良い場所としてサードプレイスが注目されている。多様な人々が集まる地域のサードプレイスは、地域活性化の核として期待が高まっている。また離職や休職をきっかけに、女性がはじめて本格的に地域とかかわる場としてのサードプレイスの必要性が指摘されている。しかし、サードプレイスを創設したものの、地域に定着しないまま消滅する事例も散見される。地域で継続的なサードプレイスとして存在するための要素、およびその効果とはどのようなものであろうか。本稿はこれらの点を解明するためにリサーチクエスチョン(以下、RQ)を設定した。 RQ1: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスはどのような経緯で成立したのか RQ2: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスはどのような機能をもっているのか RQ3: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスの機能はどのように効果の発揮につながるのか、とりわけその地域の女性に対してどのような役割を果たしているのか RQ を解明するために、地域で継続性のあるサードプレイスを運営する2 団体を選定し、事例研究として観察調査、インタビュー調査、資料調査を行った。分析の結果、RQ1 では管理者が当事者として問題意識をもち、個人的な活動から外部との連携を経て、地域のサードプレイスとして成立したことがわかった。RQ2 では複数の参入機能、物理的な場、人的な場、インターネット上の場、地域のハブ機能、段階的に働く場、話し合う場、の機能があることがわかった。RQ3 では人的ネットワークの形成、地域への興味喚起、さらに地域の女性に対する自己効力感の向上、新しい働き方の認知、といった効果を発揮していることがわかった。以上から地域のサードプレイスが効果を発揮するためには、社会的、個人的背景からニーズを察知し発展の段階と目的に合わせ適切に設計し、地域のステークホルダーに働きかけ連携する必要があると考える。研究成果の概要 (英文) : The purpose of this paper is to examine the roles of third places in regional activation. Third places are places outside the workplace and thehome. These places are further described as goodplaces. Third places can be an integral part ofregional activation, especially for women who have been on a career break. This is because third places can provide them with their firstopportunities for regional activation. The research questions in this paper are as follows:RQ1 How were the third places that have continuity established? RQ2 What are the roles of the third places that have continuity? RQ3 What are the effects of the third places that have continuity? This paper selects two third places and introduces their histories, roles, and effects. The major findings are as follows: 1) The founders of the third places have a sense of ownership and work together with various local stakeholders. 2) The third places function as the hub of the local communities' networks. This is because the third places are open to diverse people in local communities. 3) The third places have the effect, especially for women, of initiating interest in regional activities and improving their self-efficacy. On the basis of these findings, it is suggested that we should understand the importance of cooperation with local stakeholders to create the continuous and effective third places that function as the hub of local communities.
著者
石山 恒貴 保田 江美
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.16-22, 2018-01-10

国は人生100年時代構想会議を発足し,いつでも学び直すことができ,誰もがいくつになっても新たな活躍の機会に挑戦できる環境を整備するとしている。人生100年時代を展望し,これまでのキャリアの棚卸しや新たな学びを模索している読者も少なくないのではないか。 石山恒貴氏は,これからの働きかた,新たなキャリア開発,成人学習などの方法論として,本業以外の場に越境し社会活動などを通じて新たな学びを得る「パラレルキャリア」を提唱している。「ひとつの組織だけの学び」では変化に対応できない時代に,外での学びは本業にも活かせるだろう。 本対談では,看護部組織における職場学習やリーダーシップについて多角的に研究してきた保田江美氏が,パラレルキャリアの概念や多様な可能性について,石山氏に聞いた。
著者
石山 恒貴
出版者
経営行動科学学会
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.115-132, 2013 (Released:2014-08-01)
参考文献数
36
被引用文献数
2 1

The increase in knowledge acquisition and co-configuration work has in the past prompted discussions about the impact of changes in learning beyond company borders. The purpose of this study is to analyze how brokers in external communities of practice can introduce external practices into internal communities of practice. A total of 15 brokers were interviewed in this study. The major findings are as follows: 1) Brokers acquire skills suited to co-configuration work. 2) Brokering generates conflicts in internal communities of practice. However, eventually, brokers can introduce external practices into such communities. Therefore it is suggested that companies should understand the importance of brokering and its role in internalizing new practices.