著者
向後 千春 冨永 敦子 石川 奈保子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.281-290, 2012
参考文献数
14

eラーニングと教室でのグループワークを週替わりで交代に行うブレンド型授業を設計し,3年間に渡って実践した.1年目は通信教育課程向けのeラーニングコンテンツを流用し,2年目以降はブレンド型授業用に新規に開発した.ブレンド型授業導入以前の対面授業,ブレンド型授業の1年目,2年目,3年目の成績分布を比較したところ,1年目はほかに比べて成績高群が有意に少なく,成績中群が有意に多かった.しかしながら,2年目以降は,対面授業と有意な差はなかった.また,学習者のブレンド型授業に対する好みは,1年目よりも2年目以降が有意に高くなった.このことから,ブレンド型授業用に授業を設計すれば,対面授業と同程度の学習効果を上げることができ,かつ受講生からも受け入れられることが示唆された.しかしながら,一方で,対面授業に比べて,ブレンド型授業は不合格者が有意に多く,ブレンド型授業に馴染めない学習者が一定の割合で存在していることが示唆された.
著者
石川 奈保子 石田 百合子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.641-652, 2023-02-02 (Released:2023-02-11)
参考文献数
33

本研究では,大学生対象に,2020年度後期にオンライン授業を受講しての自己調整学習の状況を尋ねた.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)「e ラーニングでは計画的に一人でじっくり学習できるところがよい」と考えている学生ほど学習を工夫する方略を使用し,「e ラーニングは単調な感じがするので物足りない」と考えている学生ほど学習とそれ以外の時間にめりはりをつけることで学習意欲の維持をはかる方略を使わない傾向が示された.(2)学習の相談ができる友人の有無によって,e ラーニング指向性や自己調整学習方略使用に違いはなかった.(3)時間割などをベースに学習時間を固定していた学生と,課題の期限などをベースに学習時間を流動的に取っていた学生がおり,いずれでも自己調整していた学生はうまく学習を進めていた.うまく学習を進めるには,時間割ベースの学習計画を立てるとともに,タスクを把握・可視化し,やり残した課題に取り組む日や休息日を設定することが有効であることが示唆された.
著者
阿部 真由美 石川 奈保子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.105-111, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

大学3年生を対象としたゼミナールにおいて,2022年度春学期に反転授業形式で研究指導を行い,効果を検証した.その結果を踏まえ,同年秋学期には事前学習や授業内での活動を一部変更し,また,オンライン同期・非同期の授業形式を織り交ぜることで,多面的な授業を展開した.本発表では,秋学期終了後に行った受講生対象のインタビュー調査をもとに,授業デザインの各要素について検証した結果を報告する.
著者
石川 奈保子 城 綾実 牧野 遼作 宗政 由桐
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.3, pp.64-71, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)

本研究では,コロナ禍における子ども向け科学館の来館者対応に関する半構造化インタビュー調査を実施した.その結果,以下の2点が明らかになった.(1)科学館本来・従来の展示物を触って楽しむ・学ぶという目的を大事にしながら,少しでも安心して体験できるよう幾重にも工夫を施していた.(2)リアルタイム・生配信・動画配信の3形態でのオンライン科学教育コンテンツによる「体験」の提供を試みており,これまで少なかった小学校高学年の利用者,遠隔地の利用者を獲得した.
著者
石川 奈保子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.329-343, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
35
被引用文献数
2

本研究では,オンライン大学で学んでいる学生を対象に,自己調整学習およびつまずき対処方略の使用状況について明らかにするために調査を行った.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)オンライン大学の学生のつまずき対処方略は,「学友に質問する」「教育コーチに質問する」「放置する」「自分で解決する」の四つの方略に分類された.(2)ゼミに所属している場合,学習の相談ができる学友がいる学生は,教育コーチや学友に援助要請することでつまずきを解消していた.一方,そういった学友がいない学生は,つまずいたときでも援助要請しない傾向があった.(3)学習の相談ができる学友がいる学生は,より多くの自己調整学習方略およびつまずき対処方略を使用していた.以上のことから,オンライン大学での学習継続においてメンターや学友との交流が重要であることが,自己調整学習方略使用の側面から裏づけられた.
著者
石川 奈保子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.315-324, 2017-02-20 (Released:2017-03-23)
参考文献数
25

本研究では,eラーニング制大学通信教育課程(オンライン大学)の基礎教育科目の受講生を対象に,「大学通信教育課程の社会人学生の自己調整学習方略尺度」による2波のパネル調査を行った.その結果,以下のことが明らかになった.(1) 大学通信教育課程の社会人学生の自己調整学習方略として,「Ⅰ学習方法を振り返る」「Ⅱ学習を工夫する」「Ⅲ大学の友人にたずねる」「Ⅳ学習計画を立てる」「Ⅴ自分にご褒美を与える」の5因子が抽出された.(2) 学習方略因子間の因果関係として,以下の2点が示された.学習方略使用状況は約半年後も大きくは変わらない.共分散構造分析により,「Ⅰ学習方法を振り返る」から「Ⅲ大学の友人にたずねる」「Ⅳ学習計画を立てる」へ,「Ⅳ学習計画を立てる」から「Ⅱ学習を工夫する」「Ⅴ自分にご褒美を与える」への影響が確認された.以上のことから,大学通信教育課程の社会人学生には,まず,「Ⅰ学習方法を振り返る」方略を使用するよう促すことで,自己調整学習のサイクルに誘導できる可能性があることが示唆された.
著者
石川 奈保子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.129-132, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
7

本研究では,大学オンライン課程における学生からの援助要請に対応する際の学習支援者の態度と配慮事項を調査した.その結果,以下の2点が明らかになった.(1)態度に関して,自律的学習者の育成を目指す態度と手厚い情報提供による学びの促進を目指す態度とが見出された.(2)配慮事項に関して,自律的学習者の育成を重視しているかどうかによって違いがみられた.重視している学習支援者は,問題解決のための助言をわかりやすい言葉で伝えるよう心がけていた.一方,重視していない学習支援者は,学生の背景や理解レベル,要請内容の正確な把握や,学習意欲を削がない声がけに配慮していた.
著者
石川 奈保子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
2021

<p> 本研究では,大学オンライン課程における学生からの援助要請に対応する際の学習支援者の態度と配慮事項を調査した.その結果,以下の2点が明らかになった.(1)態度に関して,自律的学習者の育成を目指す態度と手厚い情報提供による学びの促進を目指す態度とが見出された.(2)配慮事項に関して,自律的学習者の育成を重視しているかどうかによって違いがみられた.重視している学習支援者は,問題解決のための助言をわかりやすい言葉で伝えるよう心がけていた.一方,重視していない学習支援者は,学生の背景や理解レベル,要請内容の正確な把握や,学習意欲を削がない声がけに配慮していた. </p>
著者
向後 千春 冨永 敦子 石川 奈保子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.281-290, 2012-12-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
14
被引用文献数
5

eラーニングと教室でのグループワークを週替わりで交代に行うブレンド型授業を設計し,3年間に渡って実践した.1年目は通信教育課程向けのeラーニングコンテンツを流用し,2年目以降はブレンド型授業用に新規に開発した.ブレンド型授業導入以前の対面授業,ブレンド型授業の1年目,2年目,3年目の成績分布を比較したところ,1年目はほかに比べて成績高群が有意に少なく,成績中群が有意に多かった.しかしながら,2年目以降は,対面授業と有意な差はなかった.また,学習者のブレンド型授業に対する好みは,1年目よりも2年目以降が有意に高くなった.このことから,ブレンド型授業用に授業を設計すれば,対面授業と同程度の学習効果を上げることができ,かつ受講生からも受け入れられることが示唆された.しかしながら,一方で,対面授業に比べて,ブレンド型授業は不合格者が有意に多く,ブレンド型授業に馴染めない学習者が一定の割合で存在していることが示唆された.
著者
石川 奈保子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.329-343, 2018

<p>本研究では,オンライン大学で学んでいる学生を対象に,自己調整学習およびつまずき対処方略の使用状況について明らかにするために調査を行った.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)オンライン大学の学生のつまずき対処方略は,「学友に質問する」「教育コーチに質問する」「放置する」「自分で解決する」の四つの方略に分類された.(2)ゼミに所属している場合,学習の相談ができる学友がいる学生は,教育コーチや学友に援助要請することでつまずきを解消していた.一方,そういった学友がいない学生は,つまずいたときでも援助要請しない傾向があった.(3)学習の相談ができる学友がいる学生は,より多くの自己調整学習方略およびつまずき対処方略を使用していた.以上のことから,オンライン大学での学習継続においてメンターや学友との交流が重要であることが,自己調整学習方略使用の側面から裏づけられた.</p>